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うちゅうてきなとりで

the cosmological fort 無職戦闘員による本メモ、創作、外国語の勉強その他

『不確定性原理』都筑卓司

 量子力学の根幹である不確定性原理について、たとえ話を用いて説明する本。

 体系的にわかりやすく理解させるのではなく、エピソードを通して、あくまでも量子力学不確定性原理の本質やイメージを伝えることを目的としているようだ。

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 ラプラスの悪魔は、数学者ラプラスによって考えだされた存在である。古典物理学ではすべての現象は因果関係によって予測可能である。よって、ラプラスの悪魔はこの世のすべてのできごとを予言できるはずだった。

 人間の心も、原子と分子の働きに還元できる。よって、ラプラスならば人類の行動も予測可能である。

 20世紀の物理学はこのラプラスの悪魔を否定した。

 古典物理学においては、ある物体が物体であることを確認するためには、ある時刻における位置と速度がわかればよい。

 しかし、物を観測するためには光等のエネルギーをあてなければならない。光は波であると同時に粒子であり、この双方の性質を持つものを量子という。

 光を物質にあてた場合、「位置を決めようとすれば速度があいまいになり、速度を決めようとすれば位置が不正確になる」。これが不確定性原理である。

 粒子とは、運動量とエネルギーを持つものである。

 光のエネルギーには単位量があり、それ以上に分割することはできない。これはプランクの提唱したプランク定数によって求められる。

 プランク定数を手掛かりに、ハイゼンベルクは原理を考案した。

 光子、電子、その他の粒子とは、「金属板などに当てたときには粒子的な性格を見せ、レンズ、回折格子などを通したときには波動的なふるまいを示すもの」である。

 不確定性原理は時間にも適応されるため、「一瞬間におけるエネルギーの厳密な値は」定められない。エネルギーの値を正確に定めると、時間は不確定となる。つまり、エネルギーは瞬間的にとんでもない値になり得る。

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 ――原子に対して不確定性原理が成り立つならば、それらの集合物である石についても自動車に対しても、同じ原理が成立してもいいはずではないか?

 ……いかんせん、質量があまりに大きすぎる。大きな質量の中に、自然界の基本法則は埋没してしまって、実際にはとても問題にならない。

 ……この自動車の速度の狂いは、1兆年の10万倍走って、たったの1センチであると……。とにかくこれだけの狂いは、エンジンの不調のためでもなく、脂の不良のせいでもなく、物理学の法則にのっとって生じるのである。

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 原子のまわりに電子が存在する濃淡の度合いは、波動力学によって求められる。

 ――……電子に衝突する光は、運動量がはっきりしていれば位置はあやふやである。だからこれが電子に衝突できるかどうか、保証の限りではない。もし電子にぶつかったとしても、この瞬間の光の運動量は決められないから、衝突後の電子はいったいどちらにどれくらいの速さではじかれるのか、だれも知らない。

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 温度が高いとは、分子、原子が速く走っている状態であり、低温になれば速度は鈍り、絶対零度になるとすべての原子は静止する。しかし、停止しても運動エネルギーは保持されている。

 個体となった原子はまわりに拘束されるため位置はかなり確定している。そのため、不確定性原理によって、運動エネルギーが不確定となる。

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 アインシュタインは、不完全性定理を含む量子力学の概念を批判した。

 ――神さまはサイコロ遊びをしない。自然は確率のような蓋然性では糊塗されない。もっと完璧な方法で語られなければならない。ただ、人間の認識が完全性を把握するまでに至っていない今日では、有効な方法として確率あるいは統計的な方法は十分に活用されなければならない。

 シュレディンガーの猫とは……ラジウムが1時間後に放電したかしていないかの状態は、「アルファ粒子がでていることとでていないこととの2つの状態を合わせ持っている」。

 実際に調べてみて、アルファ粒子を放出したかしなかったかが判明する。よって、猫の生死をラジウムと結びつけると、箱の中の猫は「生と死の状態を半々に持っている」。

 量子論的な解釈を、量子以外の大きな物(猫)に適用するか否かについては、学者の間でも意見が分かれた。

 ボーアらコペンハーゲン学派は、あくまでも猫は半分死んで半分生きていると主張する。100匹試せば50は生きて50は死ぬ、という解釈ではない。

新装版 不確定性原理―運命への挑戦 (ブルーバックス)

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