元米陸軍の日系アメリカ人が書いた本。この人物の著作は、ほかに自身の体験を元にした『地上最強のアメリカ陸軍特殊部隊』を読んだことがある。
グリーンベレーとしてベトナム戦争に従軍しており、価値観や経験は、当然、日本人とは異質である。
海外に派遣される際のアドバイスがかなり脈絡なく列挙されている。
米軍と完全に同じ権限を手に入れて、治安維持をおこなう前提なのが笑えるが、参考にはなる。
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・パスポートの管理
・医薬品の準備
・宗教、飲酒等に対する注意
・相手国の言葉を話す
・小銭、所持品等
1 サバイバル
・パトロールを重視する
・「ジェシカ・リンチ事件」から……地図の判読、大型車運転技術、銃の手入れ
・RPG対策……防御壁、ホテルは裏側の部屋をとる
・待ち伏せ対策……無人機偵察、地図偵察、訓練、慌てない
・IED(即席爆発装置)……自分の物以外は拾うな。通常、IEDの周囲には地雷や手りゅう弾が敷設され、スナイパーが待機していることがある。
・退路の確保
・スナイパー対策……味方スナイパーの活用、2人1組に注意、狙撃用ライフルを見分ける
・地雷を携帯し使え
・部隊の弱点を見つけ、訓練する。特に夜間訓練が重要である。
・三島流ROE「殺される前に殺す」
・軍用犬や動物の活用
・基地防衛……土嚢、鉄条網、歩哨の視界確保、地雷敷設、M2機関銃、Mk19擲弾銃、スナイパー重視
・同士討ちの回避のために……用語呼称の統制、通信方法確立、
・基地防衛チェックリスト……上層部隊との交信、周辺の大使館および領事館との連絡法、汚物処理、飲料水確保、現地人との交流記録、燃料や資材、アクセスリスト、装備点検、監視カメラ、銃火器整備と弾丸数チェック、メディア対応
2 戦闘術
・銃は命、1日1回以上手入れする
・国旗を大切に
・女性兵士の戦場投入には否定的である。
――単刀直入にいう、女性を人間として認めていない国へ、第1陣としての女性自衛隊員の投入は見合わせるべきである。女性自衛隊員を投入する時期は、国が騒擾から抜け出し、国民総出の国家再建がスタートしたときである。
・体力鍛錬は自発的に、いつどこでもやる。
・自殺者で多いのは外国語学習に行き詰った武官配属予定者、後方勤務者である。後者の原因は家庭問題、敵への恐怖等。
・いかなる状況でも退路(エスケープ・ルート)を考える。
・女性問題は紛争のもと
・自衛隊員を世界各地の紛争に派遣し、観戦させるべき
・戦争の中枢は普通科、機甲科、高射特科、情報科、輸送科である。
・夜間の戦闘に備える
・大量破壊兵器に対する個人レベルの対策
・米軍は戦死体の回収に命をかけている。
・特殊部隊は防衛のため不可欠である。
――多岐にわたる非正規戦の最もたるものは、ゲリラ戦、対ゲリラ戦、拉致被害者救出、情報収集、民事・心理作戦、対テロ戦争等に加えて、友好国へのアドバイス、外国軍との交換教練、自衛隊へのアドバイス、などが要求される。
・特殊部隊員の要件……体力、精神力、安定した家庭環境、射撃能力
・自衛隊の階級は、特に将官が諸外国とずれており、摩擦の原因となる。
・メートル、ヤード等の単位の統一
3 その他
・国際空港の警備レベルは低下しており、うかつな行動は警備員による過激な検査を招く。
・英語を話すことをテロリストに知られてはならない。
・帰国者の身元調査
・番犬は対テロ、犯罪対策に有効である。
テロリストの人質になったら、体力を温存し、あきらめない、「何でもしゃべる」。
・捕虜になったとき、人質になったときのための過酷な訓練が必要である。
・外国人配偶者による差別は無くすべきである。これは、著者自身が日系アメリカ人であることから来るのだろうが、意外である。米軍にはこのような規定はないという。
・兵器産業との癒着や、契約不正を撤廃すべき
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様々な政治的主張について、個人的に賛同できる点は少なかった。
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メモ:移民の国
米軍には移民二世や三世、両親が国際結婚の将官が多数存在する……コリン・パウエルやハリー・ハリス、エリック・シンセキ等。
親族や配偶者に外国人がいると、個別の取り扱いを受ける別の組織とは異なる点である。米軍に人種差別が皆無ということはないだろうが、少なくともキャリアの上で選別はしていないのではないか。
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