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『国際法入門』横田洋三

 国際法の基礎をつくったのは十七世紀オランダの法学者グロティウスである。彼は三十年戦争の惨状をきっかけに、交戦法規について書かれた『戦争と平和の法』を著した。さらにバインケルスフークを経て、十九世紀、人と物の移動が活発になった時代に国際法は整備された。さらに国連その他地域的国際機構が設立されることによって国際社会の組織化が進み、国際法は変容しつつある。

 強制権力こそないが、国際法は現在では法とみなされており、国内法にたいして優位をもつと考えられている。国内法においては憲法が最上位だが、それでも国際法を無視することはできなくなっている。

 国際法法源はこれまで条約と慣習法のみとされてきたが、国連の規定した世界人権宣言や植民地独立付与宣言などは「のちに慣習国際法に発展する可能性のある規範と見て、ソフト・ローと呼ぶことがある」。

 国際法において主体性を認められているのは国家である。これは能動(国際法形成のちから)・受動(国際法によって定められる権利と義務)両方をもつということである。国際機構は設立文書の範囲内でのみ能動性をもつ。企業や個人は受動的主体性をもつようになってきた。

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 国際法には「国際法」というまとまった法体系はない。法源が慣習法と条約のみであるとはそのためだという。各国間で結ばれる条約や、国連における決議には、慣習法を明文化したり、または慣習法を発生させたりする役割までもある。「ソフト・ロー」とよばれるゆえんである。だから「国際条約集international treaties」と複数名詞になっているのか。

 国際法の定立・適用・執行については複雑な議論が展開されている。とりあえず、執行が確固たる強制力をもたないこと、根本的に国際法は各国間の同意や受諾から成り立っていることを確認した。

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 国家構成の要件、国家の成立、国家承認と政府承認は授業でも教わったことだ。国家承認については、植民地独立運動を経て、宣言的効果説が主流を占めるようになった。

 主権は対内主権と対外主権のほかにも多岐にわたる。対して国家の義務は(他国の)領土保全、国内問題不干渉など、基本的に他国の主権を尊重することにある。国家の行為や財産は主権免除といって他国の管轄を免れるよう定められているが、商業的・私的な性質をもつ行為については主権を制限される(制限免除主義)。

 いかなる基準をもって国家行為・非国家行為とするかは議論が分かれる。今日一般的なのは行為性質説で、「国家の行為の性質を基準とし、国家の統治的、公的な目的を達成するための行為であるかどうかを基準とする」。

 外交使節には特別と常駐がある。大使機関が国家外交を担当するのにたいし、領事機関は「在外自国民の商工業上の利益を保護するという実務的な問題を処理するために必要とされる制度」である。

 大使機関、領事機関は特権免除をもつが、これが国家や国家元首からくる威厳によるものか、治外法権によるものか、国家の代表であるゆえか、効率的な任務遂行のためかは説が分かれている。

 具体的な特権免除だが、「身体と名誉の不可侵」、「公館の不可侵」、「公文書の不可侵」、「裁判権の免除」、「課税からの免除」の五つがある。国内でまずい状況になった外務官僚が外国の大使館に飛ぶというエピソードが『国家の罠』にあったが、おそらくこの特権免除を利用するためなのだろう。

 パスポートが旅券であり、ビザが目的国から発行される査証である。

 国家犯罪の判定については、もとは過失責任主義だったが、現在は客観責任主義がとられており、故意や過失と無関係に国家に帰属される違反は裁かれるべきだとされる。

 科学の発展に伴う高度の危険な活動(核、ロケット)などについては無過失責任が認めらており、無条件で賠償責任が科される。

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 領域にかんする国際法は現代日本を論ずるうえでも無視できない要素である。

 国境には山や川を用いた自然的国境と、緯度経度その他によって引かれる人為的国境がある。内水とは領土内の川や湾を意味する。領海については沿岸基線に沿って3カイリか、6カイリか、12カイリかと主張が分裂する。領空は領土の上空の大気圏内すべてをさす。

 国家の領域については、排他的管轄権をもち、立法、司法、行政の当地作用を及ぼすことができる。

 「領土に対する国家の権限は、原則として自由に行使され制限を受けない」(大使館など例外もある)。

 領海にたいしては「漁業権を独占し警察権などを行使する権利を有する一方、外国の船舶には無害通航権を認めなければならないという義務がある」。

 外国船がただ領海を通行する場合、港などに向かう場合などは通航を認めなければならない。

 ――ただし、潜水船は、海面上をその属する国の旗を掲げて航行しなければならない。

 二つの公海を結ぶ国際海峡では、領海の場合無害通航権が、公海の場合は自由通航が認められる。

 海と異なり、領空権限は「完全かつ排他的」である。同意なしに領空侵犯した場合無条件で撃墜することができる。民間機が撃墜された例も多々ある。

 領土の特殊な形や得失として割譲、併合、租借地、共有地、共同統治などがある。

 海に対する権限の観念はグロティウスとイギリスのセルデンの論争からはじまる。第二次大戦後は海洋エネルギーの利権などを狙って各国が一方的に領海宣言をする事態がつづいた。そこで国連は一九八二年「海洋法に関する国際連合条約」を制定し、一九九四年より発効した。

 公海とは各国の主権が及ばない海域であり、「公海において船舶は、登録国(旗国)の排他的管轄権に服する」。国家を掲げていなければならないこの規則を「旗国主義」という。国旗が実際に必要であることがわかる。

 この旗国の規則にしたがわない船は不審船とされる。沿岸国が領海内、接続水域内、排他的経済水域内で不審船や違反船を発見した場合、第三国に入らぬかぎり追跡することができる。この追跡は中断してはならないらしいがなぜなのだろう。

 深海底については資源の配分を考慮して共有が定められている。同じく宇宙も共有とされ、軍事施設や兵器の打ち上げが禁止されている。

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 国家につぐ国際社会のアクターである国際機構は、複数国の参加、共通の目的、参加国から独立した機関および職員、常設的な組織をその成立条件とする。

 「組織的にも整った今日の国際機構のはじまりとなったのは、第一次世界大戦後に設立された国際連盟とILOである」。

 今日、国際機構にはさまざまなものがあるが、代表的なものが国連である。国連国連憲章を基本条約とし、この基本条約によって成立し、規律される。国連そのものが国際法のひとつであり、また国際法をつくりあげる力を持っている。

 国際法における国際機構の位置づけはまだ確立しておらず、研究が進められている。一般的なのは国際機構法人説であり、これは「国家を構成員とする国際法人」とする見方である。法人説では「国際機構は国家から切り離された独立、別個の存在」であるとみなされる。

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 終章ではグロティウスの正戦論から無差別戦争論に基づく戦時国際法戦争法)、そしてウェストファリア条約より確立された主権国家の概念、不戦条約にはじまる戦争禁止という一連の流れを概観する。

 国連の展開と、人権・人道援助の歴史、開発についての試行錯誤などは、国際社会関係論で紹介されたより詳細な参考文献でとりくむのがよいだろう。とりあえず軽く一読しておいた。

 人権というものの見方自体がフランス革命のときにつくられた産物である。現在の意味に通じる人権はさらに新しく、ワイマル憲法によってはじめて明文化されたものだ。無政府国際社会を安定させる試みや考え方も長年かけて実現されてきたものである。

 

国際法入門 (有斐閣アルマ)

国際法入門 (有斐閣アルマ)