うちゅうてきなとりで

the cosmological fort 無職戦闘員による本メモ、創作、外国語の勉強その他

『The Israel lobby and U.S. foreign policy』John Mearsheimer, Stephen M. Walt その2

 2部 ロビー活動

 イスラエルロビーは、合衆国のイスラエル支援を維持させることと、中東のバランスをイスラエルに有利な方向に変えさせることを目標としている。かれらは、イスラエルと合衆国の国益が同一であり同様であると主張する。

 著者は、このような動きは合衆国とイスラエル双方に不利益をもたらすと考える。

 同時多発テロ以降、イスラエルロビーの力は強まり、イラク戦争においてロビーは多大な影響を及ぼした。しかし、この戦争は合衆国にとっては大きな間違いとなった。

 7 ロビー対パレスチナ人

 ブッシュとパウエルは当初イスラエルの占領政策を批判したが、ロビーの圧力によって方針を変更した。パレスチナ国家樹立を目指すロードマップは、シャロンとブッシュによって無効化された。アラファトが死亡し、アッバスが議長になってからも、ブッシュはシャロンの後継者オルメルトを支持したため和平の道は遠のいた。

 8 イラクと中東変革の夢

 同時多発テロ以降、国民の多くはイスラエル援助の打ち切りに賛成していた。しかしロビーの攻勢は外交方針を固定した。また、イスラエルパレスチナ和平へ向けたライス国務長官の取り組みも、ネオコン系勢力によって無効化された。ロビーは、イスラエルが中東の覇権国家であり続けるよう合衆国に働きかけた。
 イラク戦争の原因は不可解だが、最大の要因は、イスラエルをより安全な立場としたいというロビーの力にあったと著者は主張する。石油利権を求めるなら、取引に消極的なイラクではなく、より弱小で産油量の多いサウジアラビアを狙うだろう。テロリストとの戦いを目指すなら、ビン=ラディンの出身国であるサウジが最適である。フセイン政権の崩壊は、イスラエルの地域覇権に寄与する。よって、イラク戦争イスラエルの利益のために行われた。

 現在、イラク戦争は完全な失敗であることが明らかになり、イラク及び中東は以前より不安定になっている。イスラエル・ロビーは、自分たちが開戦に向けて動いたことを今になって否定している。

 9 シリアを標的とする

 シリアは問題こそ多いが、イラク程の国力さえ持たない、アメリカからすればまったく危険度の少ない国である。また、世俗派のシーア派政権であるため、ビン=ラディンとは敵対している。ところが、ロビーの影響によりアメリカはシリアを標的に据えることになった。

 10 照準の中のイラン

 イランはシリア、イラクよりも大きな国である。90年代、イランは米国との関係改善を指向したが、イスラエルロビーの影響から米国はイランを拒否し、関係が悪化した。

 イランはシーア派の国であり、アル=カイダとは敵対的関係にあるので、本来なら対テロ戦争での協調も可能だったはずである。

 レバノンヒズボラを支援しているため、イスラエルとは対立している。だから、ロビーは米国をイランと対立するよう働きかけたのである。

 11 ロビーと第2次レバノン紛争

 2006年のレバノン侵攻において、イスラエルは多くの一般人や民間施設を攻撃し、国際的な非難にさらされた。また戦争の効果が上がらず、ダン・ハルーツ参謀総長オルメルト等、政府と軍の首脳が総辞職した。

 この紛争に唯一肩入れしていたのが米国である。

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 結論 何をなすべきか

 著者はロビーの存在がアメリカとイスラエル双方の国益を害していると断定する。この事態を改善するために、合衆国は次の方策をとるべきだという。

・中東における合衆国の権益を分析する

・この権益を守るための戦略を描く

イスラエルとの新しい関係を発展させる

イスラエルパレスチナ紛争を独立国家案により解決する

・ロビーをより構築的な勢力に変える 

The Israel Lobby and U.S. Foreign Policy

The Israel Lobby and U.S. Foreign Policy