うちゅうてきなとりで

The Cosmological Fort 無職戦闘員による本メモ、創作、外国語の勉強その他

蜂の影(2012)

 端子の島にむけて、ある日、虫と動物の影が投げ込まれた
 狭い土壁の家を出て、共同の墓地をすり抜けた
 かれらは、その中でも、わたしと昔から住んでいる老人は
 黒土の上に残された石の幕舎に向かった。
 不穏な熱と磁力を帯びた影がレリーフに映りこむと、かれらは
 近づいて指でなぞった。
 その時の、複雑な太陽光と
 地熱のゆらぎによって
 変形する蜂とヘラジカの影
 を点検する、わたしたちは
 日に焼かれて汗をかく、内陸の人間の皮フを焼いた。
 反射によって白くなった壁が、老人に崩れかかったそして
 ヘラジカは死んだ。
 わたしたちの族と党は夕霧を泳いだ、青蒸気と
 緑と水のある山から
 柩をかついで端子の森に捨てた。
 このような、人の手を
 わずらわせる生きものの影に囲まれた場合は
 どうすればいいか。