うちゅうてきなとりで

The Cosmological Fort 無職戦闘員による本メモ、創作、外国語の勉強その他

2015-09-01から1ヶ月間の記事一覧

『ひらがなでよめばわかる日本語』中西進

漢から輸入される以前の「やまとことば」を手掛かりに「基本の日本語を観察し、そのことで日本人の思考や感情の根本のところを見きわめようと」する本。 普段使われているやまとことばにどのような役割、由来があるかについて説明される。 項目は以下のとお…

『日本語の歴史』山口仲美

この本の目的は、「日本語の歴史に関する専門的な知識をわかりやすく魅力的に語ること」、「日本語の変化を生み出す原因」をさぐること、「現代語の背後にある長い歴史の営みを知る」ことの3点である。 各時代ごとの日本語の発展をたどることができる。 ――…

『漢字伝来』大島正二

目的……「本書は、……漢字がたどった日本語化への道程を追跡し、私たちの祖先がどのようにして漢字・漢文を自家薬籠中のものとし、なぜそれができたのかを日本語・中国語構造の違いや古代朝鮮の文化的影響、東亜細亜諸国の漢字との取り組み方なども視野に入れ…

『近代能楽集』三島由紀夫

この作者は昔いくつか読んでよくわからなかったのでそれ以来まったく読んでいなかった。この本や、「わが友ヒットラー」等の戯曲は抵抗ないが、小説は文章が好みに合わないので回避している。 能を、近代風に改造した作品集。 どこかできいたことがある話と…

『魚雷艇学生』島尾敏雄

予備士官学生として海軍に志願し、魚雷要員として配属後、特攻モーターボート「震洋」隊の指揮官に任命されて発進基地に移動するまでを回想する。 この本は40年後の本人が当時を回想するという形式をとっている。 教育隊での生活、体操など、とくにかたよ…

『Mystery and Manners』Flannery O'Connor

オコナーの評論、講演等をまとめた本で、おもに制作、フィクションについて書いている。『秘儀と習俗』という翻訳が出ている。 アメリカ人女性の作家で、主に短篇を書いた。その他奇妙なキリストの姿をモチーフにした『賢い血』等の著作がある。 オコナーは…

『一向一揆と石山合戦』神田千里

従来の一向一揆説を検討し、新しいイメージをえがく。本願寺派は、近世になると東西に分裂し、対立する。この過程で、いくつかの、事実と異なる一向一揆像が流布することとなった。 一向一揆ということばは近世、本願寺派によってつくられたものである。 本…

『中国共産党史』シュウォルツ

共産党、中国における共産党の発足から、指導者の交代、毛沢東による共産主義運動の勝利までをえがく。中国共産党の誕生は、大きくわけて、陳独秀らによる創設、国民党との協力、?秋白の時代、李立三の時代、毛沢東による主導権の奪取等の項目となる。 この…

無明の王

それから次の 両手を持って、手首と手首を ひもでつなぐ。 火薬の香りが 立ちのぼる、だれかの 青緑の帽子。 わたしにも、わたしの となりの人形にも 一様に咲く、ペヨトル花を 長方形の、自然の鉢に 投げこんでいく。 機械力の助けを借りて。 わたしは読む…

『インドネシア イスラーム主義のゆくえ』見市建

世界最大のムスリム人口を抱えるインドネシアにおいて、イスラームがどのような状況かを説明する本。 「イスラームと暴力」、「民主化と穏健なイスラーム主義」、「左翼思想」ほかポップなイスラーム等の項目に分かれる。 911後におこったバリ島爆弾テロ…

『日本人は人を殺しに行くのか』伊勢崎賢治

安全保障法案に反対する著者の本。 1 国連憲章は、国連的措置(すなわち集団安全保障)が行われるまでの間、各国に対し個別的および集団的自衛権を認めている。 個別的自衛権と集団的自衛権は、国益を守るために行われる。一般的に、自衛権の行使に際して、…

『過激派事件簿40年史』

戦後の学生運動時代から、最近までの過激派の犯罪を紹介する。事件の概要と、当時の背景が説明され、左翼運動の変遷、組織の展開を知ることができる。安保闘争、新安保闘争の時代には、活動家に加えて、大学生や労働者もデモ等に参加していた。やがて、一部…

『The structure of scientific revolution』Thomas S. Kuhn

科学の発展は、パラダイムの転換によっておこなわれる、という主張の有名な本。 科学は科学者集団によって営まれる活動である。通常科学とは、科学的な業績に基づく、さらなる基礎と実践を加えるための研究である。 通常科学において、高度の説得力をもつ、…

『ムッソリーニ』ロマノ・ヴルピッタ

ムッソリーニはイタリア国内でいまだ話題にされる存在であり、国民の憎悪と尊敬を浴びている。この本は、日本人や外国人にむけて書かれた、イタリア外交官によるムッソリーニの伝記である。 ムッソリーニはロマーニャ地方の村プレダッピオで生まれた。家は貧…

『現代イスラエルの預言』アモス・オズ

作者はイスラエル人の作家で、シオニストのハト派として政治活動をおこなった。この本では、シオニズムの成り立ちが紹介され、また、イスラエルアラブ紛争についての見方が示される。 作者は平和運動を進めるが、自分の立場があくまでイスラエル側であること…

