1 歴史
イスラム金融は「利子」の禁止、現物取引の前提、PLS(損益分担方式)、アルコール等の忌避ビジネス等を特徴とする。
イスラムの経済的活動は近代になると西洋に押され低調となり、またオスマン帝国がヨーロッパの銀行制度を用いたため退潮した。20世紀後半になるとイスラム諸国の独立意識の浸透とともに、「イスラム金融」の復興も始まった。
ムスリムは経済について次のように考える。すなわち、現世のすべてが神の被造物である以上、天然資源や資本等は人間の所有権に属さない。労働による所有権を認め、不労所得には否定的である。
イスラム金融の手法について。
1 ムダラバ……今日の信託業務や投資ファンドのようなもの。
2 ムシャラカ……共同出資に似ている。
3 ムラバハ……金融機関における利潤や手数料。
4 イジャラ……金融機関によるリース
先進国の金融制度は利子を中心につくられているが、イスラム金融は利子を禁止する。
IMFによればイスラム金融を全面採用しているのはイランとスーダンであり、パキスタンがこれに準ずる。湾岸諸国、ヨルダン、エジプト、マレーシア、インドネシア、バングラデシュでは欧米型金融とイスラム金融が併存している。
トルコは近代化以来、建前上は世俗主義と政教分離を徹底してきた国であるため、イスラム諸国の中でも特異である。イスラム金融は現在はリテール中心にとどまる。
2 世界各地に広がる
イスラム金融はイスラム国のみならず、ムスリムを抱える欧州や香港、シンガポールでも広がりつつある。
――こうした背景には、各国には多かれ少なかれ一定規模のムスリムがおり、社会政策としてムスリム向け金融サービスを拡充するという側面があるのも事実であるが、それ以上に、とりわけ金融先進国では、国際金融のトレンドとしてイスラム金融が隆盛しているため自国金融市場や金融機関の機能強化を目的として政策対応を進めている部分が多いように思われる。
ロンドンやシンガポールといった国際金融センターはイスラム金融を取り扱う。
3 基本概念
イスラムは利子を禁じる。
ムダラバ、ムシャラカ等の詳細な説明。
4 イスラム資本市場
金融において、資本市場は資金調達手段及び運用資産として重要な地位を占める。オイルマネー運用の受け皿としての資本市場商品、資金調達手段としてのイスラム債券(スクーク)等は成長著しい分野である。
債券及び株価指数の技術的な説明。
5 近現代
イスラム金融が本格的に制度化されたのは1950年代以降であり、徐々に国際化とホールセール化を進めている。
イスラム金融取引成立のためには、シャリーア学者による適格性認定が必要である。しかし、この認定に地域間や学者間でばらつきがある。
イスラム金融と通常金融との併存方法が課題となる。
中東諸国のソヴリン・ウェルス・ファンド(政府出資ファンド)は、教義の遵守よりも経済性及び合理性を重視しているため、イスラム金融とのかかわりは強くない。
6 利子の禁止
利子は貨幣が使われるより前の実体経済においても存在した。それは謝意と同時に将来の信頼性を確保するためでもあった。ユダヤ教は利子を非難し、キリスト教においても利子は貪欲の象徴と考えられるようになった。貨幣の浸透と経済発展は利子を受け入れていった。
7 健全性とシャリア・ガバナンス
シャリーアはイスラム法学者の解釈・コメンタールの蓄積である。イスラム金融では、金融商品等をシャリーアに基づいて審査する。
イスラム法学派には、ハナフィ、マーリク、ハンバル、シャーフィーのスンナ4派とシーア諸学派とがある。サウジアラビアは厳格なハンバル、その他中東はシーア、トルコはハナフィ―が支配的である。
8 日本の可能性
(略)
巻末においてイスラームの簡単な歴史を紹介する。