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うちゅうてきなとりで

the cosmological fort 無職戦闘員による本メモ、創作、外国語の勉強その他

『国際宇宙ステーションとはなにか』若田光一

 国際宇宙ステーションの概要から、宇宙飛行士の仕事までを説明する。宇宙飛行士はパイロットと同様、心身ともに高い水準を要求される。最後のスローガンは子供のように単純だが、それを実行するのは大変困難である。

 

 1 ミニ地球

 国際宇宙ステーションInternational Space Station:ISSは1998年から建設が開始され、2000年からは2、3人の宇宙飛行士が数か月交代で生活している。

 日本、アメリカ、ロシア、ヨーロッパ、カナダの世界15か国による国際協力プロジェクトである。

 各モジュールはそれぞれ別の国によって製作されている。アメリカはデスティニー(実験棟)、ロシアはズヴェズダ(サービスモジュール)、欧州はコロンバス(実験棟)、日本はきぼう(実験棟)を、それぞれ提供する。

 往復ロケットにはアメリカのスペースシャトルまたはロシアのソユーズロケット等が使われる。

 他の業務でも各国の協力が難しく、飛行士は英語、ロシア語を学習する。

 ISSの運用はヒューストン、モスクワ、ミュンヘン、つくばの運用管制局mission control centerが担当する。

 宇宙ロケットの設計には各国の考え方の違いがよく表れる。ロシアのソユーズはシンプルで信頼性が高く、運用しやすい。1回の使い捨てであり、開発当初のシステムを徐々に改良する方式を採用している。

 一方、スペースシャトルはバージョンごとに新しくシステムを組み直し、また飛行終了後に整備して再利用する。構造が複雑である。

 2 何をする

 ――ISSは多目的施設であり、宇宙実験、天体観測、地球観測、教育・文化活動、有償利用など様々な活動が行われる。

 特に宇宙でしかできない研究分野として、材料科学、宇宙医学、生命科学実験等があげられる。

 宇宙飛行士の行動も重力に影響を与えてしまうため、実験は地上からの遠隔操作を通して行われることが多い。それでも、組み立てや要所要所の作業は飛行士が実施するため、誰にとってもわかりやすい手順書が重要となる。

 3 長期滞在

 宇宙飛行士の長期滞在のために必須となるのは、環境制御システムである。酸素・二酸化炭素、水、トイレ、宇宙食等を安定して供給するシステムが求められる。

 4 宇宙飛行士

 宇宙飛行士にはシャトル操縦やシステム操作を行う「パイロット宇宙飛行士」と、ロボットアーム操作や船外活動、実験運用等を行う「ミッションスペシャリスト」の2種に分類される。

 飛行士のバックグラウンドで多いのはパイロット、技術者、科学者である。パイロットの多くは軍出身である。

 パイロットの任務……宇宙船操縦、実験運用、ロボットアーム操縦、船外活動、広報活動、芸術活動、教育活動、宇宙での映像の記録、救急医療対応

 宇宙飛行士は専門分野の知識技能のみならず、協調性や慎重さも要求される。

 5 運用のセンス

 ――……ISSで仕事をする宇宙飛行士にとって「最も重要な資質」とはなんだろう。……それを一言で表現するならば、「運用のセンス」である。運用とは、オペレーション、つまり機械を動かしていくことだ。操作能力と置き換えてもいいかもしれない。

 ――……1つのシステムを使ってある作業をするとき、あらゆる状況を想定し、合理的かつ柔軟な思考で、どんな事態が発生しても「安全」で「確実」にそして「効率よく」目的を達成しなくてはならない。……この能力を、私は「運用のセンス」と呼んでいる。

 運用のセンスをあらわす項目として著者は以下をあげる。

・正確な状況把握

・的確な作業の遂行

・優れたコミュニケーション能力

 状況把握のためには仕事に優先度をつけることが大事である。宇宙飛行士は訓練の過程でジェット練習機の操縦を行う。ここでセンスがなければたちまち見抜かれるという。

 6 訓練

 宇宙飛行士候補者の基礎訓練は次のカリキュラムで各国が実施している。

・導入(概要、宇宙開発ほか)

・基礎工学(航空宇宙工学、電気・電子工学ほか)

宇宙機システム・運用概要(シャトル、ロシア宇宙機ほか)

ISS、きぼうのシステム(運用、システム)

・サイエンス(宇宙科学研究ほか)

・基礎能力訓練(サバイバル技術、水泳、スキューバ、体力、無重量体感訓練、飛行機操縦、英語、ロシア語、メディア対応等)

 ロシアとNASAの訓練方式は対照的である。NASAは実践型であるのに対し、ロシアは理論とスキルを重視する。

 ジェット機での操縦訓練は運用センスを磨くのに不可欠である。操縦においては「操縦aviate、航法navigate、交信communicate」の優先順位が絶対であり、重要な計器から2秒以上目を離してはいけない。「全体像の把握」に留意して飛行する必要がある。

 ロボットアーム操縦訓練においては、アームをほかの構造物にぶつけずに操作することが重要である。

 他、海底での船外活動訓練も行われる。

 7 グループ

 ――宇宙飛行を安全・確実に行うためには、1人1人の能力を高めるとともに、一緒に飛行するクルー全体の能力を高めることが不可欠だ。そのためにNASAでは探検隊行動規範訓練と呼ばれるチームワークとリーダーシップのための訓練を行っている。

 候補者たちはチームを組み、キャンプ、夏山登山、冬山登山、海底研究施設「アクエリアス」でのミッションを行う。

 コマンダーに任命された者は事前に綿密な計画を立て、実際に指揮しなければならない。

 8 地上業務

 宇宙飛行士になっても、実際に宇宙に行けるのは3~4年に1回程度である。その間は様々な技術業務を行う。

 運用管制局での業務や、技術研究、改良のためのアドバイス等、仕事は多い。

 9 日常に活かす

 宇宙開発は基幹技術の集大成であり、ISSの建設や運用については、各国の競争と協力がバランス良く保たれなければならない。

 特にシステム工学は重要である。

 

 著者は学生に伝えたい能力として交渉能力を挙げている。わかるまでしつこく質問することが欠かせないという。

 宇宙飛行士は「一瞬一瞬の判断を大切に生きること」が心眼である。

 著者は夢、探求心、思いやりをスローガンとして掲げる。