うちゅうてきなとりで

the cosmological fort 無職戦闘員による本メモ、創作、外国語の勉強その他

『華僑』游仲勲

 華僑についての概要を解説する本。1990年に書かれたので内容は相当古い。

 

 1 中国人の海外移住

 中国人は大陸民族であり常に移動していた。大規模な人口流出はアヘン戦争後からで、特に広東省福建省から多くの中国人が労働力として東南アジア、新大陸等に移住した。

 49年の新中国成立時、約400万人の国民党関係者が台湾、香港、海外に逃れた。

 日本軍はマレーシアやシンガポールにおいて、華僑主体の抗日ゲリラと戦ったため、いまでも華僑の間には警戒感が強く残っている。

 鄧小平の開放政策以降、大陸と海外との交流は活発になった。台湾からも里帰り、観光の中国人が増大している。華僑と大陸の交流は特に珠江デルタ地帯で顕著である。

 2 華僑・華人人口

 華僑は台湾、香港、マカオを含めると7000万人程存在する。華僑人口が急増したのはアメリカ、カナダ、オーストラリアである。

 3 東南アジア

 タイ……人口の1割、500万人の華僑が住む。流通その他のサービス業に進出しており、華僑出身の政治家も少なくない。

 シンガポール……人口270万人のミニ都市国家だが、4分の3が華僑であり、初代首相リー・クワンユーも華僑である。

 マレーシア……西と東(島嶼部)で文化の相違がある。人口の3分の1が華人である。西は錫工業、ゴム栽培により発展した。90年代までは、イスラム教徒のマレー人を優遇する政策がとられていた(ブミプトラ政策)。

 インドネシア……華人人口は東南アジア最大といわれる。スカルノ大統領時代の共産党弾圧により、当時共産党に属していた多くの華僑が弾圧された。スハルトの出現とともにスドノ・サリム等の華僑政商が現れた。

 フィリピン……スペイン植民地時代には数回の虐殺がおこったが、独立後のマルコス政権では華僑を平等に扱う策がとられた。

 華僑全体の経済力を図ることは難しいが、台湾、香港を足した以上の生産力を全体として持っていると推定される。華僑による所得の高い国はシンガポール、タイ、フィリピン、マレーシア、インドネシア等である。

 4 富豪、財閥と階層分化

 タイ、シンガポールの財閥のほとんどは華僑系であり、シンガポールについては政府系財閥が多数を占める。

 銀行、金融サービス業が多い。

 華僑の富豪、財閥は一部であり、大半は平民、下層民である。特徴は、都市中産階層が多いことである。マレーシア、インドネシアには農民もいる。

 かつては政府の保護がないため、同族集団、同郷集団で強固な支配被支配関係を結ぶことが多かったが、時代が変わり、経営者や財閥支配者がその国の華人社会を支配するようになった。

 5 政治活動

 日中戦争の時代や、新中国成立時には、本国を政治的に支援する華僑が多かった。現在では、華僑華人は居留国の政治に重点を移している。

 華僑は居留国から二等国民とみられることが多いが、戦後、政治家として進出する者が増えた。

 6 文化・社会の変容

 華僑社会はかつて中国語学校を持ち、中国語と文化の継承に努めてきた。新中国成立に伴い、現地政府から弾圧を受けることが多かったが、近年、中国の経済発展に伴い、中国文化の意義が見直されている。

 ――中国人・中国系人が家庭と教育を重視したのは、血縁関係を重視するとともに、かつて旧中国では科挙が広く行われ、これに受かると高官になりえて、同族までもが潤ったからである。

 華人社会には今も中国文化が根付いている……道教、仏教、儒教、民間信仰、関帝廟、媽祖宮、観音寺、旧正月、爆竹等。

 華僑社会の五大幇……広東人、潮州人、福建人、客家、海南人。

 7 外流と内流

 本国の経済発展に伴い、華僑、大陸相互の交流が活発化しつつある。東南アジア、香港、台湾から大陸、またはアメリカ、カナダ等への人口流出も激しい。

 8 チャイナタウンの変貌

 伝統的なチャイナタウンから新しい町への変化。香港系、台湾系ベトナム系の流入について。住民だけでなく、ギャングについても層の入れ替わりがある。

華僑―ネットワークする経済民族 (講談社現代新書)

華僑―ネットワークする経済民族 (講談社現代新書)