うちゅうてきなとりで

The Cosmological Fort 無職戦闘員による本メモ、創作、外国語の勉強その他

無職は緑色の服

 ◆聖書とトクヴィル"Democracy in America"

 現在、文語訳聖書とトクヴィルを並行して読んでいます。

 植民地時代のアメリカ合衆国では、各タウンごとに高度の自治が行われており、敬虔な教徒の集まる集落では聖書にならった法律が施行されていたということです。

 

 ――1650年コネチカット州の刑法は、聖書からの引用で成り立ち、異教徒、強姦、涜神blasphemy、魔女、姦通adultery、親への反抗……を死刑に処すると書かれている。これは極端な専制的なルールだが……

 

 上述の厳しいルールは申命記(Deuteronomy)などを参考にしているようです。

 下は、親に対して反抗的な子供は石を投げて殺せという掟です。

 

 ――人にもしわがままにして背きもとる子ありその父のことばにも母のことばにもしたがわず父母これを責むるも聴くことせざる時は……しかるときは町の人みな石をもてこれを撃ち殺すべし

 

 トクヴィルは当時の反動的なフランスに対してもう1つの道を探すためにアメリカ合衆国を旅行したそうですが、アメリカにおける民主主義に関して、当時の自由主義的政治の最先端と評しながら同時にその限界や危うさも指摘しています。

 こうした合衆国の繁栄の一方で、原住民たちが絶滅に追いやられていることもトクヴィルは書き残しています。

 

 ――ただし、平等な人びとの政治的帰結には、万人の平等と、万人の隷属の2パターンがある。アングロ・アメリカ人は幸運にも万人の自由を選択した。

 

 なおトクヴィルのペンギン英訳版は非常に読みやすい英語です。

舊新約聖書―文語訳クロス装ハードカバー JL63

舊新約聖書―文語訳クロス装ハードカバー JL63

 
Democracy in America and Two Essays on America (Penguin Classics)

Democracy in America and Two Essays on America (Penguin Classics)

 

 

 

 

 ◆3兆ドルのイラク戦争

 スティグリッツの"The Three Trillion Dollar War"を読みました。

 イラク戦争開始時、ブッシュ政権と軍は、侵略が低コスト・短期間で終わると主張していましたがそれは間違いであることがわかりました。

 

 ――もっとも残念なのは、ほぼすべての不安要素が、戦争前にすでに学者や専門家によって予測されていたということである。

 

 本書では、国防総省・退役軍人省、その他省庁や政権のひどい有様が指摘されています。

 

 ――これまでの軍事費、将来の軍事費、退役軍人への支出、隠れた軍事支出、返済利子を総合すると、イラク・アフガン戦争全体で、少なくても2.3兆ドル、現実的に見積もって3.4兆ドルとなる。ここに経済への影響は含まれていない。

 

 ――戦死者に対しては50万ドル(弔慰金10万と遺族保険40万)が支払われる。しかし、一般社会において労災により死亡・後遺症となった場合ははるかに高額が支払われる。

 

 ――負傷し除隊した軍人は、国防総省と退役軍人省とのはざまに立たされる。2つの省庁は連携が取れておらず、現役から退役軍人への移行に長期間を要する。その間、傷病兵は無職・無収入の状態であり、無数の書類手続きに悩まされる。

 ――榴弾砲で重度の障害者になったある兵隊は数年間1銭ももらえず、著者がニューズウィークにこの事案を話してから支給が始まった。

 

 ――アメリカは石油のために侵略した、という説は多くみられるが、この目的に関してアメリカはみじめに失敗している。戦争の真の受益者はエクソンモービルのような一部の石油会社だけである。

 

 アメリカ政治は一般的に議会が強い力を持つとされますが、それでもイラク戦争からは、行政府に対するチェック機能が弱かったという教訓が導かれています。

 この教訓は、権力集中指向の議院内閣制を有する日本にとっても参考になります。

 

 ――建国の父たちは行政権力の暴走をよく認識しており、政府の基本を抑制と均衡(Check and balance)に置いた。
 ――ブッシュ政権共和党は議会の多数を占めており、政権はフセインに関する脅威情報をコントロールすることができた。議会は、この情報に反論する術をもたなかった。また国連は、自衛権の行使と安保理の承認時に限り武力行使を認めているが、合衆国は国連の承認を得ずにイラクを侵略した。 

 

 ――市民には自分たちの払っている税金がどう使われているかを知る権利がある。また政府が何をしているか知る権利がある。

 

 税金の使われ方に疑問を持たずにただお上を盲信するのは詐欺にひっかかるのと変わらないのではと思う。昔、兵隊風の公務員として働いていたとき、貴重な予算が棒振り運動や、ゾンビ日本企業のポンコツ装置、OBがひしめく謎企業につぎ込まれていくのを目の当たりにして、わたしの国に対する考え方は180度変わった。

