うちゅうてきなとりで

the cosmological fort 無職戦闘員による本メモ、創作、外国語の勉強その他

『英米法総論』田中英夫 その3

 4 コモンウェルス

 植民地統治はエリザベス1世の時代から始まった。

 第1次大戦後は各自治領が準独立国の地位を得て、1931年ウェストミンスター憲章によりカナダ、オーストラリア、ニュージーランド南アフリカアイルランドニューファンドランドコモンウェルスの一員となった。

 コモンウェルスは対等の地位を持つ国からなる国家連合であり、連邦ではない。第2次大戦後のコモンウェルスは、英国王を国王として戴かず、コモンウェルスの長としてとらえることを認めている。このため独自の国王を持つ加盟国や、英国王を国王として戴かない国が多数存在する。

 やがて各国の独立性が強まりコモンウェルスの重要性は低下していった。

 イギリス人の発見した白人の国についてはイギリス法をほぼ忠実に継受している。そうでないアジア・アフリカ地域の国では、取引の分野では英米法が、そうでない家族法などは現地の伝統が利用されている。コモンウェルス国家の法律家は大半がイギリスに留学したものだったためイギリス法の影響は強い。

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 5 司法

 イギリス裁判所

 その特徴……歴史が色濃く残っている、上位裁判所と下位裁判所とがある、裁判所は集中する、大法官が強い行政能力を持つ。

 大法官とはイギリス司法制度の頂点に立つ裁判官であるとともに大臣である。

 事件ごとに、いくつかの裁判所がある。

 貴族院house of lordsは連合王国最高裁判所だが、この裁判所への上訴は厳しく制限されている。

 アメリカ裁判所

 イギリスの影響を受けているが、イギリスよりも歴史の影響が薄い、司法部に対する国民の監督および参与が強調されている、アメリカ的平民主義の色彩を強く持つ、連邦制のためシステムが地方分散型になっている、という特徴を持つ。

 制度は州により異なるが、上訴については法律問題につき1回限り、ごく例外的に2回目を認めるという方式が一般的である。

 連邦には最高裁控訴裁、地裁がある。

 イギリス法曹

 弁護士がバリスタ(法廷弁護士)とソリシタ(事務弁護士)に分かれる。バリスタはソリシタと依頼者から依頼を受けて法廷弁論を行う。ソリシタよりも社会的地位が高く人数も少ない。優れたバリスタは大法官により勅選弁護士Queen's Counselに任命される。

 バリスタにのみ弁論の独占が許されているのは判例法の形成を重んじるためである。裁判官はバリスタから選ばれる。

 バリスタとソリシタはあくまでも対等で独立の関係にある。

 ソリシタは依頼人から事件を受け、整理してバリスタの意見を仰ぐ。弁護士への成功報酬は禁止されている。

 イギリスには検察は存在しない。私人訴追の原則が守られており、警察もソリシタとバリスタに訴追を依頼する。公訴局長官という公的な訴追提案機関が存在する。

 アメリカ法曹

 弁護士制度は州ごとにつくられ、州をまたぐことはできない。弁護士はイギリスのように二分化されていない。個人経営と事務所経営とがある。また法律家は法律以外にも広範な問題に関わるため、公務員や行政に転ずることも多い。

 刑事事件を除いて成功報酬が認められており、また弁護士費用の敗訴者負担はない。

 検察官は政府所属の弁護士ととらえられ、また高位の検察官は州においては公選制であることが多い。

 裁判官

 英米の裁判官には決まった任期がなく官僚制が用いられていない。このためどの裁判所の裁判官も俸給はほぼ横並びである。イギリスの大法官はバリスタから選ばれ、また政治的な考慮が加わる。

 法律家の養成

 陪審

 イギリスでは刑事と一部の民事(詐欺、不法監禁等わかりやすいもの)、アメリカではコモン・ロー起源の刑事民事において陪審制が選択可能である。

 手続きの基本構造

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 6 法源

 判例

 英米においては我が国の法典に匹敵する地位を判例が占めている。これを判例主義という。

 「先例拘束性の原理doctrine of stare decisis」……問題となっている法律問題について先例がある場合には、それを十分に尊重し、原則としてそれにしたがって判決をすべきであるという考え方。

 この原理はアメリカよりもイギリスの方が強い。

 「レイシオ・デシデンダイ」……判決の対象となった具体的な事件の解決に必要かつ十分な範囲での法律問題の判断に尊重される部分、判決理由のこと。そうでないものを傍論dictumという。

 制定法

 連合王国不文憲法主義を取る。合衆国は連邦と州それぞれが憲法を持つ。

 条約について……イギリスでは、条約は国際法的効力を持つのみであり、国内法的には、国会の立法をまって初めて法的効力をもつ。アメリカでは支障のない場合条約が同時に国内法としての効力を持つ。

 英米法は制定法を尊重し適用するが拡大解釈はしない。あくまでも、コモン・ロー体系に余計に加えられたものという扱いである。これを文理解釈といい、積極的に法を形成していく合理的解釈と対立する。

 アメリカは初期の法制定の未熟さからイギリスよりも文理解釈は緩い。イギリスにおいても近年、字義通り解釈の度合いは緩まっている。

 憲法解釈については、憲法の精神、社会の諸条件に照らして自由に解釈することが強調される。

 その他の法源

 約款その他私人による取り決め、慣習(1189年以前から)、学説 

英米法総論 上

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英米法総論 下

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