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『「仮想通貨」の衝撃』カストロノヴァ その1

 原題は「Wildcat currency」で、19世紀のアメリカにおける、民間の貨幣発行銀行を意味する。銀行は、ヤマネコしか住んでいないような僻地に設置され、金を担保に貨幣を製造し、容易に換金されないようにし流通を図った。

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 貨幣の問題とは、「取引をする人びとがいかに価値を交換するか」という問題である。

 電子取引に続く仮想通貨システムは、ビットコインや、マイレージポイント、SNSの通貨制度、ゲーム内通貨等、あらゆる場面で利用されている。

 本書は仮想通貨の歴史、現状、今後の影響等を論じる。そこでは、仮想通貨制度の利用についての提言もなされる。

 仮想通貨を論じるにあたって、貨幣の歴史も概説されるため、私のような無学にとっても理解しやすい本である。

 

 1

 仮想通貨は、かつてはゲーム内で見られたが、現在はSNSや買い物サイトなど、あらゆる分野に進出している。

 ――前世紀に石油を掘りあてようとしていた山師たちのように、通貨の構築者たちは、貨幣をつくって儲ける機会を先を争うように利用していたのだが、いまのところそれは政府の監督が一切ないまま行われているのである。

 仮想通貨の経済規模を計ることは容易ではない。現実通貨を用いたヴァーチャルアイテムの取引だけを測定しても、バーチャル内でのみ行われる取引を補足していないため、不正確となる。

 オンラインゲームやフェイスブックにおける通貨制度は、売買の対象が無形のゲームアイテムや配信アプリであり、通貨を企業が管理している点を除けば、現実の経済活動と何ら変わらない。

 

 2

 貨幣の価値は、どんな時代でも「人びとがどう考えるか」で決まる。貨幣の価値はバーチャルなものである。例えば、金や銀には実用性がないが、一定の価値を持つと考えられている。

 国家は貨幣の管理の問題に古来から取り組んできた。

 貨幣には、交換の役に立つ、価値を保存できる、かさばらない、高密度である、希少だ、分割しやすい、数えやすい、運びやすい、等の特徴がある。

 ある「もの」が貨幣であるか決めるのはその社会である。

 保有する預金を裏付けとして貸出を行うことにより、貨幣の量が増大する。貸し出しにより貨幣が創造され、貨幣の価値は金融機関の信用に依存するようになる。

 国家は法の力により貨幣を補償する。「不換紙幣fiat money」のfiatとは、命令、法令を意味する。

 ――現在、世界中のほぼすべての通貨は不換紙幣である。それらに価値があるのは、政府がそう言っているからなのだ。

 また、貨幣は現在デジタルのデータベースという形をとする。

 ところで、通貨は統一されるべきなのか、それとも統一されるべきではないのか。

 近代における貨幣経済成立時には、王侯の支配区域ごとに無数の通貨が乱立していた。やがて、取引上統一通貨のメリットが大きいと考えられるようになった。ユーロは、貨幣にまつわる混乱を減らす統一通貨として今利用されている。

 しかし、単一通貨は、経済管理者が地域に合わせて貨幣制度を調整することを不可能にする。ある地域のための金融政策が、他地域で害悪をもたらすことがある。現在のユーロの問題がまさにこれにあたる。

 アマゾンのポイントと現実の通貨との違いは、法的な位置づけや機能、慣習にある。ビットコインは、個人がつくった貨幣である。

 近年の仮想通貨システムの萌芽がオンラインゲームにあったというのは驚きである。

 

 3

 合衆国の法律は、仮想通貨について明確な定義を持っていない。

 特定の目的によってつくられる仮想通貨はおそらく合法であり、また、資産としても認められる。よって、仮想通貨による取引も課税対象となる。

 

[つづく]

 

「仮想通貨」の衝撃 (角川EPUB選書)

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