The Three Trillion Dollar War: The True Cost of the Iraq Conflict (English Edition)

The Three Trillion Dollar War: The True Cost of the Iraq Conflict (English Edition)

 

 

 

 ◆『On Tyranny』Snyder, Timothy

 日本語では『暴政』という題で出版されている。中身は簡潔だが非常におもしろい。

 著者はアメリカの歴史学者で、ウクライナ/ロシアの文献を用いた独ソ戦ホロコーストの研究、『ブラッド・ランド』、『ブラック・アース』などが有名である。

 本書はトランプ大統領およびロシアのサイバー・情報戦に対する批判を通して、僭主(タイラント)・圧政の出現を阻止するために何が大切かを説明する。

 わたしはこの本を読んで具体的な行動に移そうと考えた。細部は以下のとおり。

・調査報道または見極めた地方新聞やジャーナリストにお金を出す

・非政府組織の活動:ブラック労働、役人ウォッチ、学校問題

 

 特定の人にしか使われなくなった、冷戦脳的な『民間防衛』よりも、こちらを読んだ方が得るところは多かった。

 

 ――自由を奪おうとする勢力に対し常に警戒していなければならない。

 ――医者、実業家、役人、法曹たちが職業倫理を持ちナチスの非人道命令に抵抗していれば、歴史は今と違っていただろう。各職業が自分たちをひとつの集団として認識し、倫理と規則を遵守することを心がければ、それは大きな力になる。

 ――軍、警察として銃を持ち勤務する場合は、過去多くの悪が行われたことを自覚し、間違ったことにはノーといえるよう覚悟しなければならない。

 ――誰かが違うことを言わなければならない。そうすれば人はついてくる。

 ――時間と費用のかかる調査報道を重視せよ。情報を得ることは、水道修理や車の修理と同じく金のかかることである。無料で得られる情報に基づいて政治的判断を行うのは危険である。ジャーナリストとしての職業倫理を持った人間を探すこと。

 ――権力はあなたが部屋の中で、モニターの前で大人しくしていることを望んでいる。

 

 ――ロシア、東欧出身の専門家たちは、トランプの大統領選をより現実的に見ていた。
 ――アメリカ人は、フェイクニュースとサイバー戦に対して無防備すぎた。ウクライナはロシアのフェイクニュース攻撃に対し迅速に対応したが、アメリカは逆に、ロシアの欺瞞情報を自ら拡散した(ヒラリーのメール問題)。

 

 ――自由と引き換えに安全を提供すると提案する支配者はそのどちらもあなたから奪おうとしている。

 ――僭主はテロや災害を活用する術をもっている。かれらは機会をとらえて権力の集中を図り、勢力均衡の破壊や、野党の解体、自由の制限などをたくらむ。

 ――僭主は、一瞬のショックを利用して永遠の服従を手に入れようとする。

On Tyranny: Twenty Lessons from the Twentieth Century

On Tyranny: Twenty Lessons from the Twentieth Century

 

 

 

 ◆本とインターネット、情報戦

 私、無職戦闘員は、偶然ITおよびサイバー関連の労働でお金をもらっていたことがあり、インターネットにも毎日接しています。

 しかし、インターネットで得る情報と、本で得る情報にははっきりと区別をつけています。

 わたしにとっては、本から得る情報は非常に大切です。Amazonでお金を出して購入し、読んだら中身をメモしてネットオークションで売っています(かさばるので)。

 このブログは個人的なメモを公開したものですが、思い出すときに自分で検索もでき便利です。

 自分の興味ある分野である軍事史や歴史に関して、まだネットに上げられていない箇所が本には無数に存在します。

 インターネット上の情報に接するときは、本以上に警戒心を持っています。無職の1日は平坦ですが、そのなかでも、すき間を利用して5chやYahooニュースなどを読んでいます(読むたびに不快になるので精神衛生上よくないですが)。

 一方で、Unity(ゲーム開発ソフト)やC#の勉強をするときはインターネットが一番役に立っています。

 

 上述のスナイダー本では、ロシアの情報戦・情報攻撃に対処すべきとの指摘がありました。わたしも、ネット上の工作活動に関して前から興味を持っていたので、次の本を読もうと思いました。

Russian Roulette: The Inside Story of Putin's War on America and the Election of Donald Trump

Russian Roulette: The Inside Story of Putin's War on America and the Election of Donald Trump

 

 

 

 ◆カウアイ島

 少し前にカウアイ島に旅行に行きました。渓谷や海岸がおすすめです。

 カウアイ島にも多くの日系移民がやってきて、今でもその名残が見られます(店舗名など)。

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