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ブイナクスク、モスクワ、ヴォルゴドンスクでの爆弾テロについて。様々な状況証拠や、報道から、著者はFSBが自作自演によって引き起こしたと考える。
・事前に計画や動きが漏れており、また直後に亡命したFSB士官からの暴露があった。
・使用されたヘキソゲンは、軍または秘密機関の、高官による横領以外はあり得ない。また、ヘキソゲンがほぼ軍しか取り扱っていないとわかるとFSBは異なる爆薬が使われたと主張した。
・建物の地下に入り大規模な爆薬と時限発火装置を仕掛けることができるのは、KGBや軍の関係者のみである。
・ダゲスタン侵攻のときのチェチェン指揮官のバサエフとFSB幹部がパリで面会していると伝聞があった。
・チェチェン独立派のアミル・ハッターブは、連続テロの報せを受けたとき驚愕していたという。
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爆弾テロの直後、プーチンは大統領となり、チェチェン侵攻を継続させた。世論はチェチェン人排斥、チェチェン制圧に傾いた。
人びとは、腐敗する国家の問題を、KGBならすぐに解決してくれると期待した。こうしてプーチン政権が誕生した。
リャザン事件は隠ぺいされ、FSBを詰問したテレビ局NTVの主要幹部は国外追放された。
FSBのテロ訓練説は外国人ジャーナリストやテレビ局からは疑惑の目を向けられており、リャザンの住民もテロは秘密機関によるものだと確信した。
検察庁は、一般人を巻き込むFSBの「訓練」を適法と判断したが、連邦憲法、関係法規に照らせば「訓練」が違法であることは明らかである。
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・FSBはフリーの特殊部隊を雇っている。かれらは元軍人や元公安職員、または犯罪者である。
・また、FSBは殺し屋を利用する。殺し屋はマフィアであることが多い。
・実業家やジャーナリスト、外国人の誘拐、チェチェンでの誘拐には、FSBや政府高官が関与している。
・チェチェンはFSBやGRUの訓練場となっている。かれらはチェチェン人を対象に誘拐ビジネスを行い、利益を得るとともに殺人や暴力の技能を向上させている。
アンナ・ポリトコフスカヤの本にあったとおり、現場のロシア軍将校が、チェチェン独立派に対して、部下の兵隊を奴隷として売却し、脱走兵として処理するという事例が発生した。
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FSBを改革し粛正しようとする者もいたが失敗した。エリツィンに直訴の手紙を書いたFSB中佐はプーチンによって逮捕され、本書刊行時点でも牢獄にいた。
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2000年の大統領選……KGB出身のプーチン、「90000人の実業家を牢屋に送り込む」と公言するプリマコフ、化石のような共産党員ジュガーノフの争いについて。
プーチンはロシア国民の願望をかなえたのだろうか。ただし、チェチェン人は虐殺され、国家は秘密機関に掌握されている。
――かれ(プーチン)はソ連百科事典における「僭主Tyrant」の定義そのものである。すなわち、「恣意的な決定と暴力を権力の基盤とする支配者」である。
Blowing up Russia: The Secret Plot to Bring Back KGB Power
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