うちゅうてきなとりで

The Cosmological Fort 無職戦闘員による本メモ、創作、外国語の勉強その他

2015-07-01から1ヶ月間の記事一覧

環境(定型)

アルガザル西の旗と光の柱釣り天井をのぼる税理士 衛星と成層圏培養菌をミルクに入れてかき混ぜてのむ

『速度と政治』ポール・ヴィリリオ

大変読みにくい。 軍事史における交通、速度、身体の役割を解説する。都市計画は国防に深く関係する。が、文芸的な表現が多くて理解しにくい。 第一部 速度体制の革命 フランス革命および共産主義革命の話題からはじまる。 街路が群集を加速させ、攻撃の方向…

『アシェンデン』サマセット・モーム

大戦中、情報員としても働いたモームが体験をもとにつくった短編集。 英国の作家アシェンデンはR大佐の依頼に応じ、スイスで諜報活動を行う。 連作形式になっており、それぞれアシェンデンが出会う人物に焦点をあてる。挿話群に通ずるのは英国人としてのア…

『スペインの遺書』アーサー・ケストラー

スペイン内戦に潜入したケストラーの本。オーウェルの『カタロニア讃歌』と読み比べてもおもしろい。 スペイン内戦は共和国軍の民兵とフランコ率いる叛乱軍の内戦である。フランコは王党派を名乗りファシスト・イタリアの援助を得た。ケストラーは英国の新聞…

『ロシア革命 一九〇〇―一九二七』ロバート・サーヴィス

ところどころ翻訳がおかしい。 ロシア革命には様々な解釈があるようで、この本は帝政ロシアからの支配制度が衣を変えただけという考え方である。 第1章 不安定な構造 一九〇〇―一九一四 ロシアはつねに不安定な状態にあり、伝統主義と工業化の二重の危機に…

『真昼の暗黒』アーサー・ケストラー

スターリンの大粛清を題材にしたフィクション。ジョージ・オーウェルが言及していた。話としてもおもしろいが、ソ連亡命者の体験を参考にしており現実味がある。 「第一人者」スターリンの治下、革命戦争の英雄ルバショフは逮捕される。彼は政治上の意見の相…

忍者について

壁から壁、柱から柱へ、 伝播する顔と顔とその裏側の 面に塗りたくられた金と いやしい黄金の専門的な 泥棒特技の者の首。 異様(ことよう)なりと口を出す 猿顔の泥棒たち。 暗いところの1点からまた1点へ 座標を変えて、交話する 忍者のすえた垢のにおい…

『英国史』アンドレ・モロワ その3

第六篇 君主制と寡頭制 ウィリアム三世は英蘭銀行を設立し政治と経済的利害を一致させた。次のアン女王の代にスペイン継承戦争がおこる。カルロス二世の後継がフランスから出るかオーストリアから出るかが問題だった。イギリスはオーストリア、プロイセンと…

『英国史』アンドレ・モロワ その2

第三篇 封建制度の盛衰 フランスの法制はナポレオンの代からはじまるがイギリスでは十三世紀末のエドワード一世の整備からはじまる。イギリスにやってきたロンバルディア人は銀行業を営んでそれが今のロンバード街となった。 また彼の代から議会が発足する。…

『英国史』アンドレ・モロワ その1

イギリスの歴史。成立の過程は複雑だが、随所に皮肉が混じっておりおもしろい。 第一篇 先住民族 イギリスは島国でありながら大陸に近かったので独特の島国文明を築いた。イギリスは侵入しやすい地形と気候をもつ。またラテン・ゲルマン双方の影響が大きい。…

『言葉の秘密』エルンスト・ユンガー

ドイツ語についての文章が多いため、ドイツ語が読めない私には8割方理解できなかった。 母音頌 ドイツ語ふくむ印欧語では母音はあらゆるものの根源をなす。われわれが記憶において日付よりも視覚像を鮮明に思い出すように、言葉において母音は描線にたいす…

『中世の秋』ホイジンガ

文化史家の有名な本とのこと。中世の様子を列挙していく。 十四、五世紀の生活の諸形態、中世の終焉を、フランスとネーデルラントを中心に書き出していく。 栄華はいまよりも鮮烈で、貧困と寒さ、闇もまた果てしなかった。中世人の人生において幸と不幸はは…

『大英帝国の「死の商人」』横井勝彦

1章は幕末の武器輸入状況について。幕府および西南雄藩が買い入れたのは中国に漂着した旧式銃、廃銃だった。長崎をおさめる佐賀藩はいちはやくエンフィールド銃を購入し、諸藩に先んじてアームストロング砲を導入した。これが維新のたたかいで大きな効果を…

血みどろの遠近法

子供は眼をあけた。 口腔から指先を出して 青草と、霧の 入り混じった大気をかきまぜた。 わたしは見る、 黒い工夫たちが、つるはしと金槌を 振り下ろし、 時間の墓を打ち立てる状況を。 不意に、かれらは年老いて しわだらけの眼窩に、モノクルを はめこむ…

『清帝国の繁栄』宮崎市定

――税金は高くなればなるほど、その負担が不公平になる。 秀吉の朝鮮出兵は万暦帝の明財政を逼迫し、満州族の台頭に一役買うこととなった。あわせて飢餓が起こると、どうせ死ぬなら、と農民がいっせいに盗賊となる。これを討伐するために派遣された軍隊で糧食…

