うちゅうてきなとりで

the cosmological fort 無職戦闘員による本メモ、創作、外国語の勉強その他

『経済学の歴史』根井雅弘

 近代の経済学の変遷について紹介する本。旅行中に読んだのでメモがどこかにいってしまった。

 

 ――経済学の歴史を学ぶ理由のひとつは、私見によれば、現代経済学の背後に隠されている古の哲学や思想の痕跡を再発見し、現代理論を妄信する危険性を防ぐことにあると思われる。

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 著者は経済学の創設者としてフランソワ・ケネーをあげる。ケネーは『経済表』によって「重農主義」をかかげた。ケネーの時代には、国内産業の育成と輸出拡大、一方での保護関税政策を核とする重商主義が主流だった。これは東インド会社のような形態を理想とする。

 かれの『経済表』理論は、「自然法に基づいた国家統治によって到達すべき理想的な「農業王国」の経済システム」を描写したものである。かれは農業を重視し、農作物の自由貿易競争を提唱した。

 

 アダム・スミスは経済学の古典だが、かれの思想は頻繁に誤解される。

 かれは富を消費財ととらえる。ここで「富=貴金属」とする重商主義は否定される。

 生産物はその生産にかかわった経費に関係する「自然価格」をもち、現実の市場価格はこの自然価格を中心に上下する。独占やギルドは、供給不足を常態化し、価格の吊り上げにつながるとして否定される。

 また資本投下はまず農業を第一優先とすべきであり、この点で重商主義と異なる。

 かれは保護関税政策を非難したが、無制限に「自由放任」を叫んだわけではない。

 スミスは「国防は富裕よりもはるかに重要なことであるから、航海条例は、イングランドの全商業法規のなかで、おそらくもっとも賢明なものだといえるだろう」と書いている。

 スミスは政府の役割を国防、行政、土木等、公共財の整備といった幅広い範囲にわたるものと定めた。また、「見えざる手」、予定調和はあくまで理想であり、これに近づくための制度が欠かせない、と主張した。

 

 リカードは「古典経済学の完成者」であり、その後の範ともなった。かれの経済学には「抽象的かつ一般的な性格」がある。かれは投下労働価値説、差額地代論、賃金の生存費説、収穫逓減の法則を統合して理論体系をつくりあげた。

 投下労働価値説……商品の価値は投下労働量によってきまり、そのようにしてきまった一定量の大きさの価値が賃金と利潤のあいだに分割されるという。

 かれは自由貿易を推奨し、また資本蓄積を妨げない程度に課税として奢侈品と地代への課税をすすめた。

 

 ミルは『経済学原理』において富の生産と分配を区別した。生産が自然に基づくものなのに対し、分配は人為的なものである。またかれは土地の減少と人工の増加にともなう経済の停止状態――すなわち「定常状態」を評価した。

 かれは歴史的相対主義を主張するとともに、「ナチュラリスト」的思考ももっていた。

 

 マルクスは偏見や幻想なしで検討した場合、なお重要性をもつ。

 ――かれの著作のなかでは、市民社会の対等な契約関係という外観をまといながら行われる雇用・非雇用の関係が、ともすれば支配・被支配の関係に転化してしまうのはなぜかという、市民革命以後の近代社会の根本問題が問われ、少なくともそれに答えるべく努力がなされている……

 かれは「疎外された労働」論において人間性の剥奪を批判する。 

 

 その他……ワルラスケインズシュンペーターガルブレイス等の紹介。

経済学の歴史 (講談社学術文庫)

経済学の歴史 (講談社学術文庫)