うちゅうてきなとりで

the cosmological fort 無職戦闘員による本メモ、創作、外国語の勉強その他

『Ordinary Men』Christopher R Browning その3

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 ポーランド・ルブリン地区のゲットーが解体され、ユダヤ人の大半がトレブリンカに移送されてからは、森や集落にひそむ「ユダヤ人狩り」が大隊の業務となった。かれらは再びユダヤ人個人と対面しての殺人行為をしなければならなかった。

 

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 1943年11月、ポルタヴァ収容所、マイダネク収容所でユダヤ人の大規模処刑が行われた。これは「収穫祭作戦」と呼ばれた。

 

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 ドイツ人とユダヤ人との関係ははっきりしており、ユダヤ人は絶滅されるべき敵だった。ドイツ人とポーランド人とは、支配民族と従属民族との関係だった。

 ドイツ人が横暴を振るい、ポーランド人を容易に処刑する風景が散見された。

 アインザッツグルッペンや予備警察大隊の活動の建前は、ポーランド人の保護である。ポーランド人の保護のために、ユダヤ人とレジスタンスを討伐するという名目で、絶滅作戦が行われた。

 ポーランド人がユダヤ人を売り、裏切ったという証言が、ドイツ人から度々聞かれる。しかし、これは一面的なものである。ドイツ人の警察部隊や親衛隊が接するポーランド人は、協力的な者か反セム主義的なものがほとんどだからである。

 一方、ユダヤ人側に立ったポーランド人は、ドイツ人の眼には映らないか、迫害されているはずである。

 戦後のユダヤ人犯罪捜査においては、「反セム主義」が殺人行為の要件だった。このため、警察官や親衛隊員の中でユダヤ人嫌いを公言するものはほとんどいなかった。

 

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 戦闘経験のほとんどない警察予備大隊が虐殺行為を実行できた原因、つまり「普通の人びと」が残虐な行為を行えた原因は何か、著者は検討している。

 人種差別、個人の異常性、状況、処罰されることへの恐れ、権威への従属、順応主義、イデオロギー的な洗脳……推測できる要因は様々である。

 予備警察大隊の人間たちは生来の残虐人間でも、強烈な反セム主義者でもなかった。

 かれらは組織に順応し、仲間を思いやる普通のドイツ人だった。

 ユダヤ人射殺を拒否すれば、仲間に不快な作業を押し付けることになる。拒否は、臆病者の行為、卑怯者の行為となる。自分だけ逃げることになる。

 こうした配慮が、かれらの心理に作用したのではないかと著者は考える。

 

 普通の人びとを含む人間はグレー・ゾーンに立っており、誰であれ、道徳から外れた行為を行う可能性がある。

 普通の人びとがユダヤ人を追い立て処刑した。また、残虐な看守も一瞬同情の念を起こす。士気の高い親衛隊将校も、射殺活動に対し、生理的な拒否感を示し、腹痛を訴えた。

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 後書きでは、ゴールドハーゲン氏との論争について触れられている。

 ゴールドハーゲンがナチスによる反セム主義イデオロギーが虐殺の原動力だったと主張するのに対し、著者は、反セム主義が権威主義、反民主主義とともにドイツに根付く伝統のひとつであり、普通の人びとの行動において、あくまで原因の1つに過ぎないと考えた。

 ――わたしたちは恐れている……わたしたちの世界では、戦争と人種主義がはびこり、政府の動員力と正統化力は強まり、官僚制と専門化によって個人の責任に対する観念は弱まり、監視組織が行動や倫理基準に対して抑圧を加えている。

 こうした状況では、普通の人びとはいとも簡単に、積極的な処刑人にさせられてしまうだろう。

 

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 メモ

絶滅収容所アウシュビッツ=ビルケナウ、ベウゼツ、ヘウムノ、ソビボル、トレブリンカ、マイダネク(ルブリン)

・親衛隊及び秩序警察のイデオロギー教育:眠くなるような講義が続いたという……人種的な世界観、ドイツ人の血の純粋性

・親衛隊はドイツ繁栄のために早期の結婚と子供の出産を奨励されていた。

・ユダヤ人処刑を拒否して銃殺刑になったというような記録は皆無である。

・殺人行為を細分化し、官僚制度に組み入れることで、個人の責任感が薄められた(分業化)。

・相手を非人間化することは、殺人をしやすくする大事な一歩である。面と向かった人間を処刑することは精神的な負荷が大きい。

 このため機械的な殺人手段が要求される。

 

Ordinary Men: Reserve Police Battalion 101 and the Final Solution in Poland

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