うちゅうてきなとりで

The Cosmological Fort 無職戦闘員による本メモ、創作、外国語の勉強その他

2016-05-01から1ヶ月間の記事一覧

『私にとってオウムとは何だったのか』早川紀代秀

オウム信徒の死刑囚が自分の半生について書いた本。 「正しいことをせよ」という意識の強い一般人が、どのようにしてオウムに入会し、犯罪行為に加担したかが書かれている。 著者は若い時、宗教的なものには違和感を覚えたが、ハルマゲドンやノストラダムス…

『司法官僚』新藤宗幸

日本の司法の問題は消極的である点である。 本来、司法は市民にとって「簡便」な政治や社会を変えていく制度である。しかし現状では、裁判所が守ろうとしているのが政治行政のしくみなのか、裁判所の権威なのか、裁判官のキャリアなのかは不明である。 裁判…

図書案内:ヨーロッパの歴史

脈絡なく並んでいます。 ・今後読みたい分野…… 近代イギリス……バトル・オブ・ブリテン、チャーチル、アトリー、 フランス……フランス革命 古代ギリシア、その他古代文明 ◆全般 『ホメロス』ジャクリーヌ・ド・ロミーイ - うちゅうてきなとりで 『西洋法制史』…

「ロード・トゥ・パーディション」

制作:2002年 監督:サム・メンデス Road to Perdition マフィアのドラ息子に家族を殺されたトム・ハンクスが、生き残った息子とともに復讐をおこなう映画。 ダニエル・クレイグがしょうもないバカ息子を演じている。また、ジュード・ロウは変質者のよう…

霧の国から来る

雪のすきまに、ざくざくと 装備を埋め込むものがいる。 夕方、霧が白い粉に変わり わたしの足元で 摘出した腸になった。 へびの声を出して、続いて 長いへびとなって、 霧の入り口にむかう。 霧の国、へびの帰る、 傲慢の門に わたしたちはいる。 わたしはく…

『ワヤンを楽しむ』松本亮

ワヤンはインドネシアの伝統芸能であり村や町で人を集めて開催される。マハーバーラタやラーマーヤナを基にした劇が半日かけて、または夜を徹して行われるため、観客は好きな時に昼寝したり歓談したりする。ガムラン演奏者もうとうとしていることがよくある…

『裁判員の教科書』橋爪大三郎

目的……裁判員を務めるための教科書である。 著者は裁判員制度の問題点を認めつつも、国民による法システムの自己統治を可能とする制度として肯定する立場である。 1 ルール 裁判員裁判は刑事裁判を対象とする。犯罪を裁く法律は刑法の他に「破壊活動防止法…

『検察の正義』郷原信郎

検察官として勤務した経験をもとに、検察の構造、問題点等を説明する。 1 著者は東大理学部を出て三井金属鉱山に入社したのち、官僚的な雰囲気に幻滅し退社、2年かけて司法試験に合格し検事となった。 検察の特殊部として公安部と特捜部があり、著者は数年…

勉強と買い物 ――満州国、先住民、「レヴェナント」その他

◆勉強 無職戦闘員として、最近、英語の勉強を再開することになった。 1 聴く、話す ・Youtubeでニュース動画を観る。また、映画を英語字幕で観る。慣れたら字幕なしにする。 ・以下の本がおすすめだと聞いたのでやることにした。 CD付 即戦力がつく…

『『コーラン』を読む』井筒俊彦

イスラームの神髄はコーランにあるため、この原典をまず正しく読む姿勢が重要であるという。講演を収録したものらしく、文は平明で読みやすい。 1 コーランはムハンマドの口を借りた神の言葉として成立した。 コーランの語源は「口に出して読む」という言葉…

『バラバ』ラーゲルクヴィスト

スウェーデンの作家によって書かれた本。 新約聖書のバラバを題材とする。バラバはキリストの代わりに恩赦によって釈放された悪党だという。 キリストに代わって磔刑を免れたひげ面の盗賊バラバは、神の子キリストが磔にされたとき不思議な現象を目撃する。…

「タイガーランド」

公開:2000年 監督:ジョエル・シュマッカー <ネタバレあり> 軍に入隊させられた人物が自由を求めて反抗する話。 軍は何も知らない新兵に対して法律を教えず、除隊要件を満たしていても強引に働かせようとする。また、人格に問題のある攻撃的な人間であ…

公園で

夜、乱数の公園で、 鹿肉たちが音楽をつくる。 冷たい霧をはきながらやってきた 肉屋と猟師たちをともなって。 すべての軽い楽器を 軽いラッパと、軽い太鼓を 波形にあわせて まさしく、演奏家のように 調整する者らの影。 プロペラ式の街燈にあてられて 伸…

『神は妄想である』ドーキンス その2

6 道徳の起源は宗教であるといわれるがドーキンスはこれを否定し、道徳は宗教に先行すると主張する。 『利己的な遺伝子』の誤解から、ダーウィン主義は道徳と相容れないと考えられている。利己的なのは遺伝子であって、個体や種ではない。 個人がお互いに利…

