うちゅうてきなとりで

The Cosmological Fort 無職戦闘員による本メモ、創作、外国語の勉強その他

2015-04-01から1ヶ月間の記事一覧

馬の首病 (2012)

出口から出口、緑のなかに、わたしが わたしは白い文章を彫った 湯気に手をあてて、やはり、 四角いあぶくのつらなり わたしと、衣裳を身につけた 山の女の子が、サボテンの 水をのんだ。 2人は不動の姿勢のまま眠るすると 頭部だけがひっこぬかれる。 40…

『物理学と神』池内了

近代科学の発展と、神(一神教の神)とのかかわりを追っていく。自然の摂理を分析する科学と、世界を創ったとされる神の存在は、互いに矛盾するものだった。それぞれの時代がこの対立にどう対処したのかという歴史は、人間が神を放逐する歴史でもあった。 **…

日記

自分が読むだけの日記は毎日書いていますが、このようにブログに公開するために何か書こうとすると、とても不自然になります。 気温が上がってくると、電車の中がむしあつくなります。朝晩はまだ風が吹いていると涼しいですが、電車に乗ると熱気がこもってい…

水晶のはさみ(2012)

こする音がして、げっ歯類がわたしの へやを移動した、わたしは 湖面が沈む前に、その前に あったことの8割がたを忘れて わたしはハサミを保持した 粘性のある、生体の一部を、これは ひきのばされてしまった 楕円状の内臓的なおもいでを切り分けている ウ…

幽霊谷(2012)

いつものもの、絶対に顔の図柄が見えないようになっている、背中の複製品がたてづつけに吐きだされたのでわたしはバスからおりた バスから、ガラスを圧迫して、白い綿のようなものがふくらみつづけてついに 割れた。 青黒い谷の切り立った箇所を、往復する列…

『Youth』J.M.Coetzee

祖国南アフリカから脱出しようと試みるさえない主人公が、看護婦にもてあそばれるところから本書ははじまる。黒人政策をめぐるデモと弾圧で、数学を学んでいた彼は幻滅し、ロンドンに向かう。ここでIBMに採用されるが、長時間労働と孤独に苦しむ生活を送る。…

『敗者の条件』会田雄次

「競争」competitionを訳した福沢諭吉の挿話から、闘争・競争をめぐるヨーロッパ人と日本人との精神の違いを論じる。 文の端々から頑固オヤジ的気質がひしひしと感じられる。 *** 戦国時代とルネサンスをともに繁栄と闘争の時代ととらえ、競争の原理について…

箱におしこまれたひも、系

耳のないどうぶつのあたまを採集した花畑に咲く脳のつみとり 花の茎をつきたてるこの担当官が緑の柵をたてるケシヅラ 矢を射る、矢を姪のおなかにさす、なでるうごきをする妹たち 糸をとおして、団長はおまえとケーブルをむすびつける、うしろから太陽の猛毒…

『未完の明治維新』坂野潤治

本書は「未完の」と名づけられているが、明治維新の際のいくつかの失敗を描く。まず、藩士議会成立の失敗、そして健全財政の失敗、……である。 *** 明治維新のとき、西郷は強兵論を、大久保は富国論を、木戸は議会論を、板垣は憲法制定論をそれぞれ唱えていた…

『戦う操縦士』サン=テグジュペリ

対独戦の仏軍パイロットとして出撃をまつ場面から本書ははじまる。仏軍は物量的に不利な状態にあり、司令官アリアスの出撃命令は死刑宣告に等しかった。焼け石に水のような貧弱な航空体制のもとで、彼は国家への忠誠を失いかけ、すべてを無意味と考えるよう…

旧植民地のあそび 12つづき

するするとのぼる 春という5月あたり 赤い染料、の内部に きりもみ回転したのち そののちの 花と種のにぎわい、わたしは 顔面を、すでに くくりつけてあるものを掲揚する 軸のまわりを、2つの組の ものが巡航した、畑が それは、この人たちがたがやした

旧植民地のあそび 10

深夜、水時計の、文字盤から、勤務員たちがぬっと顔をだして、自分たちの作業の確認をうけにやってくる。 長針が風を切って、こちらに近づいてきては離れる、なので人間のやぶは、刈り取られていま、いきおいよく星の濃度にあわせて、からだが飛びだすと反射…

『ロシア革命史』リチャード・パイプス

旧体制時代からボリシェヴィキの台頭、そしてかれらがロシアを支配下に納めるまでを描く簡約史concise historyである。 冒頭から彼は自分の主義を明確にする。即ち、一般民が求めるのは常に保守的・具体的なことがらであり、この不満は既存の体制でも大抵は…

旧植民地のあそび 8

高山植物がある山にいった。1人の、口のなかの黒い人、担当者にたのまれて、わたしはことわれなかった。冷却液と、空気の流れによって、この山、山のてっぺんは、適度にみがかれている。緑の、および、鮮やかな、青い花におおわれた表面が、なめらかだとお…

鉄道の呪い(2012)

かたまりを食べる、 泥の上に線路をしいて。 金色の木こりのうで、花の裏に 有害な集落へのとびらが あり、砂漠になりかけた。 わたしは変化のまちに到着して ねた。 ろうかのつきあたりから ほこりが吹く という図像をみせられる。

