うちゅうてきなとりで

the cosmological fort 無職戦闘員による本メモ、創作、外国語の勉強その他

『Putin's Russia』Anna Politkovskaya その2

 官僚組織の一員である判事たちは、ソ連崩壊によって服従する対象を失った。

 かれらが次に選んだ主人はマフィアや新興財閥だった。

 買収された判事が、給料20年分に相当するアメリカ車を手に入れる一方、賄賂や口利きを拒否した判事は免職され、または悪党に闇討ちされた。

 プーチンや閣僚たちはこうした腐敗を黙認し、またマフィアを産業界の要人として称え、その庇護者である判事を要職に任命している。

 

 5 地方の話

 地方の貧困や汚職はひどく、モスクワとは全く別の国である。特に、献身的な退役軍人や現役軍人が、国家に見捨てられている。

 本章に出ているカムチャッカ半島の海軍士官たちのエピソードは強烈である。かれらは原子力潜水艦の指揮官だが、生活は悲惨である。

・給料が低く、食材が足りないときは近所で互いに分け合う。また、基地自体も食材寄付に頼っている。その給料も半年近く未払いである。

・車を買う金がないため、何十キロも歩いて通勤する。

・子供のための教育施設が皆無である。

・若い軍人たちは、自分たちを見捨てた国家に見切りをつけ、横領と賄賂で金を稼いでいる。

 

 6 ノルト・オスト

 2002年10月のモスクワ劇場占拠事件について。

・公式発表では人質は射殺されていないが、明らかにFSBの特殊部隊に殺された少年がいた。かれは、犠牲者にもカウントされなかった。

・FSBは非致死性のガスを使用したが、適切な病院を準備せず、中毒になった人質129名を死亡させた。政府は情報を統制したため、被害者の親族たちは病院に入れなかった。

チェチェン人の名字を持つ人質は、差別待遇を受け、治療されず、放置されて死んだ可能性が高い。

・遺族は、人質を過失致死させたとして政府を提訴した。「電話判事」とは、政府からの電話指令を受けて従う判事をいう。この裁判を担当した判事は原告団らに悪態をつき、訴えを棄却した。

・人質のうちチェチェン系の苗字の者は、病院に運ばれた後テロリストの疑いを受けて訊問された。

 

 プーチンは国際テロリズムとの戦争を掲げているが、チェチェンでのジェノサイド行為がこうした暴力を生み続けていることを自覚しているだろうか。

 人びとは人質の死や遺族の怒りには無頓着だった。国民は、他人の死に関心がない。

 モスクワでのテロ事件以降、チェチェン人、コーカサス系人種への差別はさらに悪化した。著者によれば、かれらに希望はまったく見えないという。

 チェチェン人はでっちあげ逮捕や拘禁の被害にあい、また職を追われた。このような人種攻撃が、人びとを独立運動や暴力に追いやっている。

 

 7 アカーキイ・アカーキエヴィチ

 タイトルは、ゴーゴリ「外套」の主人公である小役人。

 特に2期目の大統領選に関連して、プーチンが民主主義を拒否する動きを見せている点について。

 プーチンは決して論争や議論をしない。かれにとって野党は存在しない。野党、反対派とは追放され粛清されるべきものである。

 大統領はテレビに頻繁に登場するが、絶対に議論はしない。軍隊と同じく、最高指揮官として訓示を述べるだけである。

 

 ――わたしはプーチンを嫌悪する、なぜならかれは人びとを嫌悪しているからである。かれはわたしたちを軽蔑している。かれはわたしたちを、目的のための手段、個人的権力の達成と保持のための手段としか見ていない。したがって、かれはわたしたちを思い通りに動かし、破壊できると思っている。かれはたまたま、皇帝かつ神の地位に登ることができた。一方で、わたしたちは何者でもない。

 

 著者は、プーチンを、典型的なソヴィエトのチェキストと非難する。

 

 8 ベスラン事件

 この忌まわしい事件により、チェチェン紛争は激化し、ジェノサイドと人種差別がますます激しくなるだろう。人びとは「打倒アルカイダ」を唱えている。

 

Putin's Russia: Life in a Failing Democracy

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