エネルギーに関する正確な知識を得ることにより、正しいエネルギー政策を導くことが重要である。
エネルギーは軍事経済の両面において国家の安全保障の中核に位置する。
また、エネルギーに関する定説や報道は、しばしば実態とかけはなれていることが多いため、適切な意思決定を下すためには、何よりも正確な情報を得なければならない。
日本の原子力災害についても言及されている。
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1 エネルギー災害
福島原発のメルトダウンによる放射能被害は、計測の難しい微小なレベルに留まるだろう。コロラド州デンバーは元々放射線量の多い土地だが、住民は合衆国の平均よりも健康である。
原発政策で必要なのは過剰な避難方針を修正し、より危険な災害である地震や津波の対策を強化することである。
事故報道において、事実と誇張を見分けるのは困難である。
メキシコ湾原油流出事故も、当初報道された大惨事には至らなかった。
地球温暖化について、著者は次の3点を主張する。温暖化の証拠の大部分は誇張か歪曲である。温暖化は事実であり、真剣に取り組まなければならない問題である。温暖化理論が正しい場合、現状のすべての政策は役に立たない。
著者の測定の結果、人間の活動と地球温暖化の間には関連があると判明した。
CO2排出量は、現在は中国が世界1位である。先進国が排ガス規制をしても、中国が規制をしない限り全体としては全く意味をなさない。電気自動車を先進国が導入しても、その電気をつくるために途上国が石炭発電を使用した場合、逆にコストは高くなることがある。
温暖化論争は極論の言い争いになっており、合衆国民の問題そのものに対する関心が低下している。
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2 エネルギー景観
エネルギーと豊かさは密接な関係にある。
エネルギーは見えないものであり、石炭や石油、天然ガスはエネルギーを運搬する。エネルギーの価格は、その補給経路に決定的に左右される。
乾電池の価格は、壁コンセントの1万倍である。なぜ自動車をガソリンから石炭に変えないかといえば、自動車用エネルギーインフラは石油を前提につくられてきたため、莫大なコストなしには石炭等に転換することができないからである。
エネルギーを簡単に貯蔵することはできない。
政策の上では、気候変動と安全保障の両面を考慮する必要がある。
先進国で新たに天然ガスや太陽電池を導入するコストは大きいが、途上国はまだ実現性がある。
頁岩内に含まれるガス、つまりシェールガスが利用可能になったことは、アメリカのエネルギー安全保障に大きな影響を与えるだろう。
アメリカで産出される天然ガスのために、若干の転換も行われているが、主な用途は輸出である。これを受けて、産油国は石油を低価格に抑え、顧客たちがインフラを開発するのを抑制しようとしている。
海底のメタンハイドレートはシェールガス以上の埋蔵量を持つが、現在のところ実際に採掘し実用化する動きは見られない。
現在不足しているのは、液体輸送燃料、つまり石油である。しかし、将来、石炭等を液体化させる合成燃料や、最近採掘されたシェールオイルが、石油にとって代わるかもしれない。
最も潜在能力のあるエネルギーは、エネルギー利用の効率化である。断熱材や、効率のいい家電製品、照明の利用、ハイブリッド車、スマートメーターや、電力会社への投資システム等が、電力の容量を大幅に改善してくれる。
一方、再生紙、公共交通機関等には、世間で信じられているほどの効果はない。
[つづく]