うちゅうてきなとりで

The Cosmological Fort 無職戦闘員による本メモ、創作、外国語の勉強その他

2018-06-01から1ヶ月間の記事一覧

『北條民雄 小説随筆書簡集』

作者は、自らの体験をもとにハンセン病(旧称は「癩病」)患者を題材にした小説を作った。 各短篇の主人公はそれぞれ異なるが、物語の要素がゆるやかにつながっており、全体として施設の様子とそこで生活する患者たちの姿が浮かび上がる。 風景の創造につい…

『特攻』森本忠夫 その2

3 1944年6月、マリアナ沖海戦(「あ」号作戦)失敗によって、特攻兵器……回天、震洋、海龍、震海を使う方針が固まっていった。 海軍においては、零戦等の航空特攻、回天、震洋、桜花など、いずれも、現場の下級指揮官からの熱望という、ボトム・アップ…

『特攻』森本忠夫 その1

本書の冒頭から: 特攻作戦は、西欧的な価値観からすると異様な自殺攻撃である。 わたしたちは、当時の価値観がどのように特攻を正当化したかについて、また軍がどのような意思決定を経て、この異様な作戦を実行したかについて、知らなければならない。 ◆感…

『捏造された聖書』バート・アーマン その2

3 聖書の写本が作られていく歴史を説明する。 素人書記の時代から、ローマ帝国の国教化により、専門的な書記の利用と施設の整備が進められた。4世紀から15世紀、活版印刷が発明されるまでの時代の写本を「ビザンティン写本」と呼ぶ。 比較的正確だが、か…

『捏造された聖書』バート・アーマン その1

◆感想 著者は専門教育を受けた神学者だが、視点はわたしのような非信徒に近く、違和感なく受け入れられるものである。 著者は、聖書を無謬の「神の言葉」と考える主義から、本文研究を経て、人間的な書物とみなす思想にいたった。 神の言葉の改変については…

ハカ・ガーデン・ハカ

◆溥儀 最近、愛新覚羅溥儀の『わが半生』を読み始めて、当時の宮廷の様子におどろいています。また、かれを光緒帝の後継者として指名した西太后の行動についても記載があります。 ――慈禧太后(西太后)は政権を握ったその日から外国人にたいしてははれものに…

『アメリカ精神の源』ハロラン芙美子

カトリックである著者が、アメリカ人の宗教と精神について考える本。 著者は長崎出身で、米国で長く勤務し、現在はハワイ在住という。 合衆国は歴史の若い国ともいわれるが、移民たちの信仰はユダヤ、ローマまでたどることができ、またほぼすべてのアメリカ…

おとずれ、墓

山の中に 列になり、銀で塗り固められた 声がする 音は環となって かれら、名主の 耕す、べトンの畑に まかれたということ。 それはもう ほこらと、ほこらの間を ふくろうたちの航路を越えた やわらかい国。 役人は、べトンを耕す 役人の、その下の人夫はく…

『The Occupation』Patrick Cockburn その2

◆反政府勢力、シーア派 フセインを支持する者はほとんどおらず、政権はすぐに崩壊した。しかし、連合軍による占領が始まるとすぐに、反政府勢力が勃興した。 フセイン政権下で抑圧されていたシーア派もまた占領軍に対し攻撃を開始し、またシーア派同士でも紛…