うちゅうてきなとりで

the cosmological fort 無職戦闘員による本メモ、創作、外国語の勉強その他

『ソロモンの指環』コンラート・ローレンツ

 動物研究の古典で、現在は修正されている説も含まれる。

 

 動物や虫、魚への執着に感心する。これらの観察記録は擬人的にえがかれてはいるが、ローレンツは動物学者で、イソップ童話をつくっているのではない。人間と動物には共通するところがあるがよく考えればあたりまえのことなのだ。

 ――いわゆるあまりに人間的なものは、ほとんどつねに、前人間的なものであり、したがってわれわれにも高等動物にも共通に存在するものだ、ということを理解してもらいたい。

 コクマルガラスの結婚行動のようすはあまりに人間に似ている。動物とのつながりはきちんと残っている。

 カラスの章はおもしろい。聞いたところによればカラスは犬よりも大きい脳みそをもっているというがこの鳥の社会は複雑である。

 サピアの『言語』でも言及されていたことで、鳥獣たちは言葉をしゃべることができない。その分細かい表現行動を発展させてきて、それを受信する力も人間よりはるかにすぐれている。

 ローレンツの飼っていた犬は、ローレンツが客にたいしていらだつと、その機微を読みとって客の尻を噛むのだった。

 専門用語のいっさい使われていない平明な文章だから、伝わってくるのは学問的な内容よりもむしろ動物への愛好だ。

 有名なすりこみの話が「ガンの子マルティナ」に書かれている。

 「現代文明人の少々ばかげた忙しさは、動物にはまったく縁がない。勤勉の象徴であるミツバチやアリでさえ、一日の大部分をなにもせずにすごす。ただ人間にはそれが見えないだけだ。この偽善者たちときたら、巣にもどってすわったら、もう何ひとつ仕事はしない」。

 石器時代のころ、ジャッカル系の犬たちは巨大動物の肉にありつくため自発的に人間と協定を組んだ。彼らは人懐こく従順であって自分の魂がないようにもみえる。一方オオカミの要素を多く残す犬はたとえ主人に忠誠を誓っていても自分の誇りを失うことはない。彼らは自分の生活をもっている。

 相手が死ぬまで攻撃をやめないハトにたいし、オオカミや犬には社会的抑制がはたらく。敗者が降参し、のどをさしたとき、勝者は攻撃をやめる。カラスは同族や飼い主の目はつつかない。

 ――じっさい妄念をたくみに内に秘めていた被害妄想患者に、いきなり射ち殺された人の例がいくらもある。

 これら社会的抑制をもつ動物はみな牙やくちばしという武器を発達させてきた。勝ったほうは反射的なものか遺伝的なものかはわからないが、服従者に噛みつくことができない。

 

 ソロモンは魔法の指輪をはめることで鳥獣・魚と会話することができたという。

ソロモンの指環―動物行動学入門 (ハヤカワ文庫NF)

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