うちゅうてきなとりで

the cosmological fort 無職戦闘員による本メモ、創作、外国語の勉強その他

『日本のインテリジェンス機関』大森義夫

 内閣情報調査室長を務めた元警察官僚が、内調の成立の経緯、日本における情報の取組、日本におけるインテリジェンスの概要等について説明する本。

 著者のメモからの抜き書きなのか、唐突な文章が多いが、納得する点がありおもしろかった。

 インテリジェンスとは何か……相手側の真意を見抜く、こちらの強みを意識させて相手を引き寄せる、次の一手を見つけるといった点から、インテリジェンスはマーケティングに似ている。インテリジェンスは、敵対勢力あるいはライバルについての秘密情報を意味し、また、情報の入手、評価、報告というサイクルを持つ。

 インテリジェンスは生存本能であり、どこにでも存在する。

 

 内調について……内閣直属の情報機関であり、成立以来ほとんど何も仕事をしてこなかった。

 各情報機関について……公安調査庁は「現行憲法秩序を破壊しようとする思想団体の調査、規制を目的とする」。内調は「公然情報の整理と内外関係者との情報交換」を主たる活動とする。

 著者によれば「防衛庁の情報機能は将来、注目に値する」。

 公安警察は国内では優秀な情報機関であり、国際テロと対日有害活動の取締りが主な活動である。

 

 ――国家にはある種の凄味が必要である。平穏平和はいいが、すぐ隣で、すぐ次の瞬間に何が起こるか察知しないで国家の責めを果たせるはずがない。

 国家に謀略性はいらないが、目的を達成するための作戦行動能力は具有しなくてはいけない。

 ――人の国に情報を頼っていて、どうして独自の外交など望めようか。たとえ、情報を他国に頼ったとしても、自らの力で検証できずに、どうして自国の政策を満足に遂行できるだろう。

 

 警察官僚について……「警察の幹部は若くして部下を持ち、組織の管理者になる。わたしも四十歳そこそこの課長で四百人の部下を持ち……こういう仕事の仕方をしているから概ねの警察幹部は自分の個性を抑えて、組織の末端まで気を配って平易かつ世間の常識の範囲で言動をする。……警察では偉大な凡人に徹することが良き頭領である」。

 江畑謙介いわく、「人間、煩悩を捨てれば真実が見える」、情報を客観的に扱うとは「私利私欲を離れる」と同じだ。

 

 日本人の情報観……戦後の情報欠陥、または戦前の欠陥として、後方軽視、スケジュール主義、教条主義、観念論があげられている。インテリジェンスに求められるのは「疑う、他をうかがう、比較する、逡巡する、誤りに気付く、変更する、内省する」といった複線蛇行である。

 情報員に求められる要素……「知性があって、好奇心と行動力を持つ老若男女を求む。英語とコンピュータ能力は必須である」。クリエイティヴなムダ走り、ポジティブなルール破り、予測能力を磨く人。「人間をどう観察するか」が問題である。

 ――技能教育の前に、私はインテリジェンス志望者を習志野の第1空挺団に入れるのがよいと思う。体力とサバイバル能力が適性の決め手である。駄目な者は1週間で辞めてもらえばよい。強靭な体力がなければ、やわな知性から脱皮できない。

 心構え……矛盾をおそれるな、すべては相対的である、真実は刻々と変化する、「状況はつくられる、強者によってつくられている。客観的に状況を観察することは強者の意図に加担することになる」。

 技術を知らなければ情報を扱えない。

 ――雑学と雑体験の上に感性が育つかもしれません。語学やパソコンはできたほうがいい。でも、そんなことは、いざとなれば勉強できます。平凡でもバランスのとれた頭の構造が何よりです。豊かな知識を身につけて、偏見とか思い込みから自由でありたいものです。世の中には「未知」と「未体験」が一杯です。

 ――仕事の「報酬」は、なすべきことをなしたという気持ちだけです。

 ――……大学を卒業した後も君には5年も10年も充電期間があります。無頼に、不敵に何にでも挑戦すればよいのです。ただ、「学問の真実」といったものに対する尊敬の気持ちは失わない方がいいと思いますよ。 

日本のインテリジェンス機関 (文春新書)

日本のインテリジェンス機関 (文春新書)