うちゅうてきなとりで

the cosmological fort 無職戦闘員による本メモ、創作、外国語の勉強その他

善き人

 最近は、ホロコーストボスニア内戦の本、ホップカークの本を読んでいた。

 歴史が、殺人と拷問の博物館のように見えることがある。この世には、何1つ当たり前のものはないと感じる。

 

 ◆時計

 『Into that Darkness』の主題である、収容所長フランツ・シュタングルFranz Stanglは、元警察官、中でも優秀な刑事捜査課Criminal Investigation Department出身であり、非常に穏和で、人格のある人物だった。

 かれは収容所の責任者として、絶滅収容所(はじめソビボルSobibol、のちトレブリンカTreblinka)の円滑な運営を維持した。

 実際の現場……ガス室や、火葬場には、ほとんど近寄らなかった。

 かれは、所長としての職責を果たすかたわら、小さな善行を積み重ねている。警察官として秩序を維持すること、家族を大切にすること、人には親切にすること、など。

 

 ――あるとき、移送されてきたユダヤ人が、「リトアニア人警備兵がわたしの時計を盗んだ」と訴えた。かれ(シュタングル)はリトアニア人兵たちを呼び、時計を盗んだものは名乗り出ろ、といった。しかし、盗んだのがリトアニア人将校かもしれないので、兵の前で犯人捜しをするのはよくない、とも考えた。かれはリトアニア人たちを一列に並べ、所持品検査を行った。結局時計は見つからなかった。著者は、訴え出たユダヤ人はどうなったのか、と尋ねた。シュタングルは言葉を濁したまま回答しなかった。

 ※ 絶滅収容所に到着したユダヤ人は数時間以内にほぼ全員が殺害された。

Into That Darkness: An Examination of Conscience

Into That Darkness: An Examination of Conscience

 

 

 ◆中央アジアの武将たち

 ホップカーク『Setting the East Ablaze』は、ロシア革命とそれに続く内戦時代の、中央アジア情勢を描く本である。本書には、レーニンやスターリンの指令を受けたコミンテルンのスパイや、混沌に乗じて自分たちの王国建設を志す軍閥War lordたちが多数登場する。

 ほぼ精神異常に近い、猟奇的な将軍ウンゲルン=シュテルンベルクUngern=Sternbergの行状が興味深い。

 

 ――自らをチンギス・ハンの生まれ変わりと考え、仏僧をそばに付け、内戦が始まると、モンゴルで軍隊を編成し、自分の王国を立てようとした。
 ――かれは輪廻転生を信じていたので、ユダヤ人、障害者はすぐに殺害した。それがかれらの転生をうながし、善行につながると信じていた。

 ウルガUrga(ウランバートルの旧名)において、ウンゲルンの軍は虐殺と略奪を行った。かれらは、パン屋で働いていた少年を、ボリシェヴィキのスパイだとして、パン焼き釜で焼き殺した。

 

 ほか、エンヴェル・パシャEnver Pasha、馬仲英、イギリスの政治将校、情報将校に関するエピソードがある。

 ウンゲルン=シュテルンベルクと馬仲英に関しては、対ソ干渉の観点から、日本が支援を行っていたという記述もある。こちらも別の本で調べたい話題である。

Setting the East Ablaze: Lenin's Dream of an Empire in Asia (Not A Series) (English Edition)

Setting the East Ablaze: Lenin's Dream of an Empire in Asia (Not A Series) (English Edition)

 
馬仲英の逃亡 (中公文庫BIBLIO)

馬仲英の逃亡 (中公文庫BIBLIO)

 

 

 ◆ボスニア・ヘルツェゴビナ紛争の歴史から

 ――看守や民兵は、楽しみながら拷問を行った。かれらは、昔のいざこざ……金を貸してくれなかった、雇ってくれなかった、恋人をとられた、等の仕返しをするのだった。
 父親に、娘をレイプするよう命じる
 バイクと睾丸をひもで結び付けてひきちぎる
 囚人同士で睾丸をかみちぎるよう命じる
 囚人同士で死ぬまで格闘をさせる

 ――町の名士だった著者の父親は、口座を凍結された。かれのオフィスであるスポーツ会館は、ムスリムを拷問し、首を斬り落とす屠殺場となっていた。屍体はバスケットボールコートに積み上げられ、やがて冷凍トラックが回収に来た。