うちゅうてきなとりで

the cosmological fort 無職戦闘員による本メモ、創作、外国語の勉強その他

『白熱講義! 日本国憲法改正』小林節

 憲法の役割を改めて説明し、特に9条、二院制、人権条項について部分的な改正の必要性を主張する本。

 憲法に対する評価や改正方針は論者によって様々である。著者は憲法調査会集団的自衛権解釈を否定した学者の一人であり、テレビ等への出演が多い。

 近年、話題となっている自民党憲法改正案については問題ありとして否定する。

 

 ◆感想

 憲法に対する考え方には、国家と政府に対する根本的な認識が影響する。わたしは、これら組織は放っておけば必ず権限を乱用し、ごまかし、嘘をついて私腹を肥やすと思う。

 昔からそのような性悪説に立っていたわけではなかったが、その後、実際に末端での仕事を経験して、考えを改めた。

・平気で嘘をつくので、国民は嘘に基づいて情勢判断を行う。

・人の金だから、無駄遣いだろうと気にしない。

・税金の使い方が、一部企業向けの補助金となっている。それらの企業は公共事業……税金に寄生して生き延びている。企業にはたくさんの公務員OBがいて、天の声が働いて入札を歪める。

 犠牲になるのは何かというと、意味のないシステムなり道具なりをあてがわれ、そのために金を上納する国民である。

 

 こういう輩たちから、あるべき正しい国民の姿などについて指導されるというのは不幸である。

 

 ◆感想その2

 本書だけでなく、いくつかの憲法関連本を読んでいて、自分の考えを抽出した。

・改正する行為そのものは、正しい手続きに則っていれば問題ではない。

・曖昧な箇所を解釈で左右できること、法と現実のギャップがなし崩しになっていること(わたしは、自〇隊や統治行為論がそれにあたると思う)は、法そのものに対する意識を低下させるという点で、もっとも有害ではないか。

・平和主義を掲げているが、イラク戦争を今なお全力肯定している数少ない国である(英米は政府・軍ともに失敗例として研究・検討を行っている)。

・いらないもの……国民を教化する文言、人権を国が保障する概念

・武力の現実……武装はしているが、その運用は親会社に隷属する。武装そのものも非効率的で無駄が多く癒着まみれである。

 

 1

 憲法は国家をコントロールするためにある。現実は、政治家と官僚は権力を利用し資産を蓄える。国民は憲法によって政府の動きを監視しなければならない。

 現在の憲法改正の論点は次のとおり。

・戦争の放棄

 自衛戦争自衛軍について。

天皇

 天皇国家元首と定めるかどうか。

・新しい人権

 環境権やプライバシー等。

・権利と義務の関係

 現行憲法のせいで日本人が利己的になったという論調について、著者は否定する。

 権利と義務は、別のものである。例えば、お金の貸し借りは、債務者と債権者とで別人である。

 ――したがって、「権利を得るためには、義務の代償を払え」という主張は本質的に筋違いである。

 国民は権利の代価として義務が伴っているわけではない。

二院制

 時間の無駄ではないか。

・首相公選制

 実質大統領制であり、元首としての天皇と重複する。

憲法裁判所

 日本の裁判所は官僚制であり、法制局や検察庁と一体化しているため、「基本的に、現状肯定的であって守りの姿勢である」。

 憲法は最高法規であるが強制力がないため、権力者が開き直ったら対処できない。そうした権力者を倒すには、選挙か武力かしかない。

・非常事態

 戦争及び天災時の独裁体制について。

・改正手続き

 実際は、ハードルはアメリカよりも緩い。

 

 2

 憲法の機能について。

 六法が国家の権威により国民自らを縛るものであるのに対し、憲法は主権者・国民が、権力者すなわち政府と公務員を管理するためのものである。

 立憲主義とは、憲法に基づいて国民が権力に国を統治させることをいう。

 憲法は本来、国民自らが定めるものであって、天や米軍から授けられた「不磨の大典」ではない。

 国民が憲法を理解していなければ、役人や政治家はやりたい放題ができてしまう。

 

 3

 憲法9条において戦力を放棄しているため、自衛隊は「自衛のための最小限度の力」と解釈されており、また「専守防衛」「海外派兵の禁止」の制約を課している。

 もし、同盟国と集団的自衛権を発動させたいなら憲法改正が必要だろう。

 著者は、自衛戦力としての自衛隊の位置付けを憲法に明記すべきだと主張する。また、海外派兵についても、国連決議と国会の事前承認を要すると書くべきだと考える。

 

 ――何度も繰り返すが、憲法は国家権力の行動を縛る規範である。「できる」「できない」の解釈が明快でなければ、権力者はそこをごまかしてすり抜けてしまう。

 

 4

 憲法の中で国民に愛国心の義務を課すのは、憲法の役割を勘違いしている証拠である。

 

 ――結果、世襲議員は苦労を知らずに権力の座に就くことができるのだ。子供のころから立派な家に住み、平然と黒塗りの車で送り迎えしてもらい、周囲も当然のようにちやほやする。そんな世襲議員にいい政治ができるはずはない。

 ――彼らの思考はこうだ。

 ――「親殺し、子殺しといった悲惨な事件が続く世の中になった。社会全体のタガが緩んでいるのが原因だ。社会の最小単位である家庭を大事にする、最大単位の国に対して愛国心を持つ、といったことを国民に強要すればこれらは解決できるはずだ。それが自分たちの仕事だ!」

 

 憲法に書かれている国民の義務は勤労、納税、教育だけである。また、権利全般を濫用しない義務、公共の福祉を害さない義務も前提として存在する。

 

 5

 天皇は既に国家元首であり、憲法に元首と明記することに問題はないと著者は書く。

 道州制は具体策が見えてこないため非現実的である。

 

 6

 13条は人間の尊厳と平等を尊重する義務を課す。

 官僚の天下りや不正、北朝鮮工作員も、全て憲法に違反しているはずである。

 

 ――国防問題をなんでもかんでも9条のせいにしてはいけない。ただ、日本の政治家に、国民の生命と財産を守る強い意志がないだけである。

 

 7

 立憲主義の理解に欠けた、つまり憲法が何かについての理解に欠けた自民憲法案について、問題個所を抽出する:

 

・「和を尊び、家族や社会全体が互いに助け合って国家を形成する」

・「国旗及び国歌」

 合意が成立しておらず、国民が権力者に課すという本来の意義に反する。

国防軍の国際協力活動発動条件が不明確である。

・「思想及び良心の自由は、保障する」

 これらは保障されるものではなく不可侵のものである。

・「表現の自由

 公益及び公共の秩序を害することを目的とした活動とは、どのような活動か?

・「家族は、社会の自然かつ基礎的な単位として、尊重される云々」

 道徳的表現を憲法に入れるのは不適切。

・「財産権は、保障する」

 「侵してはならない」が、国が保障してあげるものになったのはなぜか?

・職務上必要ならば、議院への出席及び答弁をすっぽかせる。

 議会制民主主義の空洞化につながるのではないか。

・緊急事態規定は、著者は各国と足並みを揃えるもので問題なしとしているが、わたしにはどうしても抵抗がある。この点について別途調べなければならない。

・改正条件の緩和は、改悪である。やましいから変えたいと思われても仕方がない。

・「全て国民は、この憲法を尊重しなければならない」

 「公務員の倫理規定」である憲法の趣旨からはずれている。

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