うちゅうてきなとりで

The Cosmological Fort 無職戦闘員による本メモ、創作、外国語の勉強その他

2015-01-25から1日間の記事一覧

暗い回転(2011)

組織液と、すきとおった雨を、紙に ひたした、そういうかたちをしたものが その日の夕方にドアの前に立っている、いや、 軸を、高温のうちにねじりこんだガラスの のぞき穴に瞳孔を近づけてみると かたちと、甘ったるい香りは点滅する ようにつぎからつぎへ…

『南北戦争の遺産』ロバート・ペン・ウォレン

「南北戦争はわれわれが唯一「実感できる」歴史、国民の心のなかに生きている歴史なのである」。 本書はアメリカ合衆国に大きな影響を与えた南北戦争について論ずる。 冒頭、著者は「南部連合の人びとの精神に統一国家への想いが宿っていたように、心の奥深…

『ロンドンの味』吉田健一

本の解説や雑誌の短評、全集に織り込まれた評論などをジャンル別に集めたもの。第一部が料理関係の雑誌『あまカラ』などに掲載した食や名産品などにかんする文章、第二部、第三部はおもに英文学について、第四部は日本文学についての文章を扱う。 *** 吉田健…

『メソポタミア』ジャン・ボテロ

本書は広い意味でのアッシリア学であり古代メソポタミアをテーマとするが、具体的な歴史や事件史ではなく、そうした表面的な出来事を脊椎のように貫く、メソポタミアの思考、神話、精神などを探る。 *** 1 アッシリア学 ジャン・ボテロ氏はモグラのようにひ…

『帝国 ロシア・辺境への旅』リシャルド・カプシチンスキ

本書はロシアの辺境を題材にした紀行文だが、単に行程を記録したものではない。 一九三九年、ロシア国境のポーランドでの、少年時代の思い出が語られる。ピンスクは静かな農村だが、夜な夜なNKVD(KGBの前身組織)が民家に突撃して、家族をひきずりだ…