うちゅうてきなとりで

The Cosmological Fort 無職戦闘員による本メモ、創作、外国語の勉強その他

2015年 映画のメモ その2

◆「ゼロ・ダーク・サーティ

 CIA職員の女がビンラディンの居場所をつきとめ、特殊部隊が突入し殺害する話。情報収集とはこのような陰鬱な作業の積み重ねであると感じた。
 敵の居場所をつかむ、敵がいかなる組織体制を持っているかを知ることは容易ではない。
 いくつかの問題点……拷問による捜査方法は自分たちのよってたつ理念を自ら破壊してしまう。また、非人道行為が民主主義社会において支持を得られない場合がある。
 相手の心性を計りそこない、金銭でどうにでも操れると考えることで、相手に裏をかかれる。
 「ジャッカルの日」の刑事のように、一心不乱にビンラディン暗殺に向けて突き進む女の映画である。

 

◆「君のためなら千回でも」(the kite runner)
 気色の悪い邦題だが、内容はおもしろい。ソ連の侵攻により、主人公はアフガンを脱出し、アメリカで生活する。親戚からの電話をきっかけに、子供時代の友人が残した子供を救出するため、再びカブールに潜入する。ソ連は去ったが、過激派のタリバンが占領しており、社会は荒廃していた。
 主人公は子供のときから小説を書きたいと考えており、友人や、妻、親戚等に励まされ、無事作家になる。
 過酷な環境で生きる人たちについての映画。

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◆「インビクタス
 マンデラ大統領と、南アフリカのナショナルラグビーチームの話。マンデラ南アフリカ新生の象徴として低迷するラグビーチームを励まし、ワールドカップ優勝へと向かわせる。1つの目標に向かって国民を団結させるために、大統領は選手たちを励まし、また、選手と国民の距離を縮めるよう尽力する。大統領の原動力である不屈の精神が感じられる。

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◆「さらば、愛の言葉よ」
 ゴダールの3D映画。音楽、映像ともにブツ切れの演出が使われる。フランス人が人文書や文芸作品を朗読し、また、警察と思われる中年男性が、若い女性をパトカーで追いかけ、けん銃を撃つ。犬が川や森の中を走る立体的な映像が現れる。
 フランス人の男女は、なぜか部屋のなかで全裸で過ごす。
 3D映像や、抽象的な公安組織の姿、小さな舟の風景等、きれいな場面は多い。しかし、本の読み上げや、禅問答のような会話は、昔観たゴダール映画を思い出す。

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◆「慰めの報酬
 ボンドは恋人を殺された復讐のために、犯罪組織を追跡する。しかし、手掛かりとなる構成員を次々と殺害してしまい、効率的に捜査が進まない。
 ボンドと、ボンドガールの双方が復讐のために行動しており、最終的に、防火設備のないホテルでボスを殺害し目的を達成する。
 パラシュートによる着陸や炎上するホテルからの脱出等、荒唐無稽な場面が多いが、それはボンドだから問題ない。

 

◆「アバター
 遠隔操作可能な操り人体であるアバターによって、異星人の中に潜入する海兵隊員の話。海兵隊は異星人を強制排除し、貴重な天然資源を採取しようとしていた。しかし、アバターに乗り込んだ海兵隊員は異星人に感情移入し、やがて異星人とともに戦うようになる。
 異星人を教化しようとするがうまくいかず、強制的に排除しようとする海兵隊員の表現が、合衆国の外交政策への批判であることは明らかである。

 

◆「ビューティフル・マインド

 ネタバレ注意
 統合失調症の幻覚と戦う数学者ジョン・ナッシュの映画。
 重要な点……
 1 コミュニケーションの下手な孤独な学生が、閃きと努力により論文を作成し、希望の研究所に採用される。
 2 対ソ情報に係る暗号解読任務に携わるが、諜報員を始めとしてすべてが主人公の幻覚である。また、大学時代のルームメイトとその子供も幻覚だった。かれらはいつまでも主人公の意識につきまとう。
 3 幻覚に悩まされた状態でどうにか大学に通うが、図書館に1日こもり、周囲の学生からは馬鹿にされる。
 4 徐々に病状が緩和されていき、高名な数学者である主人公を慕って若者たちが集まってくる。ナッシュはノーベル賞候補になり、大学の関係者たちから栄誉を称えられる。
 ナッシュは配偶者に支えられて、みじめな病人になりながらも研究を続ける。障害に耐えて目的を達成するという物語に感心した。

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◆「アメリカン・スナイパー」
 テキサス出身の主人公は海軍の特殊部隊に志願し、アフガン、イラクで活躍する。しかし、除隊後も後遺症に悩まされ、傷病兵のコミュニティに参加し、リハビリに協力する。ある傷病兵とともに射撃に向かったが射殺され死ぬ。
 素直で有能なスナイパーが戦争を生き延びる。しかし、派遣を重ねるごとに精神を病んでいく。病むとはいっても、この映画の場合は致命的な問題にはならず、どうにか市民的な生活に戻っていく。
 イラク戦争の特徴は近接市街戦闘やゲリラ兵、即席爆弾等であり、ジャングル一色のベトナム戦争映画とはまた趣が異なる。
 戦争の厳しい様子、非人道的な性質を映しているが、政府への政治的な批判等は特に感じなかった。だからダメだというわけではない。
 演出は、時々大げさである……敵のスナイパーを倒すとき、イラク人の子供を射殺しようとするとき、等。

 

◆「ミスティック・リバー

 以下ネタバレ
 娘を殺された元犯罪者の父親は、自分の友人を犯人だと勘違いして殺害する。殺された男は、幼いころ性的虐待を受けたことからトラウマに悩まされ、別件の殺人事件を犯していた。2人の友達である刑事は殺人事件を追い、真犯人を捕まえる。しかし、元犯罪者の父親はうまく証拠隠滅し罪には問われない。完璧な悪党がおらず、また悪党も制裁を受けず、物事をあえて解決しないことで強い印象を与える映画である。

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◆「イル・ポスティーノ」

 ネタバレ注意
 イタリアの貧しい漁村に住む男が、詩人パブロ・ネルーダとの交流を通じて言葉の力を認識するようになり、結婚相手を見つける。ネルーダが去った後も、島の魅力を録音に残し、政治集会に参加するが、暴動に巻き込まれて死亡する。
 イタリアの島の風景と、詩と言葉が人びとの人生に与える影響が描かれる。

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