文明から遁走した画家の旅行記。
「六十三日間の変化ある航海の後、私たちは六月八日の夜、海のかなたに稲妻形に移動する奇怪な灯を認めた」、タヒチは仏領で、植民地街は彼曰くすでに汚染されている。奥地に引越し、原住民であるタヒチ人マオリ族の歓迎をうける。彼は霊感を多量に摂取する。
「ある日、永遠のユダヤ行商人が――これは、大陸を荒らすと同じように、海を越えてまでも荒らしに来ている――鍍金(メッキ)した宝石の箱をもってこの地方へやってきた」。
銅にメッキをした装飾品を高額で売りつけにきたのだった。
宣教師が土人のなかにいるが、これはフランス領だからプロテスタントだろうか。タヒチにも神話があり、ルーア(偉大)が「暗黒」と交尾して大地が生まれたという。
彼はタヒチから帰った後、散々な目にあう。連れてきたジャワ人の女に金目のものを盗まれて逃げ出され、喧嘩でくるぶしをくだかれる。知り合いは離れ、植民地において行政官のもとで働き貧しい生活を強いられた。
かれは文明から逃走して結局死んだ。
ミラーのことば、「ほんとうに冒険がしたいなら一歩も動く必要はない」とはどういう意味かを考えなければならない。