うちゅうてきなとりで

the cosmological fort 無職戦闘員による本メモ、創作、外国語の勉強その他

『廃墟のなかのロシア』ソルジェニーツィン

 ソ連崩壊後、混乱から立ち直らないロシアについて、『収容所群島』の作者が、どうすればいいかを考える本。

 ロシア側が考えるロシア救済策・ナショナリズムは、あまり耳に入ってこないので新鮮に感じた。

 明らかに、欧州や合衆国とは異質の思考であり、冷戦時代の対立が後をひいている。

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 権力の圏内で

 ソ連解体のときに、致命的な悪事がおこなわれたために、ロシアは最悪の状態に陥った。国家資産は一部の政治家と海外資本に奪い取られた。

 欧州はNATOを拡大し対ロシア包囲網の構築に急いだ。アメリカもロシアの封じ込めを画策している。

 また、各国が独立したとき、各共和国に済むロシア人は放置された。かれらは一夜にして外国人の扱いとなった。

 ソルジェニーツィンにとっては、ウクライナの一部領土に捨て置かれたロシア人は、領土と一緒に復旧されなければならない。

 CISは、ロシアにとって無益な共同体である。ロシアは加盟国を統制することができず、ただ援助だけをし続けなければならなかった。

 ――さらに、我が国の中央の支配層がおよそ気にしていないのが、独立のどさくさで、われわれから切り離されてしまった2500万人のロシア人のことである。

 

 見捨てられた人びと

 ソ連解体時に他の共和国に取り残されたロシア人は、各国の民族主義政権から迫害を受けたが、ロシア政府はかれらを無視した。

 ウクライナでは民族主義者が台頭し、かれらは反ロシア的な政策を進め、アメリカも味方につけた。

 軍隊は崩壊しており、立て直しが必要である。

 将校らは運搬のアルバイトをしなければ生活できない。新兵はタダ働きをさせられ、また恐喝される。チェチェン初戦での敗北により、ロシア軍は世界中から嘲笑される存在になった。

 チェチェン侵攻自体も、正当性のない決定である。

 ――自国の軍隊を養いたくない民衆は、他国の軍隊を養う羽目になる。

 

 絡み合う民族

 ロシア人は差別的な地位に貶められている。自治国を持つ民族のみが特権を持ち、残りの少数民族とロシア人は見捨てられている。

 ロシアのような巨大な国を治めるには、民族主義、民族ごとの自治政権を林立させるのでは不可能である。ロシア連邦人としての意識を醸成するしか、民主主義の道はない。

 

 困難な和解

 ロシア人であることを誇れるか

 多民族国家において、健全な愛国主義、健全な民族主義はどのようなものか。

 ロシア人の特性の多くは、正教によって培われたと著者は考える。ロシア農民の特徴は次のとおり。運命に慎み深く従うこと、思いやりを持つこと、献身と自己犠牲に富むこと、自己非難や悔恨を抱くこと、祈ること、潔く死ぬこと、外面的な富や成功を追求しないこと。

 ロシアのことわざ……「貧乏は恥ではない」、「災厄に従え、さすれば災厄は従う」、「悲しみ多ければ、神に近し」、「この世の忍耐は安楽に勝る」。

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 ソルジェニーツィンの方策……

・正教による精神の復興

・教育の立て直し

・ゼムストヴォ(ロシア帝国時代の地方自治機関)の活用

地方自治の推進

ロシア連邦人としての意識を拡大させよ

廃墟のなかのロシア

廃墟のなかのロシア