・外交交渉
交渉には共通の利益と相反する問題とが存在しなければならない。
ただし、政治的パフォーマンスや、情報収集、謀略のために外交的交流を行うこともある。
準備から予備交渉、お互いの妥協点を探る、駆け引き、解決策の追求、合意まで。
革命的・全体主義的国家の交渉者は、外交を戦闘とみなし、譲歩や妥協をまったく許容しないことがある。
多国間会議は、ヨーロッパ中心の国際システムが終わるとともに、はるかに複雑となった。例として、1973年、75年に行われたCSCE(全欧安保協力会議)をあげる。
現代においては、弱小国の地位が相対的に高まり、また交渉に参加する主体も「国家、国際機関、経済界、労働界、非政府組織」と多様化している。このため、抑制、相互尊重、調和といった原則がますます不可欠になるだろう。
・抑止
抑止の例:
フランスとウィーン体制
ドイツのポーランド侵攻
中東におけるアメリカの抑止政策
抑止は、敵対者が合理的であることを前提としている。威嚇の信ぴょう性は、抑止側の意志と決意、そして実際の能力によって成立する。
抑止は文脈に依存するところが多く、せいぜい時間稼ぎのための戦略にしかならないと著者は結論づける。
・強制外交
抑止が敵の行動をあらかじめ思いとどまらせるものであるのに対し、強制外交は、敵が引き起こした行動を覆そうと試みるものである。
強制外交は、ヨーロッパにおける最後通牒に似ている。
例:
アメリカの対日政策
キューバ危機
湾岸危機
強制外交は、敵対者が合理的であるという前提に基づいている。しかし、お互いの思惑によって、最後通牒が効果を生むかどうか、結果は異なってくる。
敵対者は、要求をのむよりも、コストのかかる戦争を選ぶかもしれない。また、国内的な要因や、自己の英雄イメージから、強制外交の受け入れを拒否するかもしれない。
――要するに、強制外交の結果は敵対者に作用する心理的・文化的・政治的変数に依存し、そのために戦略の成功を予測し確保するのが困難だということである。
現代、大国や国連が小国を統制することはますます困難になりつつある。強制外交の限界を認識することが必要である。
・危機管理
・キューバ危機を通じて、危機管理に関する研究がなされた。
・軍事行動について、厳格な文民統制を維持すること。
・軍事行動のテンポに休止期間を設けること。
・外交と軍事を調整すること。
・軍事目標を明確化し、限定的なものにすること。
・相手側を過度に威嚇した場合(総力戦をしかける等)、相手の先制攻撃を誘発するためそれを避ける。
・軍事的解決より交渉を臨んでいるというシグナルを送る。
・相手側に選択肢を残すこと。
事例として3つあげられている。
・第1次世界大戦
不注意な戦争、望まない戦争の多くは、各国指導者の国内コントロール不足や、国家間の意思疎通の欠如によって発生している。
通信・輸送技術の進歩によって、こうした戦争は今後減っていくかもしれない。
・戦争の終結
戦争をいかに始めるかについてはよく計画されるが、いかに終わらせるかについては何も考えていないことが多い(真珠湾攻撃等)。
全ての国家は戦争目標を抱いているが、これは時間がたつにつれて変質することがある。犠牲やコストは、かえって引くに引けなくなり、戦争集結の阻害要因となる。また、お互いが軍事的優勢を交渉のてこにしようと、攻撃を続ける。
イデオロギーは高いコストを国民に課すことができる。弱小国が、独立や侵略者排除を掲げたとき、ほぼ無制限の犠牲を課すことが可能になる。
・デタント
デタント(緊張緩和)は必ずしもすぐに和解や協商に結びつくものではない。
・1898年ファショダ事件以降の英仏協商
・イギリスの宥和政策
・ブラントの東方外交
・外交政策における軍事力の役割
戦後の合衆国の外交を題材に、対立する2つの方針……「オール・オア・ナッシング」理論と「限定戦争」理論との対立を検証する。
「オール・オア・ナッシング」とは、軍事的手段に訴えるなら圧倒的な物量で解決し、それができないなら一切介入しないとする考え方である。
一方、「限定戦争」理論は、クラウゼヴィッツの「戦争は他の手段をもってする政治の延長である」という命題を展開させたもので、必要な場合には外交手段として軍事的介入を都度用いるべきである、とする考え方である。
ベトナム戦争の失敗後、アメリカでは「オール・オア・ナッシング」理論が主流となった。これは、レーガン時代のワインバーガー国防長官とシュルツ国務長官との論争に代表される。
しかし、ボスニア紛争への介入の是非は、見込みがなければ一切手を出さない「オール・オア・ナッシング」への批判につながった。
軍事力による威嚇は、十分に強力でない場合が多い。
・軍事力行使 倫理的・道徳的拘束
目的は手段を正当化するのか。
・道徳無関心派……ヒトラー、ボルシェビキ、狂信者、過激な民族主義者
・道徳的完全主義者……平和主義者、聖人君子型無能、国家は個人と同じく道徳的に行動すべきであると考えるもの(ウィルソン大統領など)
――「政治家が世界を改善しようという願望に駆り立てられて行動し、最終的には前よりもひどい状態にしてしまったことが、一体何度あったことか」
・不完全道徳主義者……リアリスト、状況に応じて正当化されるとする者。マキャヴェリは本来、この立場だった。しかし、道徳無関心派に誤読されている。
――完全主義者が展開する批判は、道徳的見地から見れば、外交政策がしばしば不完全であることを想起させてくれる貴重なものであり、道徳的な面で自分勝手な思い違いをするという、実際的な人間にありがちな心理的傾向に対する有益な安全弁となる。
・外交革命
本書は、もっとも成功した国際システムがバランス・オブ・パワーであると主張する。第1次大戦は、このシステムを完全に崩壊させ、「外交革命」を引き起こした。
冷戦後の世界は、これまでのどの国際社会とも異なるものである。
- 作者: ポール・ゴードンローレン,アレキサンダー・L.ジョージ,ゴードン・A.クレイグ,Paul Gordon Lauren,Alexander L. George,Gordon A. Craig,木村修三,滝田賢治,五味俊樹,高杉忠明,村田晃嗣
- 出版社/メーカー: 有斐閣
- 発売日: 2009/05/01
- メディア: 単行本
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