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うちゅうてきなとりで

the cosmological fort 無職戦闘員による本メモ、創作、外国語の勉強その他

『小海永二翻訳選集1 アンリ・ミショー集』

 小海永二によるミショーの翻訳を集めたもの。

  ***

 「わが領土」

 題目ごとに、架空の風土、架空の動物についての思い出が書かれる。

 ――重さが、ペストが、腐敗が、

   壊疽が、殺戮が、併呑が、

   ねばねばしたものが、消滅したものが、悪臭を発するものが、

   その時 蜜は石のようなものになり、

   大浮氷群は血を失い

   ……

   生ぬるい言語、情熱的な散策者たちは、小刀か、あるいは堅い小石かに変わり、流れる河川の快い水音はおうむたちと動力ハンマーとの森に変わり、

   ……

   おお! 最後の思い出よ、各人の小さな生命よ、各動物の小さな生命よ、点状の小さな生命たちよ、

    それらはもはや決して存在しないだろう。

 

 「夜動く」

 ――「氷山」よ、「氷山」よ、北大西洋の背、凝視されない海上に凍りつく貴い「仏陀」よ、出口なき「死」のきらめく「燈台」、幾世期と続く沈黙の狂おしい叫びよ。

   「氷山」よ、「氷山」よ、欲求なき「隠者」、閉じこめられた、はるか彼方の、毒虫のいない国々。島々の親族、泉の親族、わたしはなんという思いであなたを見ることか、あなたはわたしにとって なんと親しげに見えることか……

 

 「遠き内部」

 「プリュームという男」

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 「試練・悪魔祓い」

 濃度の高い、色と観念の混ざったような文章が続く。「年代記」は次のとおり。

 ――その時彫像たちの大戦争が始まった。それは火の馬の年のことだった。そして大殺戮が行われた。老いも若きも、自分の生命を保持することができなかった。生命を犠牲にしなければならなかった。

 彫像のために。動かぬ彫像のために。

 火の部族たちが樫の部族たちを壊滅させた。

 矢の部族たちが唐鍬の部族を壊滅させた。

 世界はすっかり痙攣していた。彼らが彼らの人生を生きなければならないのは、その年月の中でだった。

 

 「わたしの死んだ後で」……

 ――わたしは運ばれていった、わたしの死んだ後で、わたしは運ばれていった、密閉された場所にではなく、エーテル状の虚無の無限の広がりの中に。

 

 「怪物の脳漿」……

 ――わが三度目の墜落の後、内部の視力によってわたしは見た、重なる襞に蔽われた粘着性のわが脳髄を。わたしは肉眼でその脳葉と中枢とを見た。それらはほとんどどれもこれも、もはや機能をはたしておらず、わたしはむしろ、膿か腫瘍かがそこにできるのを見るだろうと予想した。

  ***

 「魔法の国にて」

 魔法の国にて……

 ――魔法の国を取り巻いて、微小な島々がある。それは浮標だ。それぞれの浮標の中には、ひとりずつ死者がいる。この浮標の帯が、魔法の国を防護し、この国の人びとのために聴音哨の役を果たして、彼らに見知らぬ人間の接近を合図する。

 それからあとはただ、彼らに道を迷わせ、遠くへ追い払ってしまいさえすれば、それでよい。

 

 事物のふしぎだけでなく、観念的な説明もおこなわれる。

 

 ここ、ポドマ……

 「魔法の国にて」を、さらに荒唐無稽にしたような作品。ポドマと呼ばれる人びとの、奇怪な生態を描く。

 「閂に向きあって」

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 架空の国の風土記、非現実的な風景、生きもの、出来事を書く。虐殺や屍体といった血を連想させるもの、ふしぎな生きものが作品の各所に登場する。 

小海永二 翻訳選集 第1巻 アンリ・ミショー集I

小海永二 翻訳選集 第1巻 アンリ・ミショー集I