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うちゅうてきなとりで

the cosmological fort 無職戦闘員による本メモ、創作、外国語の勉強その他

『憲法』芦部信喜 その1

本メモ ◆その他の本

 ◆感想

 憲法には理想・理念が詰め込まれている。しかし、実際にどう運用されているかが問題である。

 理念はそれだけでは国家権力を服従させることができない。人力によって目的を達成することが必要である。

 平和主義、特に9条については、自衛隊創設時から条文の形骸化が始まっていたという印象を受ける。規則から逸脱した運用がまかりとおれば、後は何をしようと構わないということになってしまう。

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 第1部 総論

 1 憲法立憲主義

 領土と人と権力は、国家の3要素である。国家の統治存在を基礎づける基本法憲法である。

 憲法学の対象とする憲法は、「国家権力を制限して国民の権利・自由を守ることを目的とする」立憲的憲法、近代的憲法である。

 近代憲法の特質は、自由の基礎法であること、制限規範であること、最高法規であることにある。自由の基礎法の根本にある規範とは、個人の自由と尊厳を不可侵とする自然権の考え方である。

 以上の立憲主義思想と関連するのが法の支配rule of lawである。具体的には、憲法の最高法規の概念、個人の人権、法の適正手続due process of law、裁判所の尊重等である。

 同時に、立憲主義は民主主義とも結びつく。

 

 2 日本憲法

 帝国憲法は神権主義的な色彩が強く、また、軍の統帥に関する大権が一般国務から分離・独立し、内閣・議会の関与が否定されていた。

 

 ――明治憲法が破棄され、日本国憲法が制定された最も大きな直接の原因は、ポツダム宣言の受諾、占領、連合国軍総司令部の強い指示などの外からの圧力にあったが、明治憲法それ自体にも、統帥権の独立をめぐる問題など改正を必要とする内在的な理由が存在していたことを看過してはならない。

 日本国憲法に自律性があるかは議論のある点だが、本書は自律性があるとしている。

 

 3 国民主権の原理

 国民主権基本的人権の尊重、平和主義を基本原理とする。ここでいう主権とは、統治権、最高独立性、最高決定権を意味する。

 国家権力の主権者は全国民である。よって、国民投票制は、国民主権の原理と不可分である。

 象徴天皇制の目的は、天皇に対し「国の象徴たる役割以外の役割をもたないこと」を強調することにある。天皇は国事行為とそれに準ずる公的行為のほか、私的行為を行うことができる。

 皇室の経費には内廷費(天皇らのお手元金)、宮廷費(宮内庁経費)、皇族費(皇族に対する支給用)がある。

 

 4 平和主義の原理

 平和主義は幣原とマッカーサーによって提案された。自衛権、交戦権、戦力等、現状に合致しない点が多数ある。

 ――いかに国際貢献という目的であっても、憲法9条の改正なくして、現状のままの自衛隊が部隊として(とくにPKFに)参加する出動を認めることは、法的にはきわめて難しい。

 

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 第2部 基本的人権

 5 基本的人権の原理

 基本的人権は、国民としての権利といった、外見的なものから、社会的なもの(生存権、教育権、労働権)といったものへ拡大されてきた。

 人権の特徴は、固有性、不可侵性、普遍性にある。また大別して自由権参政権社会権に分けられる。

 社会権は、「国家による自由」ともいわれ、弱者が人間的な生活を営めるように、国家の積極的な配慮を求めることのできる権利である。ただし、具体化するには立法による裏付けを必要とする。

 国民のほかに人権保障を受ける対象には、天皇・皇族、法人、外国人がある。これらは一般国民と比較して、一部制限を受けている。

 

 6 基本的人権の限界

 基本的人権を制限するものに公共の福祉がある。公共の福祉に係る違憲審査の際に用いられるのが、二重の基準論である。

 ――この理論は、人権のカタログのなかで、精神的自由は立憲民主政の政治過程にとって不可欠の権利であるから、それは経済的自由に比べて優越的地位を占めるとし、したがって、人権を規制する法律の違憲審査にあたって、経済的自由の規制立法に関して適用される「合理性」の基準は、精神的自由の規制立法については妥当せず、より厳格な基準によって審査されなければならないとする理論である。

 公権力に準ずる、「社会的権力」による人権侵害からも、国民の人権を保護する必要がある。よって、人権規定は私人による人権侵害に対しても適用されなければならない。

 

 7 包括的基本権と法の下の平等

 幸福追求権からは、プライバシー権、環境権、日照権、静穏権……等が主張された。プライバシー権については、私的領域に他人を立ち入らせないだけでなく、公権力に対してプライバシーの保護を積極的に請求する側面が重視されてきている。

 法の下の平等には、法内容の平等、相対的平等とがある。国家は、法の成立、適用に関して、人種、信条、性別、社会的身分・門地を理由に差別してはならない。

 1票の重みも、法の下の平等の原則からは是正されなければならない。

 

 8 精神的自由権 内心の自由

 精神的自由、経済的自由、人身の自由に大別される。

 思想・良心の自由は、国家権力が他人の思想を露顕すること、強制調査することも規制している。

 学問の自由は主に大学の自由・自治に重点を置いている。普通教育については「教育の機会均等と全国的な教育水準を確保する要請などがあるから」、完全な教授の自由を認めることはできない、と最高裁で示された。

 

 9 精神的自由権 表現の自由

 表現の自由参政権と密接につながっている。さらに、政治参加のために正確な情報を知る必要があることから、知る権利、アクセス権へとも権利が広がっていく。

 報道の自由、取材の自由、放送の自由について。

 表現活動を事前に抑制することは許されない。これが、21条「検閲の禁止」である。

 精神的自由を規制する立法は明確でなければならないとするのが、明確性の基準である。アメリカでは、違憲審査基準として「明白かつ現在の危険clear and present danger」を適用している。

 集会の自由は、公共施設の使用許可に関わる。集団行動の自由は、デモの際の警察への届け出に関わる。結社の自由と関連するのは破壊活動防止法である。破防法違憲であるかどうかをめぐって議論がある。

 通信の秘密は、プライバシー権の一環として保障されている。しかし、刑法や、関税法、破産法等に例外がある。

 また、通信傍受については、一定の条件下で認められるべきとする説が有力であり、99年には通信傍受法が制定された。

 

[つづく]

憲法 第六版

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