◆西と東
最近読んだ本……『The Looming Tower』は、イスラーム過激派の祖となったサイード・クトゥブの時代から9.11にいたるまでの、テロ運動の歴史を題材にした本である。
The Looming Tower: Al Qaeda and the Road to 9/11
- 作者: Lawrence Wright
- 出版社/メーカー: Vintage
- 発売日: 2007/08/21
- メディア: ペーパーバック
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本書によれば、サイード・クトゥブは合衆国での生活をきっかけにイスラーム復興を志すようになったという。
エジプト出身のテロリスト、アイマン・ザワヒリは中流階級の家に生まれ、高等教育を受けた眼科医である。
※ エジプトは、戦後一貫して政権側がイスラーム過激派やイスラーム主義運動(ムスリム同胞団等)を弾圧してきた。本書では、情報機関による拷問を受けてから解放された運動家が、次々とテロ活動に身を投じる様子が描かれる。
冷戦終結後、ビンラディンの率いるアルカイダに集まってきたのは、ほとんどが先進国出身の人間か、先進国・欧米で高等教育を受けたムスリムだった。
祖国を離れる等により、根無し草になった人物、社会に帰属できない・溶け込めない若者を、過激派はいつでも探している。
アルカイダ構成員の発したファトワでは、すでに異教徒だけでなく同胞ムスリムも殺害可能として正当化されている。
――アルカイダのアブー・ハジェルは、サラフィー派の思想家イブン・タイミーヤを引用し、ファトワを発した。すなわち、敵を助けるもの、敵のそばにいるものは誰でも殺されて当然である。もし殺された者が良いムスリムなら、かれは天国に行き、悪ければ地獄に行くだろう。
セイモア・ハーシュは、『アメリカの秘密戦争』(Chain of command)において、アブグレイブ刑務所の捕虜虐待を告発した。
- 作者: セイモアハーシュ,Seymour M. Hersh,伏見威蕃
- 出版社/メーカー: 日本経済新聞社
- 発売日: 2004/11
- メディア: 単行本
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最新作、『The Killing of Osama BinLaden』では、オバマ政権の特質……「言葉はきれいだが、やっていることは前任者とそう変わらないか、より悪い」について検証する。
この本の欠点は、ほぼすべての情報源が匿名のため、実証しようがないことである。
・オバマは、おそらく自分でも信じていない理由のためにアフガン派兵を続けている。
・汚い手段……暗殺、拷問、無人機攻撃、人権侵害は、オバマ政権によって強化された。
・ブッシュから引き継いだテロとの戦いには、効果が見えず、未来もない。
・ビンラディン暗殺は、実際はパキスタン政府が軟禁していた当人を秘密の取引で米軍が殺害しただけである(去年、ニュースになった)。
・シリアにおいて化学兵器を使用したのは反政府側である。
・合衆国の支援するシリア反政府軍はほとんど無力である。
The Killing of Osama Bin Laden
- 作者: Seymour M Hersh
- 出版社/メーカー: Verso
- 発売日: 2016/04/01
- メディア: Kindle版
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大統領は先日広島を訪問し、核のない世界を訴えた。それは劇的な演説と光景だったが、合衆国と日本が実際にやっていることは、かれらが主張したことの逆である。大統領は広島において、きれいな場面を作り出すことには成功した。
◆空想
トルコ軍のクーデターや、インドネシア現代史、日本軍についての本を読んでいて、ふと、日本の今はどうなっているのかについて気になった。
現在、選挙に絡む容疑で取り調べを受けている元職員は、組織のなかでは異端だったのだろうか。
この人物の言動にみられるような世界観は、組織のなかにだいぶ浸透しているように感じられる。
将校の教育機関においては、櫻井よしこ女史がよく招かれているのだろうか。
将校の必ず学ぶとされるコースに入るにあたり、課題図書のようなものはあるのだろうか。
世情の移り変わりに合わせて、自画自賛と人種主義、陰謀論(コミンテルンが云々、ルーズベルトが云々)が広くいきわたっているのだろうか。
◆無職のつぶやき
無職戦闘員としての生活を通して、次の原則を保持しようと思った。
・人種差別をしない。
・生命、人の権利を軽視する発言をしない。
・人の考えはそれぞれ異なる。
◆本について
最近、『パンセ』を読んでいるが、全編をくまなく理解するのは不可能と感じた。
なので、読んで納得する部分だけを覚えておくことにした。
――人は真人間になることは教えられないで、それ以外のことをみな教え込まれる。……彼らが知っているといって得意がるのは、彼らが教えられたことのない、ただ1つのことについてだけである。
――正しいものに従うのは、正しいことであり、最も強いものに従うのは、必然のことである。力のない正義は無力であり、正義のない力は圧制的である。
――このようにして人は、正しいものを強くできなかったので、強いものを正しいとしたのである。
◆これから読みたい本
・南米における外交
Predatory States: Operation Condor And Covert War In Latin America
- 作者: J. Patrice McSherry
- 出版社/メーカー: Rowman & Littlefield Publishers, Inc.
- 発売日: 2005/06/30
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・人を収容する
Gulag: A History of the Soviet Camps
- 作者: Anne Applebaum
- 出版社/メーカー: Penguin
- 発売日: 2004/04/29
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