うちゅうてきなとりで

The Cosmological Fort 無職戦闘員による本メモ、創作、外国語の勉強その他

トビリシについて

 ◆トビリシの暴動

 久しぶりにジョージア共和国(旧称:グルジア)のニュースを調べたところ、今週、議会でロシア共産党政治家が演説したことに怒った市民が議会前でデモを行い暴徒化したとのことだった。

 

www.afpbb.com

www.cnn.co.jp

jp.sputniknews.com

 

 2016年に10日間ほど旅行に行ったときは、スターリンの出生地ゴリの空爆跡や、南オセチアから避難してきたジョージア人の仮設住宅を見学することができた。

 2008年の南オセチア紛争の形跡が残ってはいたものの、トビリシやスヴァネティ等、治安はまったく問題なかった。

 旅行中一緒に過ごした運転手はロシアやプーチンを毛嫌いしていたが、通訳の方は、一概に敵対するだけではいけないと話していた。

 

 

 ◆ウルムチの思い出

 しかし、外国人が旅行しても案外その土地の雰囲気はわからないものである。

 2007年頃、中国ウイグル自治区ウルムチに行ったときはただ異国情緒のある町だなあとしか思わなかったが、その2年後に民族暴動が起きた。

 わたしが訪問したときは、警察は民族問題を気にしているので、例えばウイグル人の犯罪(スリや強盗など)に巻き込まれても、警察は相手にしてくれない可能性が高い、と注意を受けた。

 夜は非常に静かで、買い物にいった先のタバコ屋のおっさんがひたすらネットゲー(MMO)をやっていたのを覚えている。

 

 

 ◆平和のたてと武装のたて

 もうすぐ読み終わりそうなのが、マンデラ大統領の自伝である。 

Long Walk to Freedom: The Autobiography of Nelson Mandela (English Edition)

Long Walk to Freedom: The Autobiography of Nelson Mandela (English Edition)

 

 

 マンデラはアフリカ国民会議(ANC)の活動家として当初はデモやストライキなどの活動をしてきたが、アパルトヘイトを進める国民党政権が武力鎮圧を行うと、地下組織を結成し軍事行動――発電所等の爆破――を開始した。

 かれは暴力を好まなかったが、敵が暴力を使う以上、運動側も対抗せざるを得ないと判断した。

 

 ――インドにおいてガンディーは外国の力を呼び込んでおり最終的にそれがより現実的で先見の明があった。南アフリカアフリカーナーに対して、この構図は当てはまらなかった。非暴力の受動的抵抗は、相手が同じルールに従う限りで有効である。もし平和的な抗議が暴力で対処されるとしたら、意味はなくなる。わたしにとって非暴力は道徳原理ではなく戦略だった……無意味な武器を使うこと自体に道徳的な価値はない。

 

 マンデラの考えでは、政府が無抵抗の市民に発砲するような状態で、平和的なデモにのみ訴えることは敵による虐殺を許すことでしかない。

 

 

 一方、武力闘争の適合しないところで過激な活動を行う運動は、市民から見放されていくだろう。

 例えば欧米におけるホームグロウンテロや白人至上主義者の犯罪は、政治運動としては何の目的も果たすことができないと思われる(敵を利することはあるかもしれない)。

 

 

 ◆香港デモ

 香港で行われたデモを見てわたしは非常に心配になった。

 大学時代、現代中国史や中国軍について調べてきた限りでは、中国政府は、平和的なデモを許容するような勢力ではないからである。

 中国政府の武力行使天安門事件に限らず法輪功弾圧や民族運動対処など無数にある。

 

 ドイツの作家エルンスト・ユンガーは、第2次大戦中の著作『パリ日記』において、反ナチ抗議活動を行う学生たちに懸念を表明した。

 

 社会が暴力と拷問によってコントロールされていく様子について。様々な自由が保障されなくなったときには、抗議やデモは無意味である。

 ――かれらは議論の時代がとっくに過ぎ去っていることをまだ知らないのである。それにかれらは、敵にユーモアの感覚があることを前提にしている。その意味でかれらは、鮫の泳いでいる海に旗を振りながらなら泳ぎにいけるとおもっている子供と一緒である。かれらはそうして自分たちを見分けやすくしているだけである。

 

 

 

 ユンガーはナチへの協力を拒否したためにドイツ国防軍に匿われ、大戦末期にはヒトラー暗殺計画を支援した。

 

 

 どうすれば香港人は政治的自由を獲得できるのだろうか? それは非常に難しい問題である。どうすれば北朝鮮国民がまともな生活をできるようになるのかと同じくらい難しい。

 

 

 ◆弱者の戦争

 マンデラは自伝の中で、武力闘争を学ぶために様々なゲリラ、反政府勢力の本、また軍事戦略書を読んだと書いている。

 かれが読んだのはクラウゼヴィッツからチェ・ゲバラの本、ボーア戦争史、毛沢東レーニンメナヘム・ベギン『反乱』など様々である。

 

 9.11とアルカイダの関係を書いた『The Looming Tower』の作者は、アルカイダ・メンバーについて、「かれらはおそらく自分たちの宿敵だったメナヘム・ベギンの自伝を読んでいるだろう」とジョークを言った。

 

 ベギンは元々イスラエル独立運動家で、完全なテロリストだった。当時、イギリス政府や市民に対し爆弾テロや報復殺人などを行っている人物は、最終的にイスラエル首相となった。

 

 

反乱―反英レジスタンスの記録〈下〉

反乱―反英レジスタンスの記録〈下〉

 
反乱―反英レジスタンスの記録〈上〉

反乱―反英レジスタンスの記録〈上〉

 

 

 政治が崩壊すると、互いに武力行使をするしかなくなる。まだその段階ではないということは、やれること、やらなければならないことはたくさんあるということである。