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うちゅうてきなとりで

the cosmological fort 無職戦闘員による本メモ、創作、外国語の勉強その他

『世界終末戦争』リョサ

 ブラジルで発生した農民の反乱を題材にした話。

 ブラジル北部にバイア州があり、かつては帝国の中心だったが、経済産業の変化によってさびれてしまった。バイアの奥地セルタンウで飢饉がおこり、これにともなって、信仰と、打倒共和国を主張する聖人、コンセリエイロ(カウンセラ)が出現する。

 コンセリエイロのもとに、奥地の住人や、盗賊たち(カンガセイロ)、複数の奇形や、聖人たちが集まる。

 かれらはカヌードスの村に集結、キリスト教にもとづいて農園を占拠し、教会建設をすすめる。共和国政府は軍隊を派遣し、叛乱者たちを鎮圧する。

 本の半分は、反乱軍と陸軍の戦闘で占められている。

 本書では、敵対関係においていくつかの逆転が見られる。反乱軍は、共和国がキリスト教徒を迫害し、税をとろうとしている、として抵抗する。共和国は、この反乱者たちは、バイアの政治をとりしきる王党派、および英国の工作活動だと考える。革命家のガルは、カヌードスの反乱こそ、共産主義の実現だ、と信じて現場にむかう。ブラジル陸軍大佐モレイラ・セザルは、狂信的な共和国支持者であり、共和派の政治家、エパミノンダスは、汚い策略に染まっている。王党派、古い帝国時代の利益を代表するバイアのカナブラーヴァ男爵が、この本では、人格的にもっとも安定している。

 人物や、事件のほとんどは、表看板と中身が異なる。

 本のつくり……はじめは、カヌードス反乱に加わる人たちや、中央での政治家たちのうごき等が断片的にならべられる。鎮圧部隊が派遣されると、過酷な戦闘、行軍の風景が描かれる。

 この戦争は正規軍とゲリラのたたかいであり、正規軍は補給や、地形・気象、規律維持の問題から苦戦を強いられる。

 反乱軍は土地をよく知っていて、奇襲や、子供兵隊、蟻のつぼやサソリ、毒などを利用する。おびただしい殺害の場面が全編に渡って続く。

 余計だと感じたもの……おそらく、作者の分身とおもわれる、感受性が強く、軟弱な新聞記者の精神変化がくわしく書かれているが、あまり関心がわかない。

 反乱鎮圧に成功した将軍や、バイア警察のジェラルド・マセード大佐は、根性と度胸のある、すぐれた人物という扱いをうけている。

世界終末戦争

世界終末戦争