うちゅうてきなとりで

the cosmological fort 無職戦闘員による本メモ、創作、外国語の勉強その他

『自動車絶望工場』鎌田慧

 トヨタの劣悪な工場労働を記録した古典的な本。著者は他にも炭鉱夫について本を書いている。

 企業が唱えるスローガンの嘘くささは現在もまったく変わっていない。単調な作業について、一日目は記録できるが、二日目からは何も言うことがない。退屈は言葉を奪う。苦痛そのもので金を貰うのが単純労働だ。

 労働密度というものがあり、この数値が高いほうが、時間が進むのが遅く、また苦痛が大きい。

「もし、かれが三十四歳までの二〇年間、この仕事に従事したとするとかれが労働によって得た知識、熟練は一分二十秒で完結するだけのものであり、それ以外の知識も、熟練も、判断力をも持たない……彼の人間性は、残業と睡眠時間を差し引いた、微々たる自由時間内で得られるごく限られた行動によってしか発展させ得ないだろう」


「単純反復不熟練労働は、それに従事する労働者を企業から離れ難くさせる……その労働がどんなに退屈極まりないものであっても、いまの企業にいるからこそ通用するのであって、他の企業ではもう通用しない。若く、さまざまな可能性を持っている一人の人間が、ひとつの器官だけを激しく使う労働に囲いこまれ、人為的に未発達な人間にされてしまう。何の特長もない、代替可能な、従順な労働力でいる限り、かれには一定の報酬が一応保証される。かれは閉鎖社会の中で飼い殺しになる」


 機械化ははじめた瞬間から人間を腐らせていくという。

 単調労働は誰もが苦痛を感じるものだった。

新装増補版 自動車絶望工場 (講談社文庫)

新装増補版 自動車絶望工場 (講談社文庫)