『宮中からみる日本近代史』茶谷誠一

「宮中」とは元老、内大臣、宮内大臣、侍従長その他を含む政治勢力であり、戦前においては他の国家機関に匹敵する影響力を持っていた。 明治憲法体制は、宮中、元老、議会、内閣、軍部がそれぞれ天皇に対し責任を負う多元的な体制であり、国家意思を一元化す…

『スペインの短い夏』エンツェンスベルガー

スペイン内戦において活動したアナキスト活動家についての、昔風の記録。 文体や雰囲気が昔の左翼運動を連想させる。 この本の題材であるドゥルティは、スペインのアナキスト団体CNT(全国労働者連合 )=FAI(イベリア・アナキスト連合)の幹部の1人であり…

コデックスの人

もう1匹、もう1匹と ワニが顔を出す。 短い手を使って 緑色の、ごつごつした 指で 森林を整備した。 高濃度の 霧と、硫黄の 成分に包まれ、ワニたちは 苗と土を維持するだろう。 確かに 一連の、薬草の系は こしらえられた。 沼から突き出す、パルチザンの…

『スラヴ民族と東欧ロシア』森安達也

スラヴ民族の定義、歴史、宗教から衣食住までの文化、社会主義との関係、周辺民族とのかかわりなどを概観した本。 スラヴ民族とは、印欧語のひとつであるスラヴ語派に属するスラヴ諸語を母語とする民族である。この分類はラテン語民族、ゲルマン民族等に対応…

『文学と哲学のあいだ』照屋佳男

◆オーウェルの文学について かれは人間の自立性を重んじた。自分の感情が、自律のための原動力であるとオーウェルは考え、追い詰められたときにこそ、自分の我を貫きたいという欲求が生じる、と述べた。 また、彼によれば作家のための前提として3点の心的態…

『Politics among nations』Morgenthau

国際関係論のうち、リアリズムの代表的な本のひとつとのこと。 *** 第1部 政治思想にはリアリズムと理想主義の2派がある。リアリズムは政治の世界を人間の権力の結果ととらえる。世界の改革は力の原則を通しておこなわれる。リアリズムは抽象原理よりも歴…

『瀕死のリヴァイアサン』山内昌之

――なんぢその力をもて海をわかち水のなかなる龍の首をくだき/リヴァイアサンのかうべをうちくだき野にすめる民にあたえて食となしたまえり 本書はソ連における民族問題、とくに多数のムスリムを抱える中央アジア政策について研究したものである。書かれたの…

『新麻雀放浪記』阿佐田哲也

――「だって、あんた、買い物に来たんでしょ」 「いや、煙草を奪りにきたんだよ」 「そりゃア困るね。冗談ごとじゃすまない。あんた、煙草1箱でも、物を奪りゃ、泥棒ですよ」 「物を奪っちゃ、いけねえのか」 「いけねえのか、って、酔ってるわけでもないん…

管路歌

湿地帯のなかを 徒歩行進の回虫たち 霧吹きをもって ひざとくるぶしを 冷やし、 そうしているうちに 草の中の地蔵が 土にめりこんでいく。 さまざまな 石のかんむりをつけた 地蔵の頭部にかれらは 腰かける。 そのとき、青い弁当が広げられた。

『アイヒマン調書』ヨッヘン・フォン・ラング

アイヒマンは親衛隊のなかの警察関係の部署ではたらき、戦争がおわると逃亡したがつかまった。 親衛隊国家指導者ヒムラーがおり、その下の公安部署のトップがハイドリヒだった。アイヒマンの直属の上司はミュラーである。 かれは親衛隊中佐の階級まで昇進し…

『敵あるいはフォー』クッツェー

ロビンソン・クルーソーを下敷きにしたフィクション。古典を題材に、物語や歴史とは何なのかを検討する。 無人島にながれついた女のつぶやきから本がはじまって、本家とちがって生気のないクルーソー、黒人のフライデーなどが登場する。どういう展開になるの…

『憲法と平和を問いなおす』長谷部恭男

立憲主義とは何かを考える本。立憲主義の成立には、戦争と平和が深くかかわっている。 立憲主義は、「憲法典への服従」ではない。 ヘンキン教授は立憲主義の定義を次の2項目とする。 ・人民主権とそれに基づく代表民主制 ・権力分立及び抑制・均衡、個人の…

『アラブが見た十字軍』アミン・マアルーフ

十字軍にかかわる記述は、ヨーロッパ側とアラブ側ではまったく一致するところがないという。 当時、高度な文明をもっていたアラブは、十字軍をフランジ(フランク)、侵略者、蛮人と呼んだ。この本はアラブ側から見た十字軍戦争を描くこと。 一般向けの通史…

『ホメロス』ジャクリーヌ・ド・ロミーイ

第一章 両詩篇の誕生 ホメロスは前八世紀に生きた盲目の詩人である。この前提が既に論議をまきおこす。 優美豪勢なクレタ文明は、荒削りで強力なミケナイ文明に敗北した。線文字Bを用いるミケナイ文明はアガメムノン王に率いられトロイア遠征をおこなった。…

『マニ教』ミシェル・タルデュー

善悪二元論の代名詞となったマニ教についての説明書。 第一章 マニ マニは五二七年、バビロニアの上ナール・クーター地方のマールディーヌという城塞都市に生まれた。アルサケス朝アドハルバン王のときだ。父親の名はパッティキオスだと伝わる。家族はナブ神…