うちゅうてきなとりで

The Cosmological Fort 無職戦闘員による本メモ、創作、外国語の勉強その他

2019-03-01から1ヶ月間の記事一覧

無欠の星

その日はきた 山は溶けて、すべて 白い経文のなかに のみこまれていく 雲の底から、この世の虫 この世の島と同じだけの 僧が顔を出し 統一の声が ある。 かれらの慈悲によって ふくらんだ顔、 月と梵字よりも、丸まった 皮膚 そうして 僧の顔面は 海よりも大…

『十七歳の硫黄島』秋草鶴次 ――自分の体にたかる蛆虫を食べて生き延びた高校生

海軍通信科員として硫黄島の戦いに参加した人物の手記。 戦闘の具体的な経過、実際の様子を詳しく記録している。 秋草氏は悲惨な戦況のなかで自らも負傷するが、絶対に生き延びるという強い意志を持っていた。このことは、回想録の各所で伺える。玉砕を選ぶ…

『非公認版聖書』フォックス その2 ――だれもイエスが何を言ったか知らない

・追加と削除 ――……キリスト教のテクストは、それが誕生した最初の100年間は、いわばテクストの入れ替えと書き直しの戦場のようなものだった。 ――こうした問題はたしかに、ある人たちを除けばそれほど重要ではないのかもしれない。ある人たちとはどんな人…

『非公認版聖書』フォックス その1 ――だれもイエスが何を言ったか知らない

「旧約聖書」および「新約聖書」を歴史家の視点から検証した本。 聖書の成り立ちや、そこに含まれる事実誤認、フィクション、改変の要素について大変細かく説明する。聖書を通読したことがないと、個々のエピソードの検討を完全に把握するのは難しい。 元々…

『シベリア出兵』麻田雅文 その2 ――ゲリラ討伐に失敗しても撤退できない日本軍

3 赤軍の攻勢、緩衝国家の樹立 イギリス:チャーチル戦争相はデニーキンに肩入れしたが、デニーキン軍がモスクワ総攻撃に失敗するとイギリス軍は撤兵を開始した。 干渉戦争の発端となったチェコ軍団は、チェコスロヴァキア成立後も英仏の駒として使われ、内…

『シベリア出兵』麻田雅文 その1 ――ゲリラ討伐に失敗しても撤退できない日本軍

◆所見 シベリア出兵Siberian Interventionは日本の歴史を学ぶ上で非常に興味深い事項である。 出兵の顛末は、その後の日中戦争だけでなく、歴史上の様々な失敗戦争と共通する点が多い。 ・どのように撤退するかの見通しが甘いまま派兵する ・ゲリラ戦に引き…

『だから、国連はなにもできない』リンダ・ポルマン ――国連=加盟国の総意

◆所感 国連の平和維持活動の実態について報告する本。 理想とかけはなれた現実や、悲惨な事例を、実体験、報道記事を交えて紹介する。また、随所で紹介される細かい事実がおもしろい。 国連は加盟国……つまり国際社会のリソースと意思決定によって成り立って…