うちゅうてきなとりで

the cosmological fort 無職戦闘員による本メモ、創作、外国語の勉強その他

『経営戦略のゲーム理論』ジョン・マクミラン

 ゲーム理論を用いて経営戦略における意思決定を考える。

  ***

 第一部 戦略的意思決定

 まずは相互依存性、相手の予想を予想する、個人の最善と集団の最善は矛盾するなど、ゲーム理論の原則がつづく。決定には不確実性がつきものだが、これを決めるには確率を用いる。人びとは一般にリスクを嫌うが、企業は株式をたくさんの株主に分散させることで、リスクを減らし、より冒険できるように努める。これは株主のポートフォリオ形成の際も同様である。

 不確実性のもとで合理的な決定をおこなう方法――まず、すべての可能性ある事象をリストアップし、それらに確率を割り当てる。続いて期待収益を計算し、自分のリスク回避度に基づいて選択する。

 第二部 交渉

 交渉において重要なのは技法や人柄、教養などではなく、まずは実質的な取引内容である。交渉力bargaining powerとはなにかをここでは科学的に分析する。ここでは価格交渉を引き合いに交渉におけるゲームの過程を説明する。相手の動きを予想する、相手の予想を予想することがまず決定の際に重要になる。

 交渉における構成要素は、相手の評価額、代替的機会、遅延費用、コミットメントの可能性、および情報の利用である。代替的機会とは、もっと安い値段で買える店がある場合などのことをさす。遅延費用とは、ストライキの場合に労働者が失う日給や雇い主が失う利益のことを、コミットメントは、交渉相手が自身のことばにどの程度拘束されているかを意味する。

 もし交渉者がある価格以外には交渉しないと明言し、信憑性があるとすれば、相手は従わなければ交渉破棄により何も得られないだろう。自分のことばに拘束されるほど交渉力をもつというのが、シェリングが指摘したパラドクスである。

 ところが、実際の交渉において交渉相手の要素をすべて把握していることはほとんどない。お互いに不確実性のもとで交渉しなければならないため、情報戦略を用いることが重要になる。

 国債貿易協定の事例では、相手の目的を理解すること、制裁と報復戦略の重要性、交渉において焦点を見出すこと、代替的選択肢は交渉力の源泉であることを示す。

 第三部 契約

 プリンシパルとエージェントに役割を分けて、どのように最大の利益を引き出すかが論じられる。ここでは、雇用主と労働者、株主と経営者など、プリンシパルとエージェントのあいだの利益・目的の矛盾が焦点になる。エージェントにどのようなインセンティヴを与えれば目的に適うように行動してくれるのか。

 

 エージェントに余剰利益のすべてを与えることは、よく用いられる戦略である。

 第四部 入札

 入札について考える上でのキーワードは私的価値と共通価値である。

 ――評価額が入札者に固有のもので評価額の違いが入札者の特異性に基づく場合を、私的価値のケース、そして、財の唯一の真の価値について入札者がそれぞれ異なる情報を入手しているために入札時の評価額が異なる場合を、共通価値のケースと呼ぼう。

 入札者の教訓……勝者の災い(過大評価の額で落札してしまう)に注意し、自分の評価額まで入札にとどまること。封印入札の場合、自分が過大評価か過小評価なのかを比較考慮すること。

 入札競争を組織するものの教訓……公開入札はより高い入札価格を促す。最低価格は相手が辞退するギリギリまで高くすること。入札のさらなる競争化には収益分配方式を用いよ。

 第五部 戦略的な管理者

 継続的関係が、正式な契約にかわって協調のインセンティヴを与える。日米の企業は正式な契約書をつくることがあまりなく、そのかわり関係を継続することでお互いに協調することに成功している。

 その代表例が大企業と下請である。「企業は、外注生産のほうが自社生産よりも費用が低いならば、その部品の生産を下請けに出すべきである」。サプライヤー(下請け企業)のほうが小規模で統率がきく、専門的技術をもっている、大企業が大きくなりすぎると経営効率が悪くなる、などの理由から、下請けが一般的になっている。

 発注元と下請けのあいだでの価格交渉について。

  ***

 現実世界は複雑である。ゲーム理論をそこに応用するには、ものごとを単純化し分析可能な状態にする必要がある。そのためには……

 プレイヤーは誰かを決める。どのような選択の余地がプレイヤーにあるかを決める。どのような目的をプレイヤーは追求しているかを決める。取引から生じる利益は何かを決める。プレイヤーのうち誰かに効果的にコミットメントを達成できる者がいるか決める。ゲームの時間構造・情報構造を決める。

 この七つの設問を常に心がけることが「有益な練習」となる。

  ***

 

 

経営戦略のゲーム理論―交渉・契約・入札の戦略分析

経営戦略のゲーム理論―交渉・契約・入札の戦略分析