彼の生まれた京都は旧時代の要素が多く残っていて、差別や貧困のもとで育った。早稲田に入学して学生運動に身を投じたときも、まだ昔の雰囲気は残っていた。貧しさや暴力、人間同士の濃いつながりといったものが、戦後まだ存在していたのである。
本書に書かれてある早大生や東大生を現在のそれと比較すると、隔世の感がある。しかし、表面は変われど、人間が力と金に支配されて生きているという事実は今も同じである、と著者は書く。人間はイデオロギーや思想ではなく、金と権力に基づいて動く。
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大学を中退してからは家業の解体屋を継ぐが、借金に悩まされ資金繰りに奔走する。中小企業とやくざ、政治家、ゼネコンが入り乱れて金を手に入れようとするさまが印象深い。
――学生時代、私も左翼の一人として資本家階級打倒を志向していた。しかし、いざ実業の世界に身を置いてみて、それがなんとも甘っちょろい考えであったことがよくわかった。命懸けの資本家に対して、左翼のほうは命など懸けてやしない。この一点で、はなから勝負はついていたのだ
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1985年、プラザ合意をきっかけに政府は公定歩合を引き下げる。そのため銀行が融資合戦をはじめ、結果バブルにつながった。ここでも著者はバブル紳士や裏の顔役とともに地上げなどに手を染める。
突破者―戦後史の陰を駆け抜けた50年〈上〉 (幻冬舎アウトロー文庫)
- 作者: 宮崎学
- 出版社/メーカー: 幻冬舎
- 発売日: 1998/12
- メディア: 文庫
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