3 代替エネルギー
太陽、水力、風力、原子力等、それぞれに強力な信奉者がついておりまともな議論は容易ではない。
太陽エネルギーは急速に発展しているが、かぎとなるのは導入コストや維持費、効率である。運用に人件費がかかることから、途上国で発達する可能性を秘めており、温暖化対策にも有効である。ただし、根本的にエネルギーの生産量は低い。
風力発電の問題……エネルギー生産量が少ない、タービンがうるさくて不恰好、風のある場所が都市部から離れており、送電網の敷設に土地の取得など費用がかかる。
原子力発電に関する基本的な事項は次の通り。
・原子炉で使われる低濃縮ウランは、核兵器用の高濃縮ウランとは異なるため、絶対に爆発しない。
・原発の建設コストは高いが、維持費は最も安い。
・中規模原発は、かつての大惨事を起こすような事故の危険性を解消した。
・燃料用ウラニウムの枯渇は今後9000年分ほどある。
・核廃棄物貯蔵は技術的には難しくないが、公共認識と政治的駆け引きが重要である。
・原発は世界各国で開発が進んでいる。
核廃棄物貯蔵は技術的には問題ないが、イメージが悪く自治体に拒否される。
核融合技術は太陽の発熱と同じ原理を目指すものだが、実用化はまだ遠い。代表的な制御法として、トカマク炉、米国国立点火施設、ビーム核融合、ミューオン核融合、常温核融合があげられる。
誤った研究、間違った結果に注意しなければならない。
――事実、自己疑念は科学的方法になくてはならないものです。科学者も、思い違いをする才能にかけてはほかのだれにもひけはとりません。
――エネルギー分野の夢のような話は、信頼性を失ったあとでも、根強く残るということです。本当の科学的発見(Ⅹ線や高温超伝導など)は、通常すみやかに立証されます。実際の話、科学界は発見に対しては非常にオープンですが、それを立証するためには高い基準が要求されます。
バイオ燃料には温暖化抑制効果はなく、その機能は安全保障である。よって、競争相手はシェールガス、合成燃料、シェールオイルである。
その他、地熱、潮汐、波力を利用した発電については、あまり期待ができない。
クリーンコールは、CO2排出を削減した石炭発電である。ほかの代替エネルギーよりも実現性があるため、途上国に支援するならクリーンコールの利用か、天然ガスへの転換を促したほうがいいと著者は考える。
4 エネルギーとは何か
エネルギーとは仕事をする能力をいう。仕事とは、力×距離である。力とは質力×加速度である。
エネルギーは質量に変換することができる。実際には、2つは同じものである。また、エネルギーは時間とかかわりがある。
5 未来の指導者へのアドバイス
将来のエネルギー問題において重要な技術は……
・エネルギー生産性
・ハイブリッド車や他の燃費向上自動車
・合成燃料
急発展する可能性のある技術
・風力発電
・原子力
・電池
・燃料電池
耳触りのよいスローガン、流行りもの、過度の楽観主義や懐疑主義によって判断をゆがめられてはいけない、と著者は警告する。
◆メモ
原子力発電の効果とリスクについては学者ごとに見解が異なるため様々な考えを比較する必要がある。