うちゅうてきなとりで

the cosmological fort 無職戦闘員による本メモ、創作、外国語の勉強その他

加速の環、顔面(2012)

 顔のでっぱりとへこみにたいして防護液をつけた、その番号のなかにはなめらかな素材でできたカード型のかぎがあり、さしこむと
 古い城のあと、むかしの人間が濠をつくって、矢倉をたてた丘に入ることができる、わたしは、立体的な生首が「入城」ということばを何度もつぶやくのをきいた
 城の建造物はいまは残っていなかった、切り取った石を積み上げた基礎が、かろうじてかじられずに幽霊のように横たわっている、雨天の日、青い地面に水たまり、泥の流出がおこり、石と石の継ぎ目から水滴がこぼれて、表面は、こけを
 洗い流し、農場の子供たちはにおいにつられてふらふらとやってきた、雲が低いので、子供たちの姿は色あせて、影は雨水のなかに溶けているらしかった、あれは、なんの重要性もないもの
 かれらは巨大な闘牛のまぼろしをみた、木造の機械じかけが、雨音のあいだをぬうように伝播していく気がする、子供たちの気体状の集団、鉱石を、かみちぎってやる、指でねじる
 城の建築様式を、わたしは紙に写しとる
 豚肉を遠くから臨み、うすく切り取って、城の平面図を手に入れた。

 そのときまでに、いくつかは人間の顔にしか見えなくなる、わたしの会ったことのない人の顔にしか。