うちゅうてきなとりで

the cosmological fort 無職戦闘員による本メモ、創作、外国語の勉強その他

『トルコのもう一つの顔』小島剛一

 トルコの少数民族とその言語を調査する日本人の紀行報告。

 トルコ共和国は成立以来一貫して少数民族や少数言語を抑圧し、同化政策を進めてきた。

 例えばクルド人は「山岳トルコ人」とされ、またクルド語はトルコ語の方言であると定められ、公の場でクルド人と名乗ったり、クルド人の存在を認めることは逮捕と投獄につながった。

 本書は70年代から80年代にかけての、トルコの同化政策や、少数民族、少数言語話者らの生活を紹介する。

 著者はヒッチハイクや野宿でフランスからトルコまでを移動し、またトルコ内の各地で住民と交流する。旅人に親切な住民とのやりとりが印象的である。一方、秘密警察や憲兵たちの監視、弾圧、異民族への横暴についても詳しく書かれている。

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・トルコにはクルド人、ザザ人、チェルケズ人、アラブ人をはじめ多数の少数民族が存在する。しかし、政府に公認されているのは一部である。イスタンブールギリシア人、アルメニア人、チェルケズ人は、歴史的経緯によりその存在を許されている。

少数民族と少数言語が必ずしも一致するとは限らず、既に言語を失った人びともいる。また、少数民族であることを主張すると私服刑事らに見つかり逮捕されるため、素性を隠す民族もいる。長い間、潜伏することで、自分たちの本来の言葉と民族を忘れた人びともいる(隠れ民族と忘れ民族)。

トルコ人クルド人の多数はスンナ派である。アレヴィー教徒はイスラム教の一種だが、あまりに習慣が異なるため、深刻な差別と迫害を受けている。

クルディスタンの独立は難しいだろう。クルド語も東西でまったく意味が通じず、隣国のクルド人とも意思疎通が難しいからである。

・当時のトルコでは、少数民族・少数言語話者すなわち共産主義者であるとのレッテルが貼られていた。

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 著者は調査旅行の途中からトルコ政府・外務省に目をつけられ、監視随行員とともに旅行することになる。

 トルコ政府は「トルコは一民族一言語」という立場であり、著者の調査や、目の前の少数民族、言語を否定した。最終的に著者は国外追放となった。

 

トルコのもう一つの顔 (中公新書)

トルコのもう一つの顔 (中公新書)