うちゅうてきなとりで

the cosmological fort 無職戦闘員による本メモ、創作、外国語の勉強その他

『出発は遂に訪れず』島尾敏雄

 「日の果て」
 「です・ます」の丁寧語を用いているので、牧歌的な印象を受けた。

 ガジュマルの生息する島に、軍人たちがやってくる。彼らは洞窟に魚雷艇を隠し、特攻の命令を待つ。もっともおもしろい場面は、中尉が崩れた土嚢の修理を命ずるが、部下に陰口をたたかれ、泣く泣く自分ひとりで作業をするところである。

 中尉たちが特攻に向かい、現地の娘が自殺し、悲恋物語となるとおもいきや、決定的事態は回避される。物語りも宙吊りのまま終わる。

 ――あんなにも昼となく夜となくやって来た敵の飛行機がぱったり来なくなりました。それはぶきみな沈黙でありました。そんな日が三日ばかり続きました。その頃は毎日毎日がぷつんと絶ち切れていて、昔の日とも将来の日ともつながりがないように感じられてきました。それは怖ろしいことでした。

 

 「夢の中の日常」や「兆」は脈絡のない夢をそのままことばにしたような制作物である。

 魚雷艇の記憶が強く影響している。 

出発は遂に訪れず (新潮文庫 し 11-1)

出発は遂に訪れず (新潮文庫 し 11-1)