『スターリニズム』グレイム・ギル

本書はスターリニズムを実証的に分析する。冷戦が終わることによって、より政治的意図や影響を離れた研究が可能になった。 *** スターリニズムの起源については、ロシアの後進性、政治文化、レーニン時代の政策、スターリン個人の特性などさまざまな要因が考…

『小説の諸相』フォースター

小説論・文芸理論というよりは、小説漫談に近い。 彼は学問の名を借りた文学理論を嫌悪しており、これを有害な似非学者とののしる。そこで彼が論じていくのはストーリー、登場人物、プロット、幻想、予言、パターンとリズムである。あえて科学的な手法をとら…

『パーフェクト・スパイ』ジョン・ル・カレ

『寒い国から帰ってきたスパイ』、『鏡の国の戦争』につづいて読む。彼の作品に出てくるスパイは皆自己のコントロールに長けたエリートである。 *** 詐欺師の息子として生まれたマグナス・ピムは嘘に囲まれて育ち、自分も父の片棒を担がされてきた。結果、嘘…

『スペイン戦争』斉藤孝

王政とナポレオンの襲来を経た二十世紀、スペインはヨーロッパの後進国になりさがっていた。ブルボン王朝は肉体的・人格的な欠陥者を次々と生み出し、教会が最大の地主であり、国富の三分の一を所有していた。軍隊は将校が異常に多く、貴族と地主の就職機関…

『経営戦略のゲーム理論』ジョン・マクミラン

ゲーム理論を用いて経営戦略における意思決定を考える。 *** 第一部 戦略的意思決定 まずは相互依存性、相手の予想を予想する、個人の最善と集団の最善は矛盾するなど、ゲーム理論の原則がつづく。決定には不確実性がつきものだが、これを決めるには確率を用…

旧植民地のあそび 7(2012)

すこしだけ、さびの浮き出た金属のはさみで、作業台の上の皮をとりわけた。ステンレスの台に、血が浮いている、それでもよくふきとっているので、皮、生皮からこぼれた血液はかたまりになった。 作業員は、そなえつけのペーパーでよごれをぬぐった。ビニール…

『信用恐慌の謎』ラース・トゥヴェーデ

原題はBusiness Cyclesで、その通り景気循環についての本。作者はヘッジファンドのマネージャーらしい。歴史読み物なので読みやすい。 ジョン・ローがオルレアン公フィリップのもとで王立銀行を設立し、信用紙幣(ペーパー・マネー)を確立させ国家の財政難…

『笛吹川・甲州子守唄』深沢七郎

笛吹川は戦国時代の武田氏のもとで生きる農民を、甲州子守唄はおそらく戦前から終戦までの、山梨の農民の生活を描く。 笛吹川では、百姓は力をもつ武士に翻弄される。昔から武士に斬殺されたりと怨みしかなかったにもかかわらず、若い息子たちは「先祖代々お…

交代(2012)

身のまわりの機械類がとても静かなのでその日太陽がかたむいて 砂の山が影をひくのにともなって、裏側にゆっくり沈んでいくのがわかった 山が連続して並んでいる、すりばちと、とがった波長のかたちをもつ、銀色と、つやのある砂の山、台地には、弟の眼には…

『比較法概論』ツヴァイゲルト ケッツ

有斐閣『法学入門』にて薦められていた比較法の入門書。入門書とはいえ世界各国の法の歴史、制度、特色などを学ぶことができる。 大陸法圏に入るだろうわれわれからみると英米法は興味深い。 *** まず総論において比較法の定義を述べてから、ローマ、ドイツ…

『マホメット』藤本勝次

マホメットとユダヤ教とのたたかいに焦点をあてて彼の人生を考える。コーランの大半はユダヤ教にたいする反駁にあてられている。マホメットもユダヤ教徒を兄弟とみなしており、イスラームにとってユダヤ教は、むしろキリスト教よりも近いのである。 *** マホ…

口のなかの点検(2012)

かさなりの雲のびん、ねむっている そのままのツル草をひっぱった 姿勢を保持する、機材を のせたわたしたちの車両は発進した。 あふれだす、こぼれた、冬のちぎれ目から、舌の裏側の泥 沼地に、星のかたちをまねた昆虫の 巣が落ちかかったとおもった。 人を…

『ビンラディンの論理』中田考

イスラーム社会、法の概説からはじまり焦点であるビン・ラディンの半生や思想をたどる。 *** イスラームの組織構造は緩やかなネットワーク型であり、キリスト教の教区制や仏教の檀家寺請制度と異なる。厳密な指令系統を持たぬイスラーム特有のつながりがビン…

『Life in the French Foreign Legion』Evan McGorman

入隊前の覚悟から、手続き、実際の体験まで手広く紹介してくれる。 *** フランス外人部隊に入るものはほぼ例外なく失望すると著者は断言している。脱走はこの部隊特有の症例であり、脱走についても項を割いている。入隊基準や試験、日常生活を細かく教えてく…

舟の年(2012)

魚のいる矩形、魚の 小さな呼吸がつぶになり、粒子の ひとつなぎ、あぶくは鎖をつくる、魚の よだれ、きめられた 周期で、ふくらんで、ちぢむ 水晶の表面をなぞる そのとおりに舟があり、尾ひれを わたしの弟はかじる 甲板から、なめらかな金属の 回転音がこ…