アフリカについての文章を集めたもの。作者はポーランド人のジャーナリストで、世界各国からの現地報告が多い。
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ガーナ編
ガーナは戦後のアフリカ諸国独立の旗手として、先頭に立っていた。
タンガニカ編
アフリカの黒人らは独立したが、白人による統治機構をほぼそのまま継承した。つまり、支配者層が極端な物質的利益を享受し、一般民を搾取、抑圧する体制が維持された。このため、独立国における権力闘争と暴力は苛烈なものとなった。
アフリカ人一般に共通の氏族制度は、独立後も維持された。族長を中心に部族が連合をとる形式がその特性である。社会的に成功したアフリカ人は、部族の者に富を分け与えた。
ウガンダ編
マラリアの症状について。
イギリスはアフリカにおける労働力確保のため、インドから労働者を連れてきた。かれらはテントに居住し、劣悪な環境で働かされた。
老いたライオンはシカやアンテロープを追うことができなくなり、かわりに人間を襲った。
ウガンダのアミンは、国内の主流民族であるバントゥー系ではなく、辺境の部族出身である。かれはイギリスの植民地軍に雇われ、やがて陸軍大将となった。クーデタにより政権を掌握した後は、拷問と粛清を行い、数十万人を殺害した。
アミンはタンザニアに侵攻したがすぐに撃退され(「なお、この戦争でのタンザニア軍の損失は、戦車1台だった」)、サウジアラビアに逃げ延びた。
民族主義、人種差別は、同じ肌の色同士のほうが苛烈である。辺境の、劣等とされる人種の出身だったアミンは、同じような少数部族を支持基盤として独裁をおこなった。
ザンジバルは周りを海に囲まれた天然の要塞島として、歴史上、アラブ人が支配していた。かれらは大陸から奴隷を集め、奴隷貿易をおこなうことで発展した。植民地主義者たちの進出後は、イギリスの傀儡国となった。
ナイジェリア編
ナイジェリアやその他の国で、立て続けに発生した軍事クーデタについて。支配者層への不満が蓄積し、民衆は軍隊を頼りにした。軍人はクーデタをおこし、あらたな支配者となった。
砂漠の国。
エチオピア編
エチオピアにおける飢饉は、人為的に起されたものである。不作に伴い食糧価格が上昇したが、皇帝ハイレ・セラシエは、援助を求めるのは国の恥だとして、飢饉の事実を隠ぺいした。皇帝を倒した軍事政権も、同じように飢饉を隠ぺいした。
ルワンダ編
ルワンダはアフリカのチベットともいわれ、周囲を山に囲まれた小さな国である。
少数のツチ族は牛を生業とする牧畜民族であり、フツ族は農耕を生業としていた。ツチ族とフツ族は封建領主と臣民の関係にあった。
フツ族出身の大統領ハビャリマナは、ツチ族過激派であるルワンダ愛国戦線と和平を結ぼうとしていた。しかし、ハビャリマナの親族であるアカズ派は、ツチ族完全虐殺を企画し、ハビャリマナを撃墜し政権を掌握した。
アカズ派はラジオ放送を駆使し、フツ族に対し、ツチ族を殺すよう呼びかけた。ルワンダ愛国戦線によって放逐されるまで、インテラハムウェ等の民兵を中軸とするフツ族民衆による虐殺が数か月間続いた。
現在、フツ族は難民となり、ツチ族の復讐を恐れてさまよっている。隣国ブルンジ、ウガンダにおいてもツチ族が政権を取っており、対立は継続している。
ソマリア編
貧しい氏族は水を求めて旅をするが、力尽きて一族ごと消滅することがある。ソマリアの伝統社会は巨大な氏族のピラミッド形状をなす。
セネガル編
貧乏人にとって盗難は命にかかわる所業である。このため、盗人はその場で殺されかねない。警察は盗人の保護と救出を担当することが多い。
リベリア編
アメリカからやってきた解放奴隷は、今度は自分たちが主人となり、原住民を奴隷として使用した。
マリ編
トゥアレグ族はサハラ砂漠周辺に住むベルベル系のムスリム遊牧民で、かつては隊商を襲う好戦的な部族として恐れられた。現在は武装勢力となり、周辺地域に侵攻し軍事対立を招いている。
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植民地時代より前、アフリカには数万の小王国があった。列強はそれらを統合し、15に減らした。
本書に描かれるアフリカは悲惨の土地だが、同時にカプシチンスキはアフリカ人たちが持つ可能性や精神力にも目を向けている。
アフリカにおいては精神的な要素が重要な地位を占める。外国人にとっては粗末にしか見えないものに、大きな意味をこめていることがある。
- 作者: リシャルト・カプシチンスキ,工藤幸雄,阿部優子,武井摩利
- 出版社/メーカー: 河出書房新社
- 発売日: 2010/08/11
- メディア: 単行本
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