うちゅうてきなとりで

The Cosmological Fort 無職戦闘員による本メモ、創作、外国語の勉強その他

2015-01-24から1日間の記事一覧

高気圧の城(2011)及び付録

めりめりときしんで、しっくいか、コンクリートか、 なにか四角い構成でつくられた屋根と、天井が ひしゃげていき、わたしのもっている図書と、 わたしのからだは弓なりにたわんで二度と もとにはもどらない 輪郭のない、 暗いかたまりの雲が地上のすれすれ…

『収奪された大地』エドゥアルド・ガレアーノ

本書は土地は豊かだが外敵や独裁者から虐げられつづけているラテンアメリカの歴史をテーマにしている。本書は、外国(欧米日)企業による地場産業の搾取、労働力の搾取、国内の独裁者と少数の富裕層による多数の貧民の搾取など、「新版の序」での暗澹たる追…

『距離の暴虐』ジェフリー・ブレイニー

オーストラリアの特性である「距離」を中心に歴史を書く。本国たる英国・ヨーロッパからの距離が与えた影響、また輸送機関の与えた影響を、本書ではとくに重視している。 オーストラリアは大陸から隔絶しており、また緯度40度付近は強烈な西風が吹き高波が…

『秦漢帝国』西嶋定生

本書は秦漢帝国の概略を述べたものである。秦漢帝国の成立は、とくに皇帝とその下の官僚制・郡県制、および儒教の国教化という二点をもって、その後の王朝の基盤をつくりだしている。同時に東アジア世界なるものが生まれたのも、二つの統一王朝の成立による…

『ミメーシス』E・アウエルバッハ

ヨーロッパの文芸がいかに現実をとらえ文章化してきたかを論じる。古典古代から徐々に時代を下っていく。 *** ホメーロスの物語は舞台や人物、過去すべてが前景にせり出し、照明をあてられたような、遠近感のない、明快な世界である。人物の心理も比較的単純…

『地球の長い午後』オールディス

自転が停止し、植物が支配者となった地球で生きる人間を主役にした小説。 SFと分類されているが、機械類が出てくるわけではなく、物語をつくるのはグロテスクに進化した巨大植物、動物的な挙動をもつ不気味な植物、つる、茎、食肉植物、そして動物のなかで…

『イスラーム生誕』井筒俊彦

ムハンマド伝 異常な情熱をもとにイスラーム布教にはげみ世界史の流れを変えたムハンマドに対して、著者は並々ならぬ共感と憧れを抱いている。文章も感情がこもっており、歴史物語を展開する弁士のようである。 イスラーム以前の無道時代は、部族を中心とし…