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うちゅうてきなとりで

the cosmological fort 無職戦闘員による本メモ、創作、外国語の勉強その他

『憲法』芦部信喜 その2

 10 経済的自由権

 職業選択の自由、居住・移転の自由、財産権を総称していう。精神的自由に比べてより多くの、広範にわたる規制を受ける。

 規制が合憲であるかどうかは、「合理性」を基準に審査される。

 財産権はフランス人権宣言においては神聖かつ不可侵とされたが、現在では、ほぼ全ての憲法が、「所有権の行使は、同時の公共の福祉に役立つべきである」とするワイマール憲法の思想に基づいている。

 財産権の規制に対しては補償が与えられる場合がある。

 

 11 人身の自由

 奴隷的拘束と意に反する苦役は禁じられている。

 告知と聴聞とは、「公権力が国民に刑罰その他の不利益を科す場合には、あらかじめその内容を告知し、当事者に弁解と防御の機会を与えなければならない」とする原則である。

 また、「何人も、現行犯として逮捕される場合を除いては、権限を有する司法官憲が発し、かつ理由となっている犯罪を明示する令状によらなければ、逮捕されない」。

 また、理由なく抑留または拘禁することもできない。理由なく住居、書類、及び所持品を捜索、押収することもできない。違法な手続きで得られた証拠は証拠能力を失う。

 刑罰について……事後処罰、及び、同一の犯罪について重ねて刑事上の責任を問うことはできない。

 「公務員による拷問及び残虐な刑罰は、絶対にこれを禁ずる」。

 

 12 国務請求権と参政権

 これらは人権を確保するための基本権である。

・請願権

・裁判を受ける権利

・国家賠償及び補償請求権

 参政権は、選挙権、被選挙権及び国民投票を通じて達成される。公務員になる権利も、広義の参政権に含まれる。

 

 13 社会権

 社会権は弱者を保護し実質的平等を実現するための人権である。

 生存権、教育を受ける権利、勤労の権利、労働基本権を保障する。社会権の保障により、国は社会国家として国民の社会権の実現に努力すべき義務を負う。

 教育を受ける権利に対してその責務を負うのはまず親ないし親権者である。義務教育は無償とすると定められている。

 労働三権とは、団結権、団体交渉権、団体行動権争議権)をさす。

 公務員は公権力と特別な関係にあるため、労働基本権及び参政権について規制を受けている。

 

  ***

 第3部 統治機構

 14 国会

 近代憲法において統治機構の基本原理は権力分立と国民主権である。

 行政と立法の優劣関係や、三権の強弱については歴史的な相違がある。日本においては、権力分立と並んで、国民主権と法の支配の原理が統治機構を支えている。

 国会は国民の代表機関、国権の最高機関、唯一の立法機関である。議員は、国民の多様な意思をできるかぎり公正かつ忠実に国会に反映することが要請される。

 二院制の理由として、下院の軽率な行為・過誤の回避、民意の忠実な反映があげられる。

 国会議員は、不逮捕特権と、発言の免責特権を有する。

 会期には常会、臨時会、特別会(衆議院解散総選挙後の会)がある。国会は原則公開だが、三分の二以上の多数で議決すれば秘密会を開くことができる。

 我が国の国会運営の大きな特徴は、委員会中心主義にある。つまり、委員会の審議が原則として議案の成否を左右する制度である。

 議院には国政調査権があるが、司法権や検察権に対して政治的圧力等をかけることは許されない。基本的人権を侵害する調査は認められず、刑事手続き上の強制力も認められない。

 

 15 内閣

 憲法により、内閣は行政権の主体であり、内閣総理大臣は首長であると定められている。

 行政権とは、国家作用のうちから立法作用と司法作用を除いたものをいう。

 

 16 裁判所

 司法権は統治行為についてはその審査を回避する。統治行為とは、直接国家統治の基本に関する高度に政治性のある国家行為である。

 司法権の独立とは、裁判所の行政・立法からの独立及び裁判官の職権の独立をいう。裁判官が従うべき良心とは、かれ個人の良心ではなく、(客観的な)裁判官としての良心を意味する。

 

 17 財政・地方自治

 財政は国会のコントロールによる(財政民主主義)。租税は国民の同意なしには成立しない(租税法律主義)。

 予算は内閣によって作成され、国会の審議・議決を受ける。会計年度開始までに当該年度予算が成立しない場合は、暫定予算が用いられる。

 国または地方の予算を「宗教上の組織もしくは団体」へ支出することはできない。

 地方自治は中央の統一権力の強大化をおさえ、権力を地方に分散させる意義があるといわれる。

 地方公共団体はその自治事務に際し条例を制定できる。

 

 18 憲法の保障

 「憲法の崩壊を招く政治の動きを事前に防止し、または、事後に是正するための装置」を、憲法保障制度という。

 抵抗権は権利と自由の確保のため実定法を拒否する権利だが、日本国憲法はこれについて明確に定めていない。

 また、国家緊急権についても憲法は定めていない。

 憲法は、裁判所に対し違憲審査権を認めている。審査権は裁判官の職権に含まれ、下級裁判所でも審査は可能である。その対象は「一切の法律、命令、規則又は処分」である。条約が審査の対象になるかどうかは、憲法と条約どちらかを優位と見るかによって解釈が変わり、確定していない。

 硬性憲法rigid constitutionの技術については、あまりに改正を難しくすると、可変性がなくなり、違憲的な運用が常態化してしまうという問題がある。

 憲法改正に際しては、国民主権と人権を否定するものは憲法により許されていない。また、国際平和の原理も改正されてはならないが、それは軍隊保有を意味するものではないというのが通説である。

憲法 第六版

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