『神は妄想である』ドーキンス その1

『利己的な遺伝子』の著者による、書名だけで論争を招きそうな本。 宗教の害を論じ、無神論者であることを正々堂々と主張することを目的とする。宗教が無くとも道徳は成り立つというのがドーキンスの考えである。 特に、宗教的な色彩の強いアメリカ合衆国を…

『言語を生みだす本能』スティーヴン・ピンカー その2

7 ――……人間の音声知覚はピラミッドの下から上へ働くだけでなく、上から下へも働いているといえそうである。……音韻ルール、統語ルール、この世では誰が誰になにをする傾向があるかというステレオタイプな認識、相手がそのときなにをいいそうかという勘にいあ…

『言語を生みだす本能』スティーブン・ピンカー その1

言語を習得する本能について説明する本。著者は特に言語学等の一般向け書籍を多く書いており、本書も文章、構成ともに明快で読みやすい。 1 ヒトの最大の特徴は言語能力である。従来の説や先入見と異なり、著者は、言語は人間の本能に基づく能力であり、文…

『金正日の料理人』藤本建二

つい最近も訪朝しメディアに登場した著者の本。 著者は寿司職人として北朝鮮に呼ばれ、金正日に気に入られて専属料理人として働いた。 金正日と幹部らの生活はアラビアの君主を思わせる。かれらは毎日ぜいたくな料理を食べ、スポーツカー、バイクを乗り回し…

「ドラゴン・タトゥーの女」

公開:2011年 監督:デヴィッド・フィンチャー 不幸な育ちの若い女性と記者のダニエル・クレイグとが、実業家一族にまつわる事件の謎を解く。 近親相姦、虐待、性的暴行といった要素が含まれている。この映画や「The Hunt」を観ると、北欧は「暗い田舎」…

要望のある太守

草を火にかけて 灰緑の、命の煙を 公文書抹消の煙をあげよう。 首を提灯のようにぶらさげて、 そうした、首、首で 連接された おぞましい友達の環を結んで、 記録と報告を骨まで 燃やそう。 わたしたちは、力強い 太守の背中に、 脂肪が表皮からはちきれそう…

『怪盗紳士ルパン』モーリス・ルブラン

過去を捨て、他人に成りすます泥棒の話。1つ1つの話は短く、語り手が話すような調子で書かれている。この語り手がルパンであることが多い。または、ルパンと対談して事件について思い返している。 ルパンの特技は他人になりすますことであり、登場人物のだ…

『聖書考古学』長谷川修一

◆独り言 自分はキリスト教徒ではないが、聖書に書かれている世界や、キリスト教文化には関心がある。 旧約聖書の、奇怪なエピソード、荒涼とした世界に一方的に憧れを持っている。また、キリスト教の文化と思考方式が人間の歴史に及ぼした影響は大きいと感じ…

『赤軍大粛清』シュトレビンガー

ソ連における大粛清と、ドイツ情報部門の謀略とをつなぎ合わせて検討する。 1 謀略 1936年からスターリンは古参党員の抹殺を開始した。この本のテーマは1937年6月に行われたトハチェフスキーら将官の粛清である。 ボリシェヴィキの政権掌握後、亡…

『新しいウイルス入門』武村政春

ウイルスは生物とはみなされていないが、ではいったい何なのか。 *** 1 生物に限りなく近い物質 ウイルスは生物に限りなく近い物質である。生物学では細胞を持つものが生物であると定めているが、ウイルスは細胞を持たない。 形……核酸がタンパク質の殻で囲…

『日本の象徴詩人』窪田般弥

ヨーロッパの象徴主義運動を解説した後、日本における受容や、日本の象徴詩について考える本。前提となる知識が足りないので、読みにくかった。 エドマンド・ウィルソンによれば、「フランスの象徴主義の運動は、ロマン主義者が手をつけずにいた韻律の諸法則…

「ディファイアンス」

公開:2009年 監督:エドワード・ズウィック 親衛隊から逃れ、森のなかで共同体をつくったユダヤ人たちの映画。実在の人物を基にしているという。 ベラルーシは東欧でもパルチザン活動の激しい地域だったが、本作で取り上げられるのは、半盗賊として森の…

図書案内:東アジア、東南アジアの歴史

・宮崎市定、河口慧海の本が、歴史を読むきっかけになった。 ・中国に関心があり、旅行に行くのにあわせて本を読んだ。 なぜ、関心があるのか…… ・多数の民族が住む地域 ・政治と戦争の厳しい歴史 ・自由のない社会とはどういう社会か ・日中戦争は、また別…

発動

あの人物、壊れた屍体のあの人物が、 歩き出す。 球形になって、取り囲む スコップを持った作業員たちの 中心で。 何度もスコップで叩かれ、胴体の (主たる構成部分について、再びもとには戻らないだろう) 四肢はぼろぼろと落ちた。 しかし、屍体は停止し…

『オデュッセイア』ホメロス

トロイア戦争の英雄オデュッセウスが、知恵を使い災難をくぐり抜けて無事家に帰るための物語。 叙述よりも、オデュッセウスや神々たちの会話の方が分量が多い。また、物語も人物の報告や説話の形をとおして伝えられる。 1 オデュッセウスの息子テレマコスは…