うちゅうてきなとりで

The Cosmological Fort 無職戦闘員による本メモ、創作、外国語の勉強その他

『ペインティッド・バード』コシンスキ

 東欧に疎開させられた子供が、迫害を受けながら村から村へ漂流する本。

 パルチザンとドイツ軍、赤軍との戦い、湿地のある風景から、舞台はポーランドかどこかではないかと想定される。

 野蛮で残酷な村人に、ジプシーまたはユダヤ人として追い立てられ、ドイツ軍にも追われる展開は、映画「come and see」を思い出した。

 少年がジプシーなのか、ユダヤ人なのかが直接言及されることはない。

 少年に襲い掛かるのはドイツ軍だけではない。行く先々の農村で、子供たちや村人、農夫、牧人たちが襲撃する。かれらは孤児を見つけては凌辱し殺害する。村人同士も抗争で殺しあう。

 本書の主要な出来事……カルムイク人らの襲撃、強姦や放火、殺人等。とある村での、近親相姦、獣姦を行う兄弟。村人によるリンチ。

 赤軍に引き取られた少年は、そこで社会主義についての教育を受ける。その後、両親と再会し引き取られるが、反社会的な性向はなかなか矯正されなかった。

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 ペインティッド・バードの由来……ある村に鳥を育てている男がいた。かれは1匹の鳥に赤、青、緑等のペンキを塗り解放する。ペンキを塗られた鳥は、他の鳥からつつかれ、やがて墜落して死んだ。

 作中の武器……

 流れ星とは、紐で吊るした空き缶に燃料や干し草をつめるもの。照明や、火による攻撃に用いられる。

 スケート……氷と雪の地帯を歩くため、ブーツに取り付けたもの。本書の中で、村の子供たちに襲われた少年は足を振りまわしスケートの刃で子供たちの首や顔を切り裂く。

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 ――ぼくは彼から、この世の秩序は神とはまったく関係がないこと、神はこの世とはなんの関係もないことを学んだ。理由は簡単なことだった。神は存在しないのだ。

 

 自分の境遇について、様々な独白を行っている。そうした月並みな所見よりは、野蛮な村人やドイツ兵による見世物のほうが面白い。

 この話の特徴として、次の点があげられる。

・残虐行為の実施者はドイツ軍、農民、赤軍パルチザン赤軍

・主人公の身柄を引き取った赤軍兵士たちは道徳的に描かれている。

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 残虐な風景を旅する少年という筋書きは、マッカーシー『Blood Meridien』やアゴタ・クリストフ泥棒日記』にも通じるものがある。

 

ペインティッド・バード (東欧の想像力)

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