神道は日本独自の宗教だが、他宗教と混交し、また日本文化そのものと一体化しているため、定義が難しい。
本書は、組織制度や神社等の「見える神道」と、民間の習俗や思想の「見えない神道」という区分けを利用して、神道について説明する。
特に、現代において神道がどのような形態をとっているかに注目する。
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大和朝廷の成立以後、散在していた神社を管理する制度が徐々に整えられていった。
延喜式には神の格式等について規定があり、8世紀には官幣社(中央政府が管轄)と国幣社(国司が各地方ごと管理)の制度がつくられた。
室町以後の混乱を経て、江戸時代には吉田神道を中心に神社の統制が行われた。「諸社禰宜神主法度」はその1つである。
明治の政策は次のとおり。
・神仏分離令と大教宣布
・官幣と国幣、大中小の分類、別格官幣社(靖国神社等)の格式制定
神社神道および天皇崇拝は宗教ではなく国の精神的中心に据えられ、教派神道(理論、神学)も分離された。教派神道には金光教、天理教、大本教等があり、やがて生長の家、崇教真光等の新宗教に分派、発展した。
GHQの神道指令により神社は民営化され、現在は9割が神社本庁の傘下にある。
海外の神社には、植民地政策に連動した国策依存型、移民が建てた現地依存型がある。
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神職には代々神社を受け継いできた社家と、定められた大学や学校を卒業することで資格を得た公務員的なものとがある。
社僧……神社で働く僧で、地域との関わりで神職以上に力を持った。
神人(じにん)……警備等を任務とする僧兵に似た職であり、僧兵と同じく軍事力となった。
垂加神道、復古神道等の教派は、儒学や仏教の影響を強く受けていた。修験道は密教との関わりが深く、後に天台宗と真言宗の管轄となった。
神社を支える者は氏子、崇敬会、浮動層である。近年、地域の過疎化や高齢化により氏子は減少しており、自発的な崇敬会や、観光客が多数を占める浮動層からの収入が、神社の財源となっている。
新宗教においては特に女性の教祖が多い。
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神道には教えが無いとよくいわれるが、わかりにくいだけでないということはないらしい。
分野別にご利益をもたらす神や、御霊信仰について。
現代の神社神道が伝える主張は、主に天皇崇拝と愛国主義である。
その他の教え……
・罪は一時的なものであり禊や祓により消される。
・神道における人の死……黄泉の国、帰幽
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日本人の多くは無宗教を自覚しているが、多数の宗教的行事には参加する。こうした信仰の形を学問ではシンクレティズムと呼び、東アジアではよく見られる。
社会が変化するにつれて、神道がいかに伝えられていくかも変化する。
神道の要素はいまでも文化に残っている……神棚、日柄方位、厄年等。