うちゅうてきなとりで

the cosmological fort 無職戦闘員による本メモ、創作、外国語の勉強その他

『アメリカ海兵隊』野中郁次郎

 海兵隊の成り立ちから、変遷、組織としての特徴までを解説する本。太平洋戦争の戦史部分が多すぎて、どこかから抜き書きしてきたかのようだ。

 海兵隊アメリカ独立戦争時に創設された。イギリス海軍にならって、特に理念もなくつくられたため、当初は、海軍の一部署、警察隊の役目しか持たなかった。この不遇時代は長く続き、海兵隊が独自の価値と魅力を手に入れるまでに、何度も消滅の危機がせまった。

 現在、海兵隊はアメリカの価値のひとつを体現するエリート組織として、大きな存在感を保持している。

 海兵隊について著者は次のように書く。

 ――海兵隊の生成発展を分析し第一に感じることは、この組織の挑戦的な創造力である。……単に学習するだけではなく、自らを変革創造しつづける組織を自己革新組織と呼びたい。そのような組織は、決定論的な世界では生き生きとえがきだすことができない。

 著者によれば、海兵隊の、自己革新組織としての要件は次のとおり。

・「存在理由」への問いかけと生存領域(ドメイン)の進化
・独自能力
・分化と統合の極大化
・中核技能の学習と集中
・人間―機械系によるインテリジェンス
・存在価値の体化

 海兵隊は、水陸両用作戦というコンセプトによって組織の生き残りをはかろうとし、進化してきた。非営利組織は、みずからの存亡(予算削減、吸収、廃止)をきっかけに自己改革するという。海兵隊は常にこうした危機に直面し、発展してきた。

 海兵隊の機能は「歩兵を支援することに特化している」。水陸両用作戦に特化した組織形態、管理システムによって、「不確実な環境に対しても柔軟に対応できる組織」となっている。

 すべての隊員はブートキャンプできたえられ、ライフルマンとして育てられる。射撃の知識と経験を共有することで、質の高い暗黙知がチーム全体にいきわたると考えられる。

 海兵隊は、アメリカの重んじる価値を体現する。組織には、真・善・美のような普遍的な価値が必要である。

 海兵隊の中核価値(コア・バリュー)は仲間に対する献身、自己犠牲、プライド、利他主義である。

 ――不変の存在価値を堅持しつつ機能的価値を革新しつづけるのが、自己革新組織である。合衆国海兵隊は、そのような組織のひとつの原形を示しているようにおもう。

  ***

 海兵隊士官は、半分は海軍、半分は民間の大卒からひっぱってこられる。これは組織に柔軟性をもたらすためとされる。 

アメリカ海兵隊―非営利型組織の自己革新 (中公新書)

アメリカ海兵隊―非営利型組織の自己革新 (中公新書)