うちゅうてきなとりで

the cosmological fort 無職戦闘員による本メモ、創作、外国語の勉強その他

『武装解除』伊勢崎賢治

 国際NGO、国連等で紛争地帯の武装解除に取り組んできた人物の書いた本。

 紛争を調停し、武装を解除させ、民主化を支援する仕事がどのようなものかを解説する。NGOや人道支援ビジネス、紛争の実態について詳しく書かれている。

 紛争の調停は現地の武装勢力たちのエゴをいなし、民兵や地方ボスたちの武装解除を地道に進めていく泥臭い作業である。治安の安定のためには、人道や公正さえも犠牲にしなければならない。

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 1 武装解除

 著者は東チモールシエラレオネアフガニスタン武装解除業務に携わった。武装解除とは、兵隊たちの武器を回収し、かれらを社会復帰させることをいう。武装解除し、双方が武力を行使しない状態になって初めて、選挙が可能になる。

 東チモールでは、国連平和維持軍が併合派民兵の侵入を防ぐため大規模な人員で警備を行った。しかし、ニュージーランド兵が捕まり、耳をそがれ首を切られた状態で発見されると、事態は復讐戦に変質していった。

 紛争直後の治安維持は、大量の国連軍の武力により成立していた。復興支援において目立たないが重要なのは警察、刑務所、裁判所等のインフラを整備することである。

 

・派遣される軍は必ずROEに基づいて行動する。しかし、戦闘の判断を個々の兵隊に完全に委ねることで、報復や過剰攻撃が発生する可能性がある。

・後方支援はあくまで戦闘部隊の支援であり、人道支援ではない。

・軍事監視団は、非武装の軍人からなり、東チモール軍、インドネシア軍双方を監視する。危険を伴うが重要な任務である。

 

 シエラレオネの紛争解決において、アメリカはダブルスタンダードを行使した。国内の安定のために、虐殺と手足切断をくりかえしたRUFの司令官を副大統領の地位につけたのだ。ゲリラたちは恩赦を与えられ、武装解除に応じた。

 アメリカはビンラディンアルカイダを絶対に許さなかったが、一方、シエラレオネの国民に対しては、ゲリラに対する寛容を要求した。

 アフガニスタンでは、米軍による掃討作戦と並行して、日本と国連主導による武装解除が進められた。しかし、タリバン壊滅後のアフガニスタン軍閥が群雄割拠しており、かえって地域ごとの対立は深刻化した。

 本書では、日本による武装解除業務は良い結果を出したと書かれているが、その後のアフガン情勢を省みると何か間違っていたのではないかと思う。

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 2 日本の方向性

 自衛隊の海外派遣は、国内外へのアピールのためであり、紛争地のことを考えたものではなかった。

 著者は日本のこれまでの行動について次のとおり指摘する。

 

・「金しか出さず、汗をかかない」という湾岸戦争のトラウマは、日本の自意識過剰である。国際援助では金を出すものが一番偉いので、これを外交カードとして使わなければならない。

自衛隊の位置付けと憲法の問題により、日本が積極的に請け負うべきは非武装の軍事監視団業務や武装解除業務である。

・アフガン戦争における給油活動は明確な攻撃への参加である。イラクの人道援助活動は、「多国籍軍に参加するが、指揮下には入らない」という謎の活動である。誰の指揮も受けないイラク派遣隊はゲリラ部隊と思われても仕方がない。

・日本のジャーナリズムは海外派遣を監視することができない。サマワの治安が悪化するとメディアはいっせいに退避し、以後情報は政府広報のみを通じてしか入らなくなった。犠牲になるのはフリーのジャーナリストで、大手メディアはかれらからネタだけを買い取る。

・政府及び官僚が軍事に対して無知であること、ジャーナリズムが機能していないこと、「自衛隊の武力を誇示し存在感を示したい」という右傾化の傾向があること、以上の理由により、著者は憲法改正には反対である。

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 3 大義名分

 ブッシュ政権によるアフガン侵攻とイラク戦争は、人道支援と民主主義という2つの基本的倫理を堕落させた。

 ――人道援助が使う人道と、侵略の大義として使われる人道と、いったい何が違というのであろうか? ……人道主義を掲げても、もはや友とは思ってくれない。

 イラク戦争により、「弱小国にとって民主主義の選択は、当事者の内発的な発意によるものではなく、「いうことを聞かねば最後に武力でねじふせる」と、後ろで銃をちらつかせて強制するものになってしまった」。

 ――「そんなナイーブになってどうするの? どうせアメリカが勝つんだから、それについていけばいいじゃない」という向きには、現実的な一理があると思う。それは、ブッシュ政権が掲げるイラク侵略の大義をオウムのように復唱してきた日本政府の姿勢に、見事に体現されている。

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 4 所感

 湾岸戦争における日本の資金援助が多大な働きをしたことはシュワルツコフの自伝にも書かれている。

 しかし、位置付けや立場があいまいなまま、自衛隊は海外に送り込まれ、政府はイラク戦争の正当化を続ける。

 本国や英国で内部告発や反省がなされているにも関わらず、日本政府は2015年になっても、当時のブッシュ政権と同じ文言を唱えている。

 自衛隊を指揮する文民政府とはそのようなレベルである。よって今後の海外派遣についても同じようなことを繰り返すだろう。国内向けの嘘をつきながら自衛隊の米軍下請け化がさらに進むだけである。

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 DDRの流れ

 武装解除desarmament

 動員解除demobilization

 再統合reintegration

 登録作業→精査作業→回収作業→動員解除→社会復帰→国際監視団→コマンダーの武装解除

武装解除  -紛争屋が見た世界 (講談社現代新書)

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