『美術史Ⅰ 古代美術』エリー・フォール

ヘンリー・ミラーの文体に影響を与えたとされる本。美術史の形を借りた散文詩という印象が強かった。 ――……彼は創造する精神への熱狂的信仰をもっていた。われらがウォルト・ホイットマンのそれと同じように、彼のものの見方は何よりもまず宇宙的だった。(彼…

『近代とドイツ精神』山本尤

帝政からナチス時代にかけてのドイツ精神を概観する本。また、NSDAPと大学、作家との関係について詳しく書かれている。入門者にはわかりやすい。 著者はゴットフリート・ベン研究者でもあり、この詩人とナチスの関わりが言及されている。 Ⅰ 近代との対決 第…

傭兵隊長のすがた

――傭兵の真のタイプは、あたかも事柄がきちんと整頓されているかのように続いていく腐った理想主義と向き合って立っている。――かれらは昔も今も将来も、あらゆる場所、あらゆる時代にも変わらず、あの生ける屍とは何の関係もないとの感じを与える。危険がま…

ニューロ保全歌(定型)

はるかなるコルムビダエの肋骨を剣先でなぞる子供のかけら 信号的ないやがらせ、わがダーイシュとわれらの軍を湯舟に溶かす 復号病 中枢神経のコネクタを神のテンプルに挿しこんで待つ あの残光周波数から線を浴びて皮フをめくる手品師と飼い犬

『アラーの神にもいわれはない』アマドゥ・クルマ

主人公ビライマの自叙伝がはじまる。 口語文体によって、彼が正規の教育を受けていないことが示される。フランス語を使えないものは稼ぐことができない。 同郷の贋金つくり、ヤクバとともに部族戦争中のリベリアに出発する。部族戦争とはおいはぎが「富の分…

『種の起原』ダーウィン その2

第五章 変異の法則 変異は遺伝によるものだろう。機構や食物が作用する割合はわずかである。たとえば、海の近くにいる昆虫は体色に傾向をもつ、など。 ――あらゆる種類の種は特徴の著明になった永続的な変種にすぎない。 要するものは大きくなり、不要のもの…

『種の起原』ダーウィン その1

生物学の古典を読んでみたが、意外と読みやすかった。ただし実際に理解できているかどうかは別である。 序言より……生物の生態がすべて外的条件、習性、生物自身の意思によるものであると考えるのは正しくない。そこで彼が提唱する考えが<生存闘争>、<自然淘…

『漢民族と中国社会』橋本萬太郎

漢民族と、中国における社会の成り立ちを説明する本。 序章 漢字文化圏の形成 漢民族とは「漢字を識っている人びと、および漢字を識ろうと願っていた人びとの集団」である。このため、公用語が漢文であった日本はじめベトナム、朝鮮では「民族国家成立の文化…

『人間の土地』サン=テグジュペリ

みじめな生活とは何か、なぜ働かなければいけないのかについて考える本。 ――ぼくら人間について、大地が、万巻の書より多くを教える。理由は、大地が人間に抵抗するかがためだ。人間というのは、障害物に対して戦う場合に、はじめて実力を発揮するものなのだ…

『輝ける闇』開高健

ベトナム戦争を題材にした昔の日本文学で、主人公のインテリの苦悩よりは、ベトナムの様子や戦場での生活の方が印象に残った。 日記体と客観的な叙述が混ざったような形式のフィクションである。 従軍記者の私と、アメリカ兵、それに寺の坊主(ボンズ)。南…

『戦争の起源』アーサー・フェリル

古代史における戦争形態の変遷をたどる本。図も入っており読みやすい。 この本曰く古代戦の技術を結集したのがアレクサンドロス大王軍でありまた彼が近代戦の基礎を築いたという。ナポレオンとアレクサンドロスとの距離はそう遠くない。 第一章 先史時代の戦…

秘匿歌(定型)

雪の衛星不要波を指でつまみあげ歯茎にこすりつける日の足 フォネティックコードのかたちに隊員の炭化した指と骨をねじきる 地下4階の回虫たちを囲む夕べ脂肪と脂肪のすき間におなか 墓の下にいる来年も墓の下に鼻まで埋もれている王の首

『読書日記』E・R・クルティウス その2

マルローの略歴→新作『アルテンブルクのくるみの木』→文化形態学について→ドイツの芸術研究・文化研究とマルローのつながり→マルロー『芸術哲学』の大要→芸術への問いかけ。 *** ヴェーバー『職業としての学問』評。 若い研究者志望は霊感を得るため人格と体…

『読書日記』E・R・クルティウス その1

批評家とその著作の紹介から、関連するテーマについての引用、そして英独の状況の違いへ話を拡大させていく。ここでは、伝統と教養を重んじるイギリスのラジオ放送についてが書かれている。 ドイツの文芸雑誌および翻訳への苦言。古言の引用。作家、小説家、…

『労働と人生についての省察』シモーヌ・ヴェイユ

『労働と社会的抑圧』につづくヴェイユの本。 自由な労働を謳うボリシェヴィキのだれも、工場に足を踏み入れたことがないのだろう。 「ここでは、むしろ、考えないために給料が支払われている傾向がありそうです」。 人類のすべてに頭脳を使われては困